白クマ
日医白クマ通信 No.1006
2008年9月19日(金)


定例記者会見「国民医療費の伸びの真相」
―中川常任理事

 厚生労働省は、8月28日に、2006年度の国民医療費を発表し、「高齢化の進展で前年度比1.3%増、医療の高度化を含む自然増で1.8%増だったものの、マイナス3.16%の改定によって結果的に0.004%減となった」と説明した。これに対し、中川俊男常任理事は、9月17日の記者会見で、「医療の高度化」が、主たる要因と言えるのかを検証するため、国民医療費の伸びについて、診療種類別、年齢階級別、傷病別等の視点から、あらためて分析を行なった結果を公表した。

 同常任理事は、厚生労働省は国民医療費の伸びの内訳を、1.診療報酬改定等、2.人口増、3.人口の高齢化、4.その他に分けて説明しているが、実際には「4.その他」には、1.〜3.以外のすべての要素、つまり疾病構造の変化、受療率の変化、その背景にある医療制度改革なども含まれており、「医療の高度化」を強調するのは不適切であると批判した。

 診療報酬改定がなかった年についてみると、国民医療費全体では、2001年度3.18%、2003年度1.90%、2005年度3.17%の伸びであるが、診療種類別では、これに寄与したのは薬局調剤医療費であり、これも「医療の高度化」というより、医薬分業政策により院外処方が拡大したことが主要因と推察されると指摘した。

 傷病別では、脳血管疾患(入院)や、虚血性心疾患(入院)の実際の医療費は、「人口増減と高齢化によって伸びるべき医療費」を下回った。いずれも高齢者の受療率が低下しており、虚血性心疾患では、在院日数の短縮も顕著であった。こうした結果から、同常任理事は、「高齢者の1人当たり医療費が高く、長期療養を要する傷病では、平均在院日数の短縮化や療養病床の削減もあり、医療費が抑制されている実態がうかがえる」と分析した。

 一方、悪性新生物では、入院において、もともと短い平均在院日数がさらに短くなった。また悪性新生物は、入院単価(1日当たり点数)だけでなく、入院外でも単価が上昇。他の傷病に比べると、入院外で老人の単価が伸びた点が特徴的であり、DPC導入に伴い短期間で退院し、その結果、外来化学療法などの医療の高度化も進展しているのではないかと推察されるとした。

 同常任理事は、年齢階級別や傷病別の医療費の伸びだけでは、医療費抑制の実態まではわからないが、「人口増減と高齢化によって伸びるべき医療費」と実際との乖離を分析することによって、特に「高齢者の受療率が高い傷病において、強い医療費抑制がうかがえた」として、国がきめ細かい医療費のエビデンスも踏まえて検討し、現在の医療費抑制政策を転換するよう強く求めると述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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