白クマ
日医白クマ通信 No.1617
2012年11月30日(金)


第2回第XIII次生命倫理懇談会
「尊厳死と高齢者の終末期医療についてヒアリング」

生命倫理懇談会


 第2回生命倫理懇談会が11月14日、日医会館で開催された。

 羽生田俊副会長と藤川謙二常任理事のあいさつの後、尊厳死と高齢者の終末期医療をめぐって2名のヒアリングと質疑応答を行った。

 議事では、まず、岩尾總一郎委員(日本尊厳死協会理事長)が「尊厳死―リビングウィルの法制化について」と題して講演。同委員は、日本尊厳死協会について、延命措置の拒否を意思表示するリビングウィルの保管、支援と普及などを行っており、現在、約12万5,000人の会員がいることを紹介。9割以上の会員の遺族から、リビングウィルが最期の治療に生かされたとの回答を得ているとした。

 安楽死との違いについては、「積極的な方法で死期を早めるのが安楽死で、延命措置を拒否して自然の摂理に経過を任せる尊厳死とは概念が異なる」と説明。安楽死を法制化している国として、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグなどを、緩和医療や看取りなど終末期の在り方に関して法制化している国として、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツを挙げ、日本では後者と同じく終末期において、延命措置の不開始または中止を意思表示する権利を求めているとした。

 その上で、わが国における医師が関連した事件を例示し、医師や病院は人工呼吸器を外した際などに訴訟を起こされるリスクを負っており、たとえ不起訴となっても、マスコミ報道などにより担当医が社会的に働けなくなる状況に追い込まれることから、医師の免責も含めて、リビングウィルの法制化をすべきと強調。現在、国会請願により発足した「尊厳死法制化を考える議員連盟」が、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の成立に向けた活動を行っていることを説明した。

 つづいて、大内尉義日本老年医学会理事長が「高齢者の終末期医療」と題して講演。

 同氏は、高齢者ケアの現場において、飲食出来なくなった時の「人工的水分・栄養補給法」(AHN)導入の適否が大きな問題となっていることから、医療関係者に福祉関係者、哲学者、法学者、宗教学者などさまざまな立場の人を交えて「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン:人工的水分・栄養補給の導入を中心として」を取りまとめたことを紹介した。

 本ガイドラインは、高齢者ケアにおいてAHNの適切な意思決定プロセスをたどることが出来るようガイドすることを目的にしたもので、意思確認が出来る場合と出来ない場合の合意形成の方法の他、患者の人生にとっての益と害という観点から、家族の事情や生活環境にも配慮しつつ、AHNの導入あるいは導入しないことを判断すべきなどの留意点を記している。

 また、「『高齢者の終末期の医療およびケア』に関する日本老年医学会の『立場表明』2012」では、“最善の医療およびケア”とは、必ずしも最新・高度の医療やケアを注ぎ込むことを意味するのではなく、高齢者の特性に配慮した、過小でも過剰でもない適切な医療、残された期間の生活の質を大切にする医療およびケアであると定義していることを紹介。本来、一時的な栄養法として回復し得る患者に適応するべき胃ろうが、日本では認知症患者の終末期など高齢者を中心に行われていることを指摘し、「人生の良い終わり方」を支える医療について、国民のコンセンサスを得ていくことが重要だとした。

 質疑応答では、医療現場では本人に意思を確認しにくいことや、遠くの家族や親族から異議を申し立てられるケースがあることから、リビングウィルの法制化に期待を寄せる発言も見られる一方、リビングウィルを持っている人であっても、実際に死期が近付くと延命治療を望むようになることがあるため、活用する難しさも指摘された。このほか、食事が摂れなくなれば神に召される時であると考え、積極的な医療介入を控える欧米とは違い、日本では医療の中止は餓死させることであるとの感覚があり、家族や医療従事者の心理的負担を軽減するために経管栄養や輸液が行われているなど、宗教観の違いについても話し合われた。

◆問い合わせ先:日本医師会企画課 TEL:03-3946-2121(代)


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