白クマ
日医白クマ通信 No.1411
2011年4月7日(木)


「医師臨床研修制度」に係る勤務医委員会臨床研修医部会からの意見・提言

 日本医師会では、平成22年1月12日、勤務医委員会のもとに勤務医委員会臨床研修医部会を設置しました。

 同部会から、3月28日に、「『医師臨床研修制度』に係る勤務医委員会臨床研修医部会からの意見・提言」が本会に提出されましたので、以下その内容を紹介いたします。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 勤務医委員会臨床研修医部会は、平成22年2月5日に第1回部会を開催し、 医学部教育を含めた臨床研修制度に係る諸課題等について、これまで6回にわ たり検討を続けてまいりました。

 ここに部会の見解を取りまとめましたので、報告いたします。

I 研修状況等
 臨床研修が必修化され、全国の様々な病院で臨床研修が行われるようになっ た。その研修状況は多岐にわたり、主に習得する技術や労働環境も施設ごとに 異なる状況である。特に大学病院と市中病院、都市部の病院と地域の病院では 経験症例、指導医の充実、労働条件に大きな違いがみられる。臨床研修を制度 化する以上、研修施設によらず標準的な診療を行う能力を身につけていく必要 がある。そのためにも研修内容と労働環境の標準化が重要と考える。

II 研修期間・スーパーローテート
 現在は2年間の初期研修期間を設定し、志望科とは関係なく必修の科を経験 するスーパーローテート方式を採用している。将来目標としている専門科だけ でなく各科を実際に経験することで得られる経験を重要と感じる研修医が多い という結果であった。一方で2年間の研修期間は、科によってはローテーショ ンの期間が不十分となる。加えて専門性の高い分野(各科専門医、行政等)を 志望する研修医に対しては、自由度の高い研修カリキュラムを希望する声もあ った。今後、適切な研修期間について検討する必要があるが、卒前教育の内容 を踏まえて考慮していくことが望ましく、研修病院と大学病院の垣根を越えた 議論が重要である。

III 地域医療研修
 初期研修の多くが大学病院もしくは地域の基幹病院で行われている。しかし、 医療を担うのは前述の急性期病院、大病院だけではない。その現実を地域医療 研修で実体験として感じることは、各々の志望科に進む上で重要と考える。た だし、地域医療研修の多くが現場任せの研修となっており、ともすれば研修医 を医療過疎地の労働力としてのみ期待する状況も見られる。今後は、地域医療 研修を、医療の多様性を実体験し医師としての幅を広げる機会とするよう、標 準化を図っていく必要がある。

IV 初期研修修了後のキャリアパス
 近年は初期研修後の進路について、様々なキャリアプランが選択可能であり、 大半の医師が医局に所属していた状況から大きく変化をしてきている。そのた め初期研修後のキャリアパスを研修医自身が検討する必要があり、従来よりも 進路決定に不安を感じる研修医もいるようである。しかし、選択の自由がある ことには大半が賛成であり、今後は研修を受ける側と提供する側での情報共有 や魅力的なカリキュラム作成が課題である。

V 医学部教育
 近年はCBTやOSCEの導入など、医学部教育についても大きな変革があった。 習得するべき知識や技術の増大に対応するためには、今後医学部教育をより充 実させる必要がある。従来の医師国家試験のみでなく、CBTやOSCEといった学 習段階に応じた試験で習得の節目を明らかにすることは有効と考える。一方で、 基礎医学分野や学位取得など、進路として希望する医学生は少数であるが重要 な分野についても医学教育での位置づけを議論していく必要がある。

VI 臨床研修先の限定
 地方を中心として医師不足の問題は深刻さを増すばかりである。従来の医局 主導の人員配置のみでは、この問題は解決困難と考える。しかし医師の偏在を 解消する目的で、臨床研修先を限定することは臨床研修の本来の趣旨からは逸 脱する可能性が高い。加えて魅力的な研修プログラムを持つ研修病院が、今後 より魅力的な研修を作っていく熱意を抑制する結果にもなりかねない。現状で は医学生、初期研修医の選択の自由と各研修病院の自助努力を残した形での地 域の医師不足対策を検討していく必要がある。

VII 部会のあり方
 当部会は全国の大学病院、研修病院より集められた研修医および後期研修医 より構成されている。現役医師の中ではより医学部教育、臨床研修に近い立場 の委員で議論され、今後も当部会から提言していくことは重要と考える。一方、 実際の現場は当部会を通じて議論したよりも、さらに多様である。そのため、 今後はさらに様々な立場から意見を集約し、提言していけるよう当部会を意見 交換の場としてより一層充実させていただきたい。

平成23年3月28日

  伊藤 洪志  東京勤労者医療会東葛病院
  宇井 睦人  東京都立多摩総合医療センター
  大柿 玲奈  東京歯科大学市川総合病院
  柏木 秀行  麻生飯塚病院
  河南 真吾  徳島大学病院
  齋藤 平佐  岩手県立中央病院
  下園 由泰  聖路加国際病院
  立石 文子  聖マリアンナ医科大学
  永田 翔   聖隷浜松病院
  藤田 一喬  筑波大学附属病院
  峰 宗太郎  国立国際医療研究センター
         (平成22年9月28日から)
  渡部 明人  国立国際医療研究センター
         (平成22年9月27日まで)

◆問い合わせ先:日本医師会企画課 TEL:03-3946-2121(代)



  日本医師会ホームページ
http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association.
All rights reserved.