白クマ
日医白クマ通信 No.1435
2011年6月17日(金)


定例記者会見
「社会保障改革に関する集中検討会議」に提出された社会保障改革案に対する日医の見解
―中川俊男副会長・鈴木邦彦常任理事

定例記者会見


 中川俊男副会長と鈴木邦彦常任理事は6月15日の定例記者会見で、社会保障改革に関する集中検討会議(6月2日開催)に提出された「社会保障改革案」に対する日医の見解を明らかにした。

 中川副会長は改革案について、社会保障の強化に向け、医療、介護に相当の資源(費用、マンパワー)を投入する方向性を打ち出している点を評価する一方、財源確保として受診時定額負担や高齢者(70〜74歳)の患者一部負担割合の引き上げなど、患者の経済的負担を求めていることを問題視し、「財源は患者(利用者)負担に求めるのではなく、保険料や税財源に求めるべきである」と強調。また、政府案がさらなる急性期医療の強化を通じた平均在院日数の短縮化を打ち出していることについて、「患者負担および医療の安心・安全面から、平均在院日数の短縮化はもはや限界である」とした。

 受診時定額負担については、受診回数の多い高齢者の負担になり、当初は定額100円であっても、いったん導入されれば、その水準が引き上げられていくことは明らかだとして、高齢者や低所得者の受診抑制につながる可能性を示唆し、導入に反対した。

 財源については、保険料の見直しや様々な税制改革によって確保し、消費税率を見直す場合にはあらかじめ控除対象外消費税を解決することを要望。保険料の見直しは、被用者保険の保険料率を、最も保険料率の高い協会けんぽの水準に引き上げることや、国民健康保険の賦課限度額、被用者保険の標準報酬月額の上限を引き上げることを提言した。

 また、政府案(パターン1)における医療・介護のマンパワー必要量(2025年に704〜739万人)に無理があるとして、将来の就業可能人口から見た実現可能性のあるマンパワーに設定し直す必要を指摘し、社会全体での雇用対策も求められるとした。

定例記者会見  続いて、鈴木常任理事が医療・介護の提供体制について、政府案の将来像の例で設定されている提供体制の圏域(都道府県、市町村、小・中学校区レベル等)は都市中心のモデルであるとして、地方においては、複数の小規模市町村を含む5万人程度までの圏域で提供体制を整備するなど、柔軟な仕組みとすることが必要であると提案した。

 そのうえで、「日本の場合は、入院や入所のコストが安いので、他の先進国のように在宅が安いとは限らない。中小病院や有床診療所の機能を在宅支援に振り向けることによって、日本型の在宅支援モデルが確立できるのではないか」と述べ、急性期と在宅だけでなく、亜急性期医療や慢性期医療なども充実させる必要があるとした。

 このほか、中川副会長が政府案の「医師については、他の職種との役割分担により、20%業務量が減ることを見込んだ」との文言を取り上げ、「タスクシフティング(医行為の一部を他の職種へ委譲すること)を狙ったものではないかと推察されるが、タスクシフティングは緊急事態における場所と時間を限定した特例としてのみ適用されるべきである。そうでなければ、医療の質が低下し、国民の健康が損なわれる恐れがある」と述べ、現行の保健師助産師看護師法の下で、知識集約的な業務を含まない技術に限った分担を検討し、チーム医療を強化していくべきであるとの見解を示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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