指導:福岡大学医学部第二内科教授 荒川 規矩男 |
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およそ2400年前、古代ギリシャ時代の「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスは「運動をすれば生体内の余分なものが燃焼される。食事がどんなに上質で適量でも、運動には代えられない」と述べています。この考え方は、今日、運動と生体の反応を科学的に分析できるようになって実証されつつあります。 | ||
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最近の研究では、運動量が少ないと最大酸素摂取量(いわゆる体力)が低くなり、血圧が上昇してくることがわかっています。逆に高血圧の人が軽い運動、すなわちその人の最大酸素摂取量の半分程度の運動をすることで、血圧を下げる効果があることがわかっています。この軽い運動とは、隣にいる人と笑顔で会話できる程度、つまりちょっと速めの散歩程度で十分なのです。 | ||
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ここにそれを示すデータがあります(図)。軽症から中等症の高血圧の患者さんたちを、運動するグループと運動しないグループに分けて、血圧が10週間でどう変化するかを調べたものです。グラフは一目瞭然に運動の効果を示しており、運動しないグループは高血圧のままですが、運動したグループは降圧薬を服用した後のように血圧が下がっています。 |
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私たちの体は、ガンバリの素である「昇圧因子」と、おだやかの素である「降圧因子」のバランスがとれていますが、この「てんびん」が昇圧に傾くと高血圧になります。運動はこの傾きを降圧側に戻してくれる、つまり体内で“降圧薬”を作り出してくれるのです。適度な運動は、血圧を下げるだけでなく、中性脂肪を減らして善玉コレステロールを増やし、また、糖尿病や癌など、さまざまな慢性疾患の予防にも役立つのです。さあ、歩きましょう。 |
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