日医ニュース
日医ニュース目次 第1291号(平成27年6月20日)

世界獣医学協会・世界医師会共催
「“One Health”に関する国際会議」開催される

タイス・クウィケン エラスムス大学教授,
横倉会長,蔵内日本獣医師会長
 世界獣医学協会(WVA)・世界医師会(WMA)共催「“One Health”に関する国際会議」が五月二十一・二十二の両日にかけて,スペインのマドリードで開催され,日医から横倉義武会長,松原謙二副会長,石井正三常任理事が出席した.
 本会議は,「“One Health”に向けての牽引者たち─医師と獣医師間の協力の強化─」をテーマに,医師,獣医師,学生,公衆衛生担当官,NGOそして世界各地域からの参加者が“One Health”の概念の重要な側面を学び,議論することを目的として開催されたものである.
 会議には,各国医師会・獣医師会を始め,スペイン保健省長官,各国大学関係者等,約三百五十名が出席した.
 二十一日には,カルロス・モレノ・サンチェス スペイン保健省長官,レネ・カールソン世界獣医学協会長,ザビエル・ドゥー世界医師会長らから歓迎の辞があった他,「導入セッション「One Healthの概念」「セッション:人獣共通感染症」が行われた.
 二十二日には,「抗菌薬耐性」「“One Health”のその他の側面」の二つのセッションが行われた.「セッション:“One Health”のその他の側面」では,ファン・ロドリゲス・サンディン スペイン医師会長を座長に,アラスデア・クック サリー大学教授,タイス・クウィケン エラスムス大学教授の講演に続き,「自然災害のマネジメント─備えと医師・獣医師“One Health”の連携」をテーマに,横倉会長及び日本獣医師会の蔵内勇夫会長が,それぞれ東日本大震災とその後の対応について講演を行った.
 講演において,横倉会長は,東日本大震災と福島第一原発事故への日医の対応を説明.JAXA(宇宙航空研究開発機構)との協定による共同実験の実施,“かかりつけ医”機能の充実・強化と地域包括ケアシステムの下での災害に強い医療提供体制の構築,医師と獣医師が協力する取り組みとして,動物由来感染症対策や食の安全の向上等のため,日医と日本獣医師会との間で学術協力の推進のための協定書を締結したこと等を紹介し,災害への備えのためにも,今後ますます医師と獣医師とが“One Health”の理念を共有し,連携を強固なものにしていかなければならないと結んだ.
 質疑応答では,原発事故後の対応について質問が集中し,横倉会長は,「被災者への健康支援として継続的な健康診断を実施しており,特に心配されている子どもの甲状腺がん発生比率は従来と比して多くない状況だが,子ども達が外で運動できず,運動能力が低下していることについての改善策を検討中である」と述べた.
 また,石井常任理事は,「福島県では日々農産物や環境中のセシウムなどによる汚染度を計測し,食はもちろん環境への影響について現在考え得る限りの対応を行っており,日本の安全性は十分担保されている」と報告した.
 更に,住民の健康については,医師会も行政と共に継続的に対応していると,福島県の現状と今後の課題を伝えた.
 横倉会長の講演を受け,日本における「かかりつけ医」及び「地域包括ケアシステム」に関心を示したスペイン医師会長からは,双方の国における医療制度,医療情報及び課題について情報を共有することを目的とした調査団の派遣と受け入れについて,相互協定を結びたいとの意向が示された.
 なお,二十一日には,在スペイン日本国大使館の越川和彦大使から,日医及び日本獣医師会代表団が招待を受け,大使公邸において招宴が催された.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.