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第1274号(平成26年10月5日) |
9月10日
東日本大震災を踏まえた安定ヨウ素剤配布のガイドライン策定とその実践について
石井正三常任理事は,東日本大震災を踏まえた安定ヨウ素剤配布のガイドライン策定とその実践について報告した.
同常任理事は,まず,九月十日に九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可が決定されたことに言及.
このことは,わが国のエネルギー政策に今後大きな影響を与えることになると思うが,原子炉の稼働の有無にかかわらず,自然災害などにも起因し得る原子力災害の防護対策は,住民を放射線被ばくから守るという観点から,日医においても最大の関心をもって取り組んでいるところだとした.
その上で,〈日医総研ワーキングペーパー〉「原子力発電所災害時の避難指示等の情報伝達と安定ヨウ素剤の服用に関する研究─原発事故の『情報災害』への対応と実効性のある『安定ヨウ素剤』の配布・服用─」について概説.
「本ワーキングペーパーで指摘しているように,住民や患者が避難する際の放射線による甲状腺被ばくから守るためには,多くの医師が住民と向き合い,より丁寧な説明を行う必要がある」とし,その観点から日医では,原発立地周辺の医師のみならず,全ての医師や医師会に活用してもらうため,本年三月に『原子力災害における安定ヨウ素剤服用ガイドライン』を,更に五月には要約版の『2014年版 原子力災害における安定ヨウ素剤服用ガイドブック』を相次いで発行したことを報告.
その中には,「安定ヨウ素剤の事前配布に関して必要な事項」「原子力施設事故の避難と服用の関係」「平時における医師の準備すべき点」等が記載されていることを紹介した.
また,ガイドブックは全ての医師会や関係機関に配布し,特に鹿児島県の先生方には,安定ヨウ素剤の事前配布説明会で活用してもらえるよう,百冊程送り,事前配布が実施された際には,本ガイドブックが,地元密着で大いに役に立ったという報告を受けていることを紹介した.
更に,行政に対する協力では,川内市医師会が中心となり,住民説明会に医師を派遣することはもとより,地元の医師に対して放射線医学総合研究所の先生を講師に招いた勉強会を開催するなど,行政と連携しながら積極的に行った独自の取り組みもあるとした.
その上で,日医,県医師会,郡市医師会が連携し,入院患者等の避難計画の作成についても,それぞれの行政との連携によって,全体で住民の健康を守るために尽力しているところだとした.
最後に,同常任理事は,こうした取り組みは,川内原発の再稼働のための対策のみならず,「原発が存在している」ということをリスクとして捉え,あらゆる事象でも住民の健康をいかに守るかという視点から防災体制を強化するものであるとの考えを示し,「今後,全国各地で事前配布が行われることになるが,そこでもこのガイドブックが活用されるものと思っている」と述べた.
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