指導:杏林大学医学部第二内科教授

   石川恭三

心臓を動かす「電気刺激」

 心臓は休みなく、脳、肝臓、腎臓、肺などの重要臓器をはじめ全身に血液を送るという大切な役目を担っています。右心房の入口近くにある洞結節(いわば発電所のようなもの)から電気刺激が出て、心筋(心臓の筋肉)を収縮させ、血液が送り出され、その収縮(拍動)が脈拍として感じられるのです。 若い健康な人では脈拍数は安静時で1分間に60〜80です。ところが洞結節から刺激が伝わるルートに異常が起きたり、別のルートができたりほかの部分から刺激が出たりすると不整脈が起きます。不整脈は@脈が飛んだり不規則になる、A脈拍が異常に早くなる(頻脈;1分間に100回以上)、B脈拍が異常に遅くなる(徐脈;1分間に50回以下)、の3つに大きく分けられますが、はたして不整脈はそんなに危険なのでしょうか。

こんな不整脈がこわい

 脈の乱れは期外収縮でみられますが、一般的にそれほど重症なものはありません。しかし、別表のように治療が必要な不整脈もあります。頻脈であっても徐脈であっても、脳に送り出す血液が不足するため意識を失い、ひいては生命に危険が及ぶことがあります。

危険な不整脈は発見するには

 疲れたり、寝不足だったりしても脈が乱れることはよくありますが、一時的なものであれば、心配ありません。心臓が不規則に鼓動したり、脈が早くなったり遅くなったりの症状が長く続く、胸苦しさやめまい、失神などの自覚症状があったら、ぜひ医師の診察を受けてください。大部分は心電図検査、ホルター心電計による検査などで、治療を要するかどうかの診断がつきます。



●危険な不整脈の主なもの

洞房ブロック 洞結節かその周辺の異常により電気刺激が送られず、心房と心室が時々収縮しなくなる めまいや失神、ときに生命の危険がある
心房細動 心房の各部分が勝手に興奮し、細かく震え、心室も不規則に収縮するようになる 激しい動悸、胸苦しさ。塞栓症の原因にも
房室ブロック 洞結節でつくられた電気刺激が房室結節を通過しにくくなったり途絶えてしまう 心室に異常が出た場合には失神、ときに生命の危険がある
心室頻拍 心室の中で勝手に電気刺激が起こり、拍動が異常に増える 激しい動悸、失神、ショック状態。心不全の原因にも
心室細動 心室の各部分が勝手に興奮し、心室が細かく震え、血液を送り出せなくなる 脳への血流が途絶えるため、生命の危険がある

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