白クマ
日医白クマ通信 No.1349
2010年11月18日(木)


大学病院の医療に関する懇談会
「医学部の地域枠や、医療ADRの方向性などについて協議」

大学病院の医療に関する懇談会


 大学病院の医療に関する懇談会が11月11日、日医会館で開催された。

 冒頭、原中勝征会長と、黒岩義之全国医学部長病院長会議会長があいさつし、原中会長は、「長年の医療費抑制政策が、現在の医療崩壊の状況をつくってしまった。一方、これを正すことを利用して、医学部の新設や医療ツーリズム、特定看護師(仮称)など、さまざまな動きがある。日医としては、国民皆保険制度が崩れるような施策には大反対であるが、国民にプラスになることであれば自分たちの立場を捨てても賛成するという、危機的状況を判断をしたうえでの実効ある行動をとろうとしている」と述べ、忌憚のない意見を求めた。

 協議事項は、(1)医療事故調査制度、(2)医療裁判外紛争解決機関(ADR)、(3)医学部入学定員、(4)医学部入学試験「地域枠」のあり方、(5)新設医学部設置、(6)大学病院と医師会の連携による医師育成、(7)特定機能病院―についてであった。

 (3)〜(5)の医学部の地域枠や新設に関しては、中川俊男副会長が医師不足と偏在の解消策について日医で検討中であることを述べたうえで、地域枠について、特別カリキュラムの存在や奨学金のあり方の問題点などを指摘。文部科学省の鈴木寛副大臣に面会し、医学部の新設について慎重な対応を求めたことや、医学部の新設と定員増に関する検討を行うために設置すると報道されている有識者会議に参加する方向であることを報告し、大学病院側も、「医学部(医科大学)新設に慎重な対応を求める意見書」を文科省の関係局に提出したことを報告した。

 (1)では、大学病院側より、医療事故調査のあり方について、方針を修正するよう申し入れがあり、今村聡常任理事は、刑事訴追につながる仕組みは認めない方向で、再度検討会を設けて議論することを説明した。

 (2)では、大学病院側より、医療ADRが金銭での決着の場になっている現状が報告された。原中会長は、医療ADRの本来の意義は、医師が患者に十分に説明することによって医療への不信感を払拭することであると強調し、今村(聡)常任理事は、日医としても在るべき姿を検討していく方針であることを述べた。

 (6)、(7)は、日医より鈴木邦彦常任理事が発題。(6)では、大学病院と医師会の連携による医師育成について問題提起し、新医師臨床研修制度のあり方などをめぐって意見が交わされた。(7)では、社会保障審議会医療分科会長あてに、特定機能病院の新規承認に慎重な審査を求める要望書を提出したことを報告。大学病院からも、外形基準のみで、安易に承認することに危機感が示され、特定機能病院の定義、在り方を明確にするよう求める発言があった。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代)


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