白クマ
日医白クマ通信 No.1855
2015年2月17日(火)


定例記者会見
「平成27年度介護報酬改定について」
−横倉会長、鈴木常任理事

定例記者会見


 横倉義武会長は2月6日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、平成27年度介護報酬改定に係る諮問・答申がなされたことを受けて、鈴木邦彦常任理事と共に2月12日に記者会見を行い、日医の見解を明らかにした。

 同会長はまず、今回の改定率について、「その内訳は、消費税財源等で対応するものとして、介護職員の処遇改善加算拡充分でプラス1.65%、中重度の要介護者や認知症高齢者に対する良好なサービスを提供する事業所等への加算でプラス0.56%が確保されたが、収支状況などを反映した適正化分として、マイナス4.48%の引き下げとなり、全体でマイナス2.27%と、非常に厳しい改定であった」と述べた。

 その上で、同会長は、「介護の現場はいわゆる『3K』と言われ、介護従事者の確保は困難な状況にあるが、利用者から『感謝』されることで、『感激』『感動』がある新たな『3K』とも言え、やりがいのある魅力的な職種であるという機運が一般社会において醸成されることが必要である」と指摘。その実現のためにも、介護従事者の専門性の向上及びキャリアパスにつながるような賃金体系や労働環境・処遇改善が可能となるよう、介護分野の安定した経営基盤の確保のための報酬改定が必要だと主張してきたが、今回は介護職員処遇改善加算という、給与面の手当のみとなり、全体としてマイナス改定となったことは誠に遺憾であるとした。

 また、今後については、社会保障の充実を図っていくためにも、必要な財源を確保し、地域医療・介護現場が混乱することによって、国民が不利益を被ることのないよう、今後の施策に対する配慮を求めていくとの考えを示した。


定例記者会見  続いて、鈴木常任理事から改定内容の詳細について説明が行われた。

 まず、今回プラス1.65%の財源が確保された介護職員処遇改善加算については、単に給与の引き上げに留まらず、「サービスの質向上のための研修」や、「産休・育休や短期間勤務などワークライフバランスの改善に必要な人件費への対応」など、より広く活用できるような仕組みとすることが必要だとする一方、そもそも全体として大幅なマイナス改定となり、介護サービス施設・事業所の経営が厳しくなる中で、介護職員以外の従事者も含めた処遇改善が後退することに懸念を表明。介護業界全体が疲弊し、サービスの低下につながらないよう、引き続き国に対応を求めていくとした。

 中重度者対応や認知症対策等に対するプラス0.56%分については、適切な医療の裏付けのある介護が提供できる環境整備の構築に資するような配分を求めたいとするとともに、特に認知症対策については、平成25年から「オレンジプラン」として推進されてきた施策が、今般「新オレンジプラン」として改定され、『国家戦略』として取り組むことになったことにも触れ、2025年に向け、厚生労働省や関係省庁と連携し今まで以上に強力に推進していくとした。

 また、同常任理事は、介護保険制度そのものについて、営利企業の参入を認めていることから、今回のような大幅なマイナス改定の際に、利益優先の経営方針から、利用者を無視したサービスの撤退や不適切なサービス提供、質の低下等に繋がらないよう、公益性の視点を持った制度の運用がますます重要になると指摘した。

 今後は、介護報酬改定と合わせ、地域医療介護総合確保基金の介護分についても、年度末にかけて各都道府県へのヒアリング等が行われることを挙げ、「引き続き、それぞれの地域で、基金を活用した地域包括ケアシステムの構築に向けて、柔軟な対応をお願いしたい」と述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会介護保険課 TEL:03-3946-2121(代)


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