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第1263号(平成26年4月20日) |
「消費税」「地域包括ケア」等に関する質問・要望に,理事者側から詳細に回答
午前九時三十分,加藤寿彦議長が開会を宣言.横倉会長のあいさつの後(別記事参照),中川俊男副会長が「平成二十六年度日本医師会事業計画」について,今村聡副会長が「平成二十六年度日本医師会予算」について,また,笠原孝財務委員会委員長が一月十七日開催の財務委員会の審議内容等について,それぞれ報告し,議事に入った.
まず,第一号議案「平成二十五年度日本医師会会費減免申請の件」が上程され,今村副会長が,「減免申請は合計一万二千十五名で,減免申請金額は四億九千九百八十万四千円であること」「東日本大震災による被災会員に対する減免は,平成二十三年度から三年間を予定していたが,被災地の現状を勘案し,二十六年度も継続する意向であること」等,提案理由を説明.賛成多数で承認された.
次いで,第二号議案「日本医師会定款一部改正の件」が上程された.
今村副会長は,日医会員の約四八%が勤務医,約一五%が女性医師である一方,現在の理事のうち勤務医,女性医師がいずれも一人となっている現状を説明.その上で,「全ての会員が等しく,医師会会務に参画し,意見を述べる環境をつくることは,執行部の責務であると考えており,今回,会内の『定款・諸規程検討委員会』の中間答申を踏まえ,理事枠を二名(勤務医,女性医師)増員するため,本年四月一日付で定款を改正することになった」と述べ,定款改正への理解を要請.その後,採択が行われ,第二号議案は賛成多数で承認された.
引き続き,代表質問と個人質問に移った.
平成26年度日本医師会事業計画重点課題一覧
- 東日本大震災への対応と今後の災害対策
- 医療政策の提案と実現
- 医の倫理・医療安全対策の推進と医療事故調査制度の創設に向けた取り組み
- 医師会の組織強化と勤務医等への支援の推進
- 生涯教育の充実・推進
- 日本医学会とのさらなる連携の強化
- 医療分野におけるIT化の推進
- 広報活動の強化・充実
- 国際活動の推進
- 医療保険制度・介護保険制度の充実に向けた取り組み
- 地域医療提供体制の確立・再興
- 医療関係職種等との連携及び資質の向上
- 医業税制と医業経営基盤の確立
- 日本医師会年金の運営強化と会員福祉施策の充実
- 日本医師会医師賠償責任保険事業の安定的運営と同事業を通じた自浄機能の発揮
- 死因究明体制の充実
- 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の研究体制の充実強化
- 日本医師会治験促進センターの運営
- 日本医師会女性医師支援センターの運営
- 日本医師会電子認証センターの運営
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代表質問
1 病院機能報告制度と地域医療ビジョンについて
池田哉代議員(九州ブロック)からの「病院機能報告制度と地域医療ビジョンについて」の質問には,中川副会長が,同制度を巡る経緯を説明.
地域医療ビジョンを策定するに当たり都道府県が設置する「協議の場」を第一のポイントとし,日医の強い主張で,医療法改正案に「診療に関する学識経験者の団体」,すなわち医師会が協議の場に加わることが明記されたとした.
第二のポイントは,「都道府県知事は病床機能の転換の中止に関して要請・指示が出来るが,その場合も医療審議会の意見を聞かなければならない点」とし,医療審議会での都道府県医師会の意見が極めて重要であり,行政との関係を築くべきとした.
第三に,「地域包括ケア推進室」では,都道府県での事例をエビデンスとして政策提言に活用,地域にフィードバックすることを考えているとし,二〇二五年を目指した医療提供体制の改革,地域包括ケアシステムの構築において,都道府県・郡市区医師会が主導的役割を果たすことに期待感を示した.
2 超高齢社会における認知症対策に関する日医の考え方について
上林雄史郎代議員(近畿ブロック)からの超高齢社会における認知症対策に関する日医の考え方を問う質問には,松原謙二副会長が医師会に課せられた最も重要な役割は,認知症の早期診断・早期対応を可能とする体制整備と,各地域の実情に則した地域包括ケアシステムを行政や関係職種,住民と共に構築していくことだと指摘.
