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第1276号(平成26年11月5日) |
第36回産業保健活動推進全国会議
産業保健総合支援三事業の安定的・継続的な運用に向けて
第三十六回産業保健活動推進全国会議が十月九日,日医会館大講堂で開催された.
冒頭,あいさつに立った横倉義武会長(今村聡副会長代読)は,本年四月より産業保健三事業が一元化されるとともに,全都道府県に産業保健総合支援センターが設置されたが,傷害保険,医師賠償責任保険,地域医師会の事務経費等いくつかの課題があると指摘.「新しい産業保健事業がその機能を発揮し,安定的・継続的に運用されるよう,現場の先生方の声を踏まえ,今後も厚生労働省並びに労働者健康福祉機構に働き掛けていきたい」と述べた.
更に,労働安全衛生法が改正され,労働者に対しストレスチェックを実施することが義務づけられたことにも言及.日医認定産業医並びに産業保健総合支援センターに期待される役割はますます増大することからも,都道府県・郡市区医師会が安心して主体的に取り組むことができる環境づくりのために,今後も厚労省との折衝を重ねていくとした.
続いて,あいさつした塩崎恭久厚労大臣(土屋喜久厚労省労働基準局安全衛生部長代読)は,昨今の労働者の安全と健康をめぐる状況を踏まえて,平成二十五年度から五カ年計画として第十二次労働災害防止計画に基づく取り組みを進めていることに言及.また,今年度より一体的に運営・実施することとなった産業保健総合支援三事業についても,事業が円滑に実施されるよう,予算の確保も含め積極的に取り組んでいく考えを示した.
その後,活動事例報告として,山梨産業保健総合支援センターの橋英尚所長と鹿児島産業保健総合支援センターの草野健所長から,各県における産業保健活動総合支援事業の取り組みが紹介され,質疑応答が行われた.
午後は,泉陽子厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課長が,「最近の労働衛生行政の動向について」と題して講演し,改正された労働安全衛生法の概要について解説した.
今回の法改正のポイントとして,事業者に義務化されるストレスチェックを挙げ,(1)常時使用する労働者に対して,医師,保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となる(2)検査結果は,検査を実施した医師,保健師等から直接本人に通知され,本人の同意なく事業者に提供することは禁止される─ことについて説明.新たな産業保健事業の中の一つの重要なパートとしてメンタルヘルス対策が組み込まれていることにも触れ,「事業所全体の仕組みの中でどのように活用していくかが重要である」と述べた.
また,井上仁厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室長は,「治療と就労の両立支援等について」と題して講演.治療と職業生活の両立等の支援の現状等に関するさまざまなデータを紹介するとともに,厚労省労働基準局で行っている取り組みについて解説した.
職業生活と治療との両立については,労働者,企業,産業医・産業保健スタッフ,医療機関等の関係者の取り組みや連携が十分行われていないと指摘.その上で,両立支援は,育児・介護等と同様にワーク・ライフ・バランスの観点からも重要であることから,今後は行政も既存の仕組み・施策を活用しつつ,縦割り行政を排除し,一元的な取り組みを進めることが重要であるとした.
協議では,相澤好治日医産業保健委員会委員長の司会の下,厚労省の泉課長,亀澤典子労働者健康福祉機構理事,岩伸夫産業医学振興財団事務局長,道永麻里常任理事の四氏が,十一県から事前に寄せられていた,団体傷害保険,賠償責任保険や予算配分,日医認定産業医制度等の質問・要望についてそれぞれ回答を行った.
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