日医ニュース
日医ニュース目次 第1268号(平成26年7月5日)

三師会合同記者会見
「患者申出療養(仮称)」の創設に対する見解を公表
引き続き,患者の生命と健康が危険にさらされないよう注視する意向を表明

 横倉義武会長は六月十三日,大久保満男日本歯科医師会長,児玉孝日本薬剤師会長と共に厚生労働省で三師会合同記者会見を行い,「患者申出療養(仮称)」に対する見解を公表.「最低限のことは担保されている」とした上で,引き続き,患者の生命と健康が危険にさらされることのないよう,注視していく意向を示した.

会見に臨む横倉会長(中央),
大久保日歯会長(右),児玉日薬会長(左)

 今回の会見は,六月十日に安倍晋三内閣総理大臣が患者の視点に立った新たな仕組みとして「患者申出療養(仮称)」を創設し,「安全性や有効性が確立すれば,最終的には国民皆保険の下,保険の適用を行っていく」と表明したこと,規制改革会議が同制度の創設を盛り込んだ「規制改革に関する第二次答申」を十三日に提出したこと等を受けて,行われたものである.
 横倉会長は,まず,保険外併用療養費制度について,「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険の理念を基本に据えて導入されたものであるとし,「この理念は引き続き順守されなければならないものである」と指摘した.
 更に,医療に関しては,(一)患者がその治療を望んだとしても,高度かつ先進的な医療であれば,内容を理解することは非常に難しく,医師と患者の間には情報の非対称性が存在すること,(二)医療行為は本質的に不確実性を伴い,たとえ医師が十分な説明をしたとしても,患者の自己責任に委ねられることになること,(三)患者がその治療を望んだ上で,医師が困難な病気と闘う患者を救うために真剣に医療に取り組んだにもかかわらず,結果として医療の経過中に不幸な事態になってしまう場合もあり得ること─を説明.それゆえに,安全性と有効性の確保のためには,現行の評価療養と同様,プロトコルの確認等,一定水準の安全性・有効性の確認が必須になるとした.
 今回その創設が提言された「患者申出療養(仮称)」については,当初,規制改革会議が提言していた「選択療養(仮称)」に比べて,「実施時に安全性・有効性を確認するとしたこと」「作成した実施計画を国が確認し,その結果の報告を求め,安全性・有効性を評価した上で,将来的に保険収載を目指すとした点が盛り込まれたこと」を一定程度評価.「これらのことが盛り込まれたことで最低限の担保はなされている」とした.
 その上で,同会長は,「国民の幸福の原点は健康であり,病に苦しむ人がいれば,何としても助けたいというのが医療人の願いである.私たちの願いは必要とする医療が過不足なく受けられる社会づくりに尽きる」と強調.
 その一方で,「日医としても,困難な病気と闘う患者の命を救うために,新しい医療を迅速に保険診療として使えるようにすべきという方向性に異論はないが,医療に関する規制は,国民の生命と健康を守るためにあることを忘れてはならない」と述べ,行き過ぎた規制緩和の流れに釘を刺した.
 また,今後については,「厚労省の審議会等での議論を経た上で,健康保険法の改正に向けた議論が開始されることになるが,患者の生命と健康が危険にさらされることのないよう,これからも注視していきたい」と述べた.

「患者申出療養(仮称)」に対する三師会の考えは一致

 引き続き,意見を述べた大久保日歯会長は,「日医が示した見解には全て同意したい」とした上で,「医療に関する規制は必要なものであり,その規制を守ることによって,国民の健康も守ることが出来る」と強調.今後は,国民の生命を守るため,三師会が力を合わせて制度の充実に努めていきたいとした.
 児玉日薬会長は,「この問題に対する考え方は日医と全く同じであり,これからは安全性・有効性をどう担保していくことが出来るかが重要になる」と指摘.また,制度の運用が開始される際には未承認薬の使用が増えていくことに懸念を示し,より慎重な対応を求めた.

三師会合同記者会見/「患者申出療養(仮称)」の創設に対する見解を公表/引き続き,患者の生命と健康が危険にさらされないよう注視する意向を表明(図)

三師会合同記者会見/「患者申出療養(仮称)」の創設に対する見解を公表/引き続き,患者の生命と健康が危険にさらされないよう注視する意向を表明(図)

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