白クマ
日医白クマ通信 No.1774
2014年4月18日(金)


定例記者会見
「一般紙の記事に対して強く抗議」
―鈴木常任理事

定例記者会見


 鈴木邦彦常任理事は4月16日の定例記者会見で、4月15日付日経新聞における、健康保険料率の増加により「企業の競争力強化を通じた経済再生にも悪影響が出かねない」とする記事に対して、「日本の社会保障制度に対する誤解を招く表現が見受けられる」として、以下の反論を展開した。

 (1)まず、健保組合の減少について、記事では、1992年度及び2002年度から10年間の健保組合数の推移のグラフより「健保組合数は減少が続く」としているが、被保険者数の推移を見ると、2011年度は1992年度よりも増えており、単純に減少しているとは言えないことを指摘した。

 (2) 後期高齢者支援金の総報酬割については、記事中で「15年度から加入者の所得が高い企業の健保ほど、負担を重くする法改正を検討する。この仕組みを導入すると、保険料率は10%近くになる見込みだ」とされていることに対し、後期高齢者支援金の総報酬割を拡大すると、4割弱の健保組合では現在よりも負担が減少すると試算されており、必ずしも全ての健保組合で負担増となるわけではないことを強調した。

 (3) 日本の所得再分配の推移に関して、社会保障や税による再分配の結果、2011年のジニ係数が0.38になっていることに触れ、このようなジニ係数の縮小、すなわち所得格差の縮小に大きな貢献をしているのが税よりも社会保障によるものであるとした。

 (4) 外資系企業による対日投資の阻害要因について、記事では、「日本貿易振興機構が外資系企業に実施したアンケートによると、日本での投資を阻害する要因として『社会保障費の負担』を挙げた企業は37%で、『法人税負担』(32%)を上回った」としていることに対し、アンケートの結果では、「社会保障費の負担」よりも、「税負担」「グローバル人材確保の難しさ」「人件費」「賃貸コスト」の方が上位であり、社会保障費の負担のみを投資の阻害要因とするのは恣意的であると切り捨てた。

 (5) 社会保障財源の事業主負担に関しては、日本は対GDP比が5.7%であり、国際的に比較しても、主要国の中でも低いことを強調。対外投資の阻害要因はさまざまであり、社会保険料の事業主負担のみを俎上に上げて議論するのは誤りであるとした。

 (6)保険料率に関しては、記事で、健保組合の平均保険料率が今年度に過去最高の8.8%となると報じられているが、組合健保よりも加入者数の多い協会けんぽは既に10%となっており、被用者保険全体で見れば、組合健保の保険料率が突出して高いとは言えないと述べた。

 (7) 国民負担率については、国際比較では、日本はアメリカを除く主要国に比べ国民負担率が低いことを挙げ、国民に対し、あるべき社会保障の姿を示すとともに、負担の現状への理解を得て、今後の負担のあり方を議論していかなければならないとの考えを強調した。

 最後に同常任理事は、「社会保障と経済は相互作用の関係にある。老後が不安であるという思いを持つ多くの国民に、安心を示すことは、経済成長を取り戻すための出発点である」と述べ、改めて、昨日の記事が極めて恣意的なデータに基づく一方的なものであるとの懸念を示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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