オレンジプランの具体的施策の柱である「認知症ケアパスの作成・普及」「早期診断・早期対応」「認知症の人への医療・介護サービスを担う人材育成」等の推進には,医師会の取り組みと,かかりつけ医の役割が期待されているとした.
また,認知症サポート医を中心に,認知症対策に対応する医師の充実や専門職間の連携を更に進めることが,認知症にも対応した地域包括ケアシステムの構築には必要不可欠との認識を示し,今後,「認知症にやさしい社会」の実現のためにも,医師会が,地域住民や行政と共に取り組んでいくことが必要だとして,引き続きの協力を要請した.
3 特定健診・特定保健指導に関する日医の考え方について
堀部廉代議員(中部ブロック)は,「特定健診・特定保健指導─国民的健康増進運動に関する日医の考え方─」について質問.
横倉会長は,医師会の大きな役割の一つは地域における公衆衛生活動であるとした上で,実施主体を地域行政の健康増進施策へ変換すべきとの指摘には,日医として,個人情報の厳格な管理を前提に,生涯を通じた保健情報が一元的に管理され,一次〜三次予防の保健事業が「生涯保健事業」として的確に実施されるよう国へ働き掛けていきたいと述べた.
主治医・かかりつけ医が地域と連携して取り組む「家庭総合健診」の提言には,かかりつけ医による各種健診の受診勧奨は受診率の向上と地域住民の健康増進に大きく寄与するものだとして,協力を要請.
更に,自身が参与として参画している政府の健康・医療戦略推進本部の会合において,今後も地域医療の現場からの声を基に,国民の健康を守るための具体的な政策提言を行っていく所存であるとした.
4 「新たな財政支援制度」について
藤原秀俊代議員(北海道ブロック)の「新たな財政支援制度」についての質問には,中川副会長が回答した.
同副会長は,「新たな財政支援制度」創設の経緯を説明した上で,新たな基金では官民公平に分配されるよう厚生労働省に強く要請した結果,公正性と透明性の確保が約束されたことを報告.そして,都道府県が計画した事業に対して,公費のうち国の負担を三分の二に引き上げ,残り三分の一を都道府県が負担し,この負担分には地方消費税財源を充てるなど手厚い措置が取られるが,これは都道府県が自ら事業計画を提出することが大前提なので,都道府県との協議を今すぐ進めて欲しいと要請した.
また,厚労省は,都道府県に対して,都道府県医師会などと一体となって計画づくりを進めるよう具体的な指示を出しており,日医からも病院団体に対して,都道府県医師会を窓口にして欲しいと申し入れ,了解を得ていると説明.更に,厚労省の例示以外に基金を活用したいという事業があれば,日医に連絡して欲しいとした他,四月二十五日に日医で担当理事連絡協議会を開催する予定であることを示し,日医があらゆる面で支援していく考えを強調した.
5 「医療事故調査制度の法制化」について
清水信義代議員(中国・四国ブロック)の「医療事故調査制度の法制化」についての質問には,松原副会長が回答した.
同副会長は,制度としては,中央に「医療事故調査・支援センター」を設置し,各地域では都道府県医師会等が「支援団体」として活動することになり,具体的な事柄は今後作成されるガイドラインの中で決められていくことになるので,日医は残された課題を解決していくと説明.ただし,小規模医療機関は院内事故調査委員会を設置することが困難な場合があるため,法律案には,「医療事故調査等支援団体に対し,医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとする」とあることから,特に都道府県医師会が中心となって,院内調査を医療機関と共に行うことになるとの考えを示し,必要な体制の構築を要請した.
その上で,同副会長は,「医療事故が起こった場合,医師法二十一条の解釈問題,医療事故における第三者機関への届出方法,調査報告書の取り扱い等,残された重要な問題があることも事実であるが,正当な業務である医療行為が,刑法によって処罰され,救急医療,外科手術を始めとする地域医療が崩壊することのないよう,ガイドライン策定や法律的対応においても,日医は全力で取り組んでいく」との意向を示した.
6 地域包括ケアに向けての「地域包括診療加算」について
近藤太郎代議員(東京ブロック)の,全国で多くの診療所が地域包括ケアに携わっていけるように働き掛けを求める要望に対しては,横倉会長が回答した.
