白クマ
日医白クマ通信 No.1501
2012年2月9日(木)


定例記者会見
「労災・自賠責委員会答申について」
―藤川謙二常任理事

定例記者会見


 藤川謙二常任理事は、労災・自賠責委員会が2年間の審議を経て取りまとめた答申を2月8日の定例記者会見で報告した。本答申は、原中勝征会長からの諮問「地域医療再生における労災保険、自賠責保険の役割」を受けて、2月2日に嘉数研二委員長(宮城県医師会副会長)から原中会長に提出したものである。

 答申は「労災保険」と「自賠責保険」の記述に分かれ、労災保険に関しては、(1)労災診療費、(2)労災・自賠責保険に係る研修、広報活動の重要性、(3)労災かくし、(4)労災医療の長期化、症状固定と治癒の問題、(5)天災地変による災害における労災保険の取扱い等―についてまとめている。

 (1)では、健康保険の点数に準拠している労災保険の治療費について、労災独自の診療報酬体系を作るのは困難だとした上で、「労災診療に馴染まないような健保点数については労災独自の診療報酬(労災特掲)により対応していくことにより、実質的な労災独自の診療報酬としていくことが現実的な対応」であると強調。前期委員会で取りまとめた最重点要望項目を踏まえ、「次期労災診療費算定基準の改定に係る要望書」を会長に提出したことを記している。

 (2)〜(4)では、労災・自賠責保険に係る研修、広報活動の重要性や、労災かくしの問題、労災医療の長期化の問題を取り上げ、医療提供側としての考え、改善策等について提言。(5)では、平成23年3月の東日本大震災が日常の労働時間帯に発生したことから、被災県における労災保険の請求・認定状況を収載している。

 一方、自賠責保険に関しては、(1)交通事故診療における健保使用問題、(2)交通事故診療に係る健保使用問題に関する調査、(3)後遺症の認定基準、(4)医療類似行為に係る問題、(5)交通事故に係る周辺問題―についてまとめている。

 (1)では、交通事故診療における健保使用に係る問題点を整理。第三者行為を原因とする交通事故については、原則として自賠責保険を優先して適用することを明文化した行政通達の発出とその周知が必要であるとの方向性を示し、関係省庁、医療機関、国民・マスコミ、損保会社等、医療保険者への具体的な対応を提言している。

 (2)では、交通事故診療を担う医療機関を対象としたアンケート調査結果から、交通事故診療に係る健康保険の使用率は19.9%で、損害保険料率算出機構が公表している使用率(平成21年度で10.7%)の約2倍であることを指摘。(3)〜(5)では、後遺症の認定基準の問題や、健保と同様に交通事故でも大きな伸びを見せていると言われている医療類似行為(特に柔道整復師に係る療養費)の問題についても取り上げたほか、日本損害保険協会及び損害保険料率算出機構との意見交換会の内容も盛り込んでいる。

 同常任理事は、交通事故での健保使用の実態把握のためのアンケート調査における都道府県医師会の協力に謝意を示し、「この調査は、これまで一度も行われていないものであり、各都道府県医師会や会員にとって非常に貴重な資料になるのではないかと考えている」と述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会保険医療課 TEL:03-3946-2121(代)
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