白クマ
日医白クマ通信 No.1822
2014年10月31日(金)


定例記者会見
東京圏国家戦略特区における医学部新設に改めて反対を表明―横倉会長

定例記者会見


 東京圏国家戦略特別区域会議(10月1日開催)に示された「東京圏の区域計画の素案」に、千葉県成田市に国際的な医療人材の育成のための医学部を新設することが検討課題として挙げられていたことに関して、横倉義武会長は、特区における医学部新設問題に対する日医の見解を改めて示した。

 同会長は、まず、「医師不足の問題は、絶対数ではなく、偏在解消の問題であるとの姿勢に全く変わりはない」との認識を示した上で、2008年に政府が医師養成数を増加させる方針に転換した結果、2015年度の入学定員は2007年度に比べて1509人増加し、その数は新設医学部の定員数を従来の100人とすると、約15大学分に相当すると説明。これにより、医師数の絶対数確保には一定の目途がつきつつあるとの考えを示した。

 その上で、医学部新設については、まずは、定員増により増加した医学生が、今後、急速に医療現場に出てくる状況や減少しつつある人口構成、養成費用等も含め、今後の医師の養成数についてしっかりと議論を行った上で、慎重に判断すべきであるとした。

 また、同会長は、昨年12月20日に印旛市郡医師会が医学部新設反対を表明したこと、本年4月17日には千葉県医師会が医学部新設に反対の声明を採択したことに触れ、地域医療の現場を支えている地元の医師会の意見にも耳を傾けるべきであり、医師の地域偏在、診療科偏在の解消への対応については、今後、各都道府県にできる地域医療協議会の中で、医師会と行政、大学、地域の住民が協議しながら、定めていくべきであると主張した。

 更に、横倉会長は、成田市と国際医療福祉大学が提案している「国際医療学園都市構想」についても言及。「海外からの留学生を含め、国際舞台で医療の担い手となる人材は、医学部の入学定員140人の内20人のみで、120人は地域医療の担い手として教育するとのことであるが、文部科学省も指摘しているように社会保障制度への影響が懸念される」とするとともに、「医学部の教員は多くが医師であり、教員を医療機関から募集するとなれば、その地域では医師不足の引き金になりかねない」と指摘。また、昨年12月に示された、東北地方における医学部設置認可に関する基本方針を基に選定された東北薬科大学に関して、10月22日に開催された教育運営協議会では、教員の引き抜きが起こり得るのではないか等の厳しい意見が、東北各県の担当者から出ている現状を説明するとともに、国家戦略特区で提言しているような医学部では、医学生が最低限履修すべき教育内容である「医学教育モデル・コア・カリキュラム−教育内容ガイドライン−」を満たすことができるのか疑問であるとした。

 また、当日の会見に同席した田畑陽一郎千葉県医師会長は、今回の東京圏国家戦略特別区域会議において、再び成田市の医学部新設が触れられたことについて、「大変困惑している」との見解を表明。本件については、昨年9月に千葉県医師会と千葉県23地区医師会が一致して反対の声明を出し、現在もその認識は一致しているとした。

 その上で、千葉県は人口対比の医師数が全国45位、看護師数が同46位という水準で、地域医療は逼迫し、特に、成田市が属する地域では、増床認可が下りた病院でさえ、人手不足により増床できず、病院が破綻している状況の中で、印旛市郡医師会に属する病院や診療所が協力してようやく地域医療を維持している現状だとして、医学部の新設や附属病院の建設は不要であると明言した。

 印旛市郡医師会の遠山正博会長は、「印旛市郡医師会に所属する9つの市町では、医師不足が叫ばれているが、3つの基幹病院の院長が医師会の理事となっており密に連携することで、地域医療を支えている」とした上で、今回の医学部新設については、地域からの医師の引き抜きなしでは運営できるはずもなく、地域医療の崩壊に繋がるとして、反対の意を明確に示した。

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