同会長は,まず,昨年八月に四病院団体協議会と共にまとめた「医療提供体制のあり方」で示した提言の実現には,国民の疾病予防や健康管理を支えるかかりつけ医が地域包括ケアシステムの中心的役割を担う仕組みの構築や,地域医師会の地域特性に合わせた街づくりへの参加が重要との認識を示した.
その上で,平成二十六年度診療報酬改定では,限られた財源の中,「地域包括診療料」「地域包括診療加算」が新設され,厳しい要件ながらも,かかりつけ医機能の評価の道筋をつくることが出来たと説明.
また,(1)調剤薬局との連携において服薬管理が医師の業務であることを改めて明確化した(2)大病院から診療所・中小病院への外来患者の誘導策を設けた─ことを示し,外来の機能分化の中で,かかりつけ医機能を強化することで,今後の診療報酬改定で更なる評価を求めていくとして,理解を求めた.
7 いわゆる新法解剖について
西成忍代議員(東北ブロック)からの,死因身元調査法による新法解剖に関する問題提起に対しては,今村副会長が回答した.
同副会長は,新法解剖の現状について,実施・未実施の地域差が顕著であり,実際に解剖を行うマンパワーや設備の充実なくしては,まさに「絵に描いた餅」になるとの認識を示した.
その対応として,内閣府「死因究明等推進会議」の実務会議である「死因究明等推進計画検討会」において,予算面を始め,人材の養成と確保,資質向上,待遇改善など,多角的な検討を進めていることを報告.今後も,病理・組織検査,薬毒物検査,死亡時画像診断(Ai)など総合的な調査の充実の重要性を改めて積極的に提言していくとした.
また,医療関連死との関係については,医療事故調査制度を一刻も早く実効あるものにして,国民や司法界から信頼されるものに育てることが重要であり,その上で,「医療関連死は医療事故調で究明する」というルールの制度化も視野に入れた検討を重ねていきたいと結んだ.
8 控除対象外消費税の抜本的解決について
金井忠男代議員(関東甲信越ブロック)の,控除対象外消費税の抜本的解決に関する質問には,今村副会長が回答.
抜本的解決へ向け,国会議員や関係省庁とさまざまな検討を行っていることを強調した上で,今般の消費税率八%引き上げに対応した診療報酬改定については,あくまでも一〇%引き上げ時の抜本的解決までの過渡的な措置であることを説明した.
医療と消費税の問題については,「税と診療報酬の双方が絡む複雑な問題であるため,国民やマスコミ等に正しく認識されていないものの,非課税と言いながら,目に見えない形で,患者や保険者が消費税分を負担している事実は,今回の診療報酬改定に関する報道で,現行制度の矛盾として広く認識されたと考えている」との見方を示し,抜本的解決について,より多くの方々の賛同が得られるよう努めていくと強調した.
解決へ向けてのさまざまな選択肢に関する検討内容は,四月に行う医業税制検討委員会での討議を経て情報提供するとした.
その上で,「最終的な解決法が選択され,実現へ向けて活動する時には,速やかに皆様にお知らせするので,ぜひともご理解をいただき,要望実現へ向けて医療界が一枚岩となって活動するべく,強い支援をお願いしたい」と結んだ.
個人質問
1 新型インフルエンザ等対策特別措置法に対する考え方について
羽鳥裕代議員(神奈川県)からの新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下特措法)に対する日医の考え方を問う質問には,小森貴常任理事がまず,特措法における,医療の提供の要請について,ガイドラインには,「通常の協力依頼のみでは医療の確保が出来ないような場合に,慎重に行うべきである」と明記され,極めて限定的に実施されることになっているとした上で,「地域での感染の拡大状況や,病原性の強さ,空間的,人的等の問題により医療提供を行えない状況となることは当然あり得るが,その場合の罰則はあってはならない」と強調.
新型インフルエンザ等の感染拡大時に,さまざまな理由で医療提供を行えない医療機関に対する風評被害に対する対応としては,実際に事象が発生した際には,基本的対処方針等諮問委員会が貝体的な対応をすることになるが,同委員会には日医も参画しており,地域現場の実情を反映した施策が実行されるよう努めていくとした.
