白クマ
日医白クマ通信 No.1679
2013年8月6日(火)


第7回医療政策会議
「社会保障制度の歴史と意義について講演」

第7回医療政策会議


 第7回医療政策会議が7月24日、日医会館で開催された。

 冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、先の参議院選挙における協力に謝意を示した上で、「8月21日に社会保障制度改革国民会議の答申が閣議決定されるということだが、消費税、TPP交渉、規制改革の問題もあり、大きな変化の秋になる。更に体制を引き締めて対応しなければならない」と述べた。

 当日は、田中滋議長(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)より、「社会保障制度の歴史と意義」と題する講演、及び質疑応答が行われた。

 同議長は、まず、社会保障制度のルーツについて、「社会主義への道」「社会的弱者への奉仕や憐憫」「社会的弱者保護、所得再分配」など誤った理解が多くみられると指摘。その典型例として、2010年に行われたオバマ大統領の医療改革が、社会主義への道だという保守派の主張によって頓挫したケースを挙げ、日本においても、「わが国の医療は資本主義社会の中に残った最後の社会主義分野」「社会保障は貧しい人たちへの温かい心から出たもの」などの認識を持っている人がいるとした。

 その上で、社会保障は、結果的に所得再分配などの機能を果たすものの、「救貧」ではなく「防貧」の観点から社会安寧を維持する「社会防衛」の仕組みであるとし、発生のルーツとして、ドイツ資本主義と社会保障発展の歴史を概説。ドイツ帝国首相ビスマルクは、資本主義の発達により増大した労働者が力を持ち始めたことから、社会主義との結びつきにより革命の推進勢力となり得る新たな脅威と捉え、労働者を政治運動化させないよう、病気、労災、老齢によるリスクから守るため、社会保障制度を構築していったとした。田中議長は、「ビスマルクには弱者への慈悲心があったわけでもなく、社会主義は大嫌いだった。むしろ、社会主義化を防ぎ、ドイツ資本主義を発達させて他の強国と伍するために、社会保障制度が必要だと考えた」との考察を述べ、社会保障の機能の対象は労働者層だが、真の受益者は社会不安によって被り得る損失を予防される人、つまり政府や相対的富裕層であるとした。

 一方、現代においては、生活保障の2大要素は「食の確保:就業保障」と「リスク時の補償:社会保障」であるとして、北欧、米国、日本について、国の成り立ちに基づく生活保障のあり方を説明。日本では、戦後、大企業や公的セクターを中心とした長期雇用や組織内福祉のほか、公共事業と米価を用いた利益分配によって社会の安寧が保たれていたが、バブル経済後、構造改革の名の下に財政縮小、公的医療費抑制が行われ、市場経済原理主義を土台に連帯から自己責任へ舵が切られて格差が拡大したと述べた。

 田中議長は、これらを踏まえて、社会保障と親和性が低い思想として、「福祉原理主義」「家族原理主義」「市場原理主義」を列挙。社会保障制度は平時の国防・防貧であることを強調するとともに、環境変化による課題として、(1)高齢者比率の増加、(2)勤労所得の低下、(3)保険料格差の拡大―を掲げた。

 質疑応答では、高齢社会における医療提供の姿として、病床のあり方をめぐり活発な意見交換が行われ、介護や住まいの問題も含めて提言していく必要があるとされた。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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