日医ニュース
日医ニュース目次 第1288号(平成27年5月5日)

都道府県医師会産業保健担当理事連絡協議会
労働安全衛生法改正に伴うストレスチェック制度の実施概要を概説

都道府県医師会産業保健担当理事連絡協議会/労働安全衛生法改正に伴うストレスチェック制度の実施概要を概説(写真) 都道府県医師会産業保健担当理事連絡協議会が四月三日,日医会館大講堂で開催された.
 道永麻里常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつした横倉義武会長は,本年十二月よりストレスチェック制度が義務化されることに伴い,本年度からストレスチェックを実施した小規模事業場に対して助成制度が導入される他,地域産業保健センターがストレスチェック結果に基づく面接指導の実施等を行う場合を想定し,地域産業保健センターにおける訪問指導の予算も増額されることになったことを報告.「活力ある長寿社会を構築していくためにも,引き続き,厚生労働省に対して地域産業保健センターが小規模事業場のニーズに十分に応えられるよう,必要な予算措置を求めていきたい」と述べた.
 議事では,新たに実施されるストレスチェック制度の概要について,説明が行われた.
 相澤好治北里大学名誉教授は,「ストレスチェック制度に関する検討の経緯」と題して,これまで,主に二次予防が中心であったメンタルヘルス対策が,今回の法改正では労働者のメンタルヘルスの不調の未然防止等一次予防を重点としたものとなり,労働者に対するストレスチェックの実施が事業所に対して義務づけられたと説明.
 「本制度の実施体制づくりはあくまで事業者の役割であり,実務上は事業者から産業医に依頼がなされるものである」とした上で,ストレスチェック及び面接指導の実施に関する留意事項として,「ストレスチェックは記入者が正直に回答することが前提でなければならず,そのためには,調査結果の情報管理の徹底と調査結果が受検者の不利益につながらないような取り扱いが重要になる」と指摘した.
 また,ストレスチェックで得た情報は機微性があり,労働者の同意がなければ事業者には伝えられず,高ストレス者が必ずしも面接を申し出ない可能性もあることから,面接の申し出を行わない場合も相談につながる受け皿があることが重要になるとして,現状の産業保健相談体制やメンタルヘルス相談の仕組みの更なる活用を求めた.
 泉陽子厚労省労働基準局労働衛生課長は,「ストレスチェック制度の詳細について〜改正法に基づく省令・指針・マニュアルの概要〜」と題して,ストレスチェック制度の具体的な運用方法について概説した.
 本制度における産業医の役割については,「ストレスチェックの実施やその結果に基づく面接指導の実施は必ずしも義務ではないが,事業所の実情を理解している産業医が本制度の中心的な役割を担うのが望ましい」として,少なくとも,(1)調査票の選定及び高ストレス者の選定基準等について事業者に対し専門的な見地から意見を述べる(2)個々の労働者の結果最終判定を行う─こと等について,積極的な関与を要望.
 ストレスチェックの実施方法については,一年以内ごとに一回,「ストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲の支援」に関する項目が含まれている調査票を用いて定期的に行うこととし,ストレスチェックの検査結果の記録・保存については,五年間の保存義務が課せられるが,実施者による保存が困難な場合には事業者が指名した実施事務従事者が行うことも可能であるとした.
 その上で,労働者自身がパソコンのウェブ上で行ったストレスチェックの結果を自動的に結果判定する「ストレスチェック制度の実施支援プログラム」を紹介.「本事業が産業医の負担にならないよう,本プログラムを無料で配布したいと考えている」と述べ,本事業施行に対する理解と協力を求めるとともに,「十二月の制度施行に向け,本制度の省令や指針・マニュアルについて,四月下旬を目途に公表予定であること」「今後,事業者向けの説明会及び実施の中心となる医師・保健師等向けの研修会を行っていくこと」なども報告した.
 引き続き,労働者健康福祉機構から,平成二十七年度の産業保健総合支援事業並びに産業保健活動に伴う訴訟リスクに備え,本年七月より新たに加入する賠償責任保険・傷害保険について説明が行われた後,事前に寄せられた各都道府県医師会からの意見・質問への回答を行い,協議会は終了となった.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.