2 「在宅医療の充実による地域包括ケアシステム構築の推進に向けて」について
中尾正俊代議員(大阪府)からの在宅医療の充実による地域包括ケアシステム構築の推進に向けた日医の考えを問う質問には,高杉敬久常任理事が回答した.
同常任理事は,本年六月以降厚労省に,地域医療ビジョンへの国のガイドラインを検討する会議が設置され,日医も参画,制度設計に関与していくことを説明.
介護保険法改正案における「在宅医療・介護連携推進事業」の地域支援事業への位置付けについては,平成二十七年度より順次実施され,三十年度には全市区町村での実施が予定されており,小規模市町村では事業の共同実施が検討されているとした.また,その際には,市区町村行政より地域医師会への委託が想定されるとして,地域医師会の積極的な関与を要請.日医も,都道府県医師会を通じた支援を行いたいとし,今後,都道府県行政と都道府県医師会,市区町村行政と郡市区医師会の連携がポイントになるとした.
更に,在宅医療に関しては,「都道府県医師会には,市区町村のカウンターパートである郡市区医師会からの意見を十分に反映した新たな基金の計画を策定するようお願いしたい」と述べた.
3 「広報活動への積極的な取り組み」について
大澤英一(奈良県)代議員からの「広報活動への積極的な取り組み」についての質問には,石川広己常任理事が回答した.
同常任理事は,日医及び会員の先生方の日々の活動を国民に正しく伝えるために,対外広報活動として新聞意見広告では,全国紙中心から各地域におけるブロック紙,地方紙での展開を行う等,多くの国民に見てもらえるよう工夫を行っていると説明.
テレビ番組を活用した広報活動については,四月より新たにBS日テレで「おはよう日曜診療所」,BS─TBSで「赤ひげのいるまち」の放映を行うなど,医療をもっと身近に感じてもらえるよう工夫を凝らした番組制作を行い,日医のイメージアップに繋(つな)がるよう努力しているとした.
更に,マスコミに対しては,定例記者会見や記者懇談会を通じて関係を構築し,日医のメッセージの理解と誤った記事への即時対応を行っているとした他,フェイスブックやツイッター等を活用した時代に沿った形での広報活動については,体制整備やリスク等を勘案し,検討していきたいとした.
4・5・6 医療機関における消費税負担問題について
小尾重厚代議員(長崎県),田畑陽一郎代議員(千葉県)並びに田村瑞穂代議員(青森県)からの,消費税問題に関する質問には,今村定臣常任理事が一括して回答した.
本問題に対する広報活動の取り組みとして,一部マスコミの誤解を招く不正確な報道に対して抗議を行ったと報告.また,厚労省が作成・配布する診療報酬改定に関するポスターに対して,日医でもポスター(日医ニュース五月五日号折り込み)を準備しており,(1)今の制度では,患者さんや国民に分かりにくい形で負担が生じていること(2)過去の補填(ほてん)が不十分であったため,医療機関に不合理な税負担をもたらしていること─を踏まえ,日医が医療に関わる消費税制度の抜本的な改正を訴えているとの主張を展開するとし,「医療機関の待合室に,厚労省のポスターと並べて掲示して欲しい」と述べた.
また,四月から,患者に渡す領収書や明細書に,「厚生労働省が定める診療報酬や薬価等には,医療機関等が仕入れ時に負担する消費税が反映されています」との文言が表示されると報告.この文言は,中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会での検討により,国民に実態を知らせる措置として実現したものと説明した.
「日医総研の活用」については,日医総研によるさまざまな調査・研究・情報収集結果は,日医が目指す「国民のための医療政策の立案,展開」に極めて重要な役割を果たしていると説明.例として,「消費税の実態調査」を実施し,その結果を中医協消費税分科会に提出したことで,同分科会での議論の裏付けとなったと述べ,調査・情報収集に今後一層の活用を図るとした.
「社会保険診療のゼロ税率・軽減税率等の要望がなぜ実現しないか」については,税収が減ることや税務署の事務負担増を理由に財務省が反対していることが大きく影響していると説明.しかしながら,現状の不合理な制度を温存させないよう,解決を目指したいとした.
