「健康ぷらざ」11月5日号  

指導:東京女子医科大学糖尿病センター眼科講師

   加藤 聡

なぜ眼に影響が?

 糖尿病は全身のみならず眼にもさまざまな合併症を引き起こし、その中に成人失明原因の第一位である「糖尿病網膜症」があります。
 眼をカメラにたとえるならば網膜はいわばフイルムにあたり、その役割を果たすために毛細血管が縦横に走っています。糖尿病になり、高血糖の期間が長く続くと毛細血管そのものが壊れたり、血液性状が変化したりして、血管が破れたり、血液が詰まったりします。これが「糖尿病網膜症」の始まりです。差らにその状態が長く続くと新たな血管が発生しますが、これはとても脆く、何かの衝撃ですぐに破れ、高度な視力低下の原因になります。

早期発見と定期的通院が大切

 「糖尿病網膜症」の初期には自覚症状がありません。ですからたとえ自覚症状がなくても糖尿病と診断されたらすぐに、眼科受診をすることが重要です。網膜症がない状態や網膜症の初期の段階では、糖尿病の血糖コントロールが治療の原則となります。眼にはなんら自覚症状がないからといって、眼科受診をさぼっていると、気がついたときにはすでに新しい血管がでている状態(増殖糖尿病網膜症)まで進行していることもあります。
 糖尿病と診断されたならば、(1)網膜症がなくても年に1回、(2)初期の網膜症があれば3〜6カ月に1回、(3)さらに進行している網膜症があれば2週から2カ月に1回の定期的眼科受診が必要となります。早期発見と定期的通院が糖尿病網膜症の悪化を防ぐうえで大原則になります。

悪化させないために

 糖尿病網膜症の治療の基本は血糖コントロールです。それでも進行してしまった場合は、レーザー光線による網膜光線固術や硝子体手術が必要となります。近年、その器械や技術の進歩により治療成績はめざましく改善してきましたが、不幸にして社会生活を送るうえで十分な視力が得られない場合もまだあります。そのようにならないためにも早期から内科、眼科の主治医の指示に従い、生活習慣の改善と定期的受診を心がけましょう。


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