白クマ
日医白クマ通信 No.1003
2008年9月11日(木)


定例記者会見
医療・介護費用のシミュレーションの前提を批判―中川常任理事

 中川俊男常任理事は、9月9日に開催された社会保障国民会議サービス保障(医療・介護・福祉)分科会に示された「社会保障国民会議における検討に資するために行う医療・介護費用のシミュレーションの前提」に対する日医の見解を公表した。

 同常任理事は、まず、「医療は、急性期から慢性期まで切れ目なく提供されなければならない」とする日医の考えを説明し、社会保障国民会議が中間報告をまとめ公表した際にも、急性期病院偏重の資源配分は問題と指摘したにもかかわらず、今回示されたシミュレーションの前提も、病院に資源を集中投入する方向になっていることに不満を表明。前提は「大胆な仮定」に基づくものとされているが、地域医療崩壊の現実を踏まえれば、ずさん、無謀な仮定であると言わざるを得ず、このままでは国民に負担を強いかねないと批判。シミュレーションを行う際には、医療・介護提供体制のあり方について、十分な合意形成を行うべきであると主張した。

 同シミュレーションの前提に示された「改革ケース」の具体的な問題点としては、(1)平均在院日数を短縮し、その実現のために1病床当たりの職員数や医療機器の配備を増加させることを前提としていること、(2)医療療養病床の入院患者数を減少させて推計していること―を指摘。

 (1)に関しては、行き過ぎた平均在院日数の短縮化の結果、困難な在宅医療や通院を強いられる患者が増加しつつあり、いわゆる「がん難民」も少なくないと報道されていることを挙げ、地域や社会的背景も踏まえたうえで、国民、患者の立場から「あるべき姿」を提言することが先決なのではないかと述べた。

 また、職員数を「何割増」としていることについても、確かなエビデンスがあるとも思えず、ただ職員数を増やしだけでは、かえって医師・看護職員等の偏在を進め、医療崩壊を加速させることにもなりかねないと批判した。

 (2)については、日医が高齢の患者実態調査の結果を基に、2025年には医療療養病床が33.5万床、新たな介護施設等が17.8万床必要との試算を示している(日本医師会 グランドデザイン2007 総論(2007年3月))ことを改めて説明。また、2005年には75歳以上人口の約3分の1が「独居」またはいわゆる「老老」世帯に暮らしている((日本医師会 グランドデザイン2007 総論(2007年3月))なかで、「改革ケース」では、医療療養病床の入院患者数を1日当たり21〜23万人とするなど、在宅偏重になることの危険性を指摘し、この点からも、社会的背景の変化を踏まえて、提供体制のあり方をきちんと議論することを強く求めていきたいとした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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