「消費税対応に関する医療機関の事務負担」に関しては,「課税に転換した場合」「非課税還付が実現した場合」のどちらも同様に負担が掛かるとの考えを明示.事務負担軽減措置としては,地域医療を支える小規模医療機関を守るために簡易課税制度と四段階税制を同時に維持することを強く要望している.また,非課税還付の場合でも,同様の事務負担軽減措置が必要との考えを示した.
最後に,代議員からの「武見太郎会長当時のように,国に対して強力に迫る方法を考え,実行してはどうか」との発言に対しては,強い思いを持って臨むと回答.その上で,同常任理事は,今後迎える,抜本的解決への正念場に向けて,医療団体と連携をとり,日医が主導して医療界の要望を決める時が来た際には,速やかに全ての医師会に連絡し理解を得た上で一丸となり,医療界が一致団結して国にその実現を強力に迫り,要望実現を果たしたいとした.
7 都市部以外の医療の将来像について
都市部以外の医療の将来像について,日医の考えを問う糸島達也代議員(岡山県)の質問には,石井正三常任理事が回答した.
同常任理事は,過疎化で医療の需要が少なくなり,医療機関などが都市部に集約化されれば,その地域の住民は更に流出し過疎化が進んでしまうと指摘.その対応策については,(1)地方都市における集住化やコンパクトシティの展開(2)必要な交通網・生活道路と幹線道路の整備─等を挙げ,地域医師会の積極的な関与を求めた.
また,今後は救急搬送とその受け入れ,そしてその後方搬送までサポートするメディカルコントロール体制を強化し,適正な医療介護連携を構築し,効率的で満足度の高いシステム運用を地域で維持していくことが大切になると指摘.更に,医師確保が困難で過疎化が進んだ地域への対応を考える際には,医師を派遣するなど,その支援を行う立場の都市部側のビジョンも併せて検討する必要があるとし,都道府県医師会に対して,その調整を要請した.
8 都市部の高齢化対策について
都市部の高齢化対策について,日医の見解を問う篠原彰代議員(静岡県)の質問には,高杉常任理事が回答した.
同常任理事は,都市部においては,高齢者単身世帯や高齢者夫婦のみの世帯の増加が想定され,いざという場合には医療や介護に繋(つな)げるためのサポートが期待出来ない世帯が増えるものと考えられることから,「状況把握サービス」「生活相談サービス」が義務付けられているサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は有効活用出来るのではないかと指摘.
また,現行においてはサ高住の九〇%以上が老人福祉法上の有料老人ホームに該当することが分かってきていることから,今後は,サ高住運営側への厚労省,国土交通省による指導監督等の対応を注視していきたいとした.
その上で,同常任理事は,今後も在宅医療を巡る不適切事例に巻き込まれることのないよう,各地域の実情に即した体制整備に向け,地域のリーダーや医師会が一丸となって取り組む必要性を強調し,理解と協力を求めた.
9 テレビ会議システムの活用について
清治邦夫代議員(山形県)からの,若手医師等の医師会活動への参画促進のためにテレビ会議システムの活用推進を提案する質問には,道永麻里常任理事が回答した.
同常任理事は,これまで,日医の会内委員会へのテレビ会議参加については,原則として都道府県医師会館を拠点としてきたが,来年度からは要望があれば,都道府県医師会館だけでなく,委員の先生方の自宅や医療機関からも参加頂けるようにしていく意向を表明.また,「現在利用しているテレビ会議システムは,希望する都道府県医師会に無料で貸し出しを行っており,平成二十五年度は山形県医師会を始め十道府県医師会に,延べ六十回ほど利用頂いているが,興味のある医師会は,担当の広報・情報課に相談して欲しい」と述べ,今後も委員の先生方の負担を少しでも減らせるよう,一層力を入れて取り組んでいく意向を示した.
10 医師資格証の未来に期待する
橋本雄幸代議員(東京都)からの,医師資格証の未来に期待するとの質問に,石川常任理事は,日医認証局から発行するカードは,IT世界での利用以外に,現実のアナログの世界でも医師の資格を証明する身分証明書となることを目指して作成したと説明し,「現段階では,あくまで日医が発行する資格証であるが,公的な意味合いを持ったカードとなるよう,各行政機関等への働き掛けを加速させていく」と述べた.
また,例えば,医師の採用時にカードの提示を求めることで,医師であることの証明とするなどの取り組みに関しても,関係各方面に働き掛けを進めているとし,日医が発行している会員証との関係については,将来的には統合を進めるべく検討を行っているとした.更に,各学会とも連携することで,より広い範囲で身分証として活用出来るような取り組みも進めていくとして,医師資格証を,幅広く活用していく考えを示した.
11 看護専門学校における臨地実習緩和の確認・周知と要望
山下裕久代議員(北海道)からの,看護専門学校における臨地実習緩和の確認・周知と要望に対しては,藤川謙二常任理事が,まず,厚労省医政局看護課からの臨地実習緩和の通達(平成二十四年六月十四日付)の周知・運用に関しては,各養成所へのアンケートを実施して,活用状況の把握や課題の抽出などを行うとした.また,職種により母性小児の臨地実習の時間を変えて,ビデオ等を活用することについては,「難しい」との考えを示した.
更に,日医の要望により,今年三月に実習指導者講習会の要綱が改正され,一部eラーニングの活用が認められたことに触れ,実際にeラーニングを活用するかどうかは都道府県の判断になるとして,各都道府県医師会からの行政に対する積極的な働き掛けを要請するとともに,日医としては,実習施設の確保に向けて,厚労省に要件の緩和や実習施設への補助の充実等を改めて要望していくとした.
12 「地域包括診療料」についての疑念
13 地域包括診療料の包括評価などについて
吉本正博代議員(山口県),今眞人代議員(北海道)からの地域包括診療料に関する質問には,鈴木常任理事が,まず,今回の診療報酬改定を振り返って,評価の重点が急性期の大病院から,地域包括ケアシステムの担い手であるかかりつけ医機能を持つ診療所,有床診療所,中小病院に移った改定であったと評価するとともに,かかりつけ医機能の評価を巡る経緯として,中医協において,支払側が一貫して包括評価を主張する中,日医を中心とする診療側は,かつての外総診や後期高齢者診療料の教訓から,一貫して加算による評価を主張してきたことを強調.
その上で,今改定において「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」の二項目が新設されたことは,かかりつけ医機能を評価する第一歩であるとの認識を示すとともに,今回は,財源の制約から,要件が厳しく設定されているが,今後,現場の状況を検証しながらその改善を求めていくとした.
また,算定要件に示された四疾患(高血圧,糖尿病,脂質異常症,認知症)については,(1)高齢者には複数の疾患を有する方が多く,特に生活習慣病は長期にわたる全身管理が必要なこと(2)認知症は,いわゆるオレンジプランにおいて,今後,かかりつけ医の役割が重視されていること─を受けて選ばれたと説明.更に,今回の包括化の導入が,「人頭制・外来包括化・登録医制」や「主病ルール」の強化に結び付くのではないかとの懸念に対しては,「日医は全く考えていない」との見解を示し,今後,更なるかかりつけ医機能の充実に向け対応していくとして,理解を求めた.
14 診療報酬制度について
現行の診療報酬の請求・支払の枠組みに対する日医の見解を問う佐藤光治代議員(長崎県)の質問には,葉梨之紀常任理事が回答した.
同常任理事は,診療報酬の請求先で支払い元でもある審査支払基金の審査員は,行政・支払側・診療側の三者から推薦された医療関係者が担当し,減点や審査の不明な事項については異議申し立てを行うことが出来るとともに,支払基金審査員との交渉の場が保障されている等,公正に運営されていると説明.各県・各地域によって審査員の考え方に若干の違いがあることも聞いているが,審査の結果,請求点数の減点や,過去にさかのぼった返還命令も,公的な保険を扱う立場からはやむを得ない処置なのではないかとの認識を示した.
その上で,世界に誇るべき日本の公的医療制度は国民皆保険下の診療報酬制度により支えられていることを改めて強調し,その維持に向けた各都道府県医師会の理解と協力を求めた.
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