白クマ
日医白クマ通信 No.237
2005年10月2日(日)


第113回日本医師会臨時代議員会開催

第113回日本医師会臨時代議員会


 第113回日本医師会臨時代議員会が10月2日に日医会館大講堂で開催された。

 以下に、植松治雄会長による冒頭あいさつの要旨と、ブロック代表質問を掲載する。

 個人質問については、次回より配信する予定。

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◆植松会長あいさつ(要旨)◆

 昨年から本年にかけて、混合診療の全面解禁、構造改革特区における株式会社の医療への参入、医師免許の更新、中央社会保険医療協議会(中医協)改革、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(骨太の方針)への対応など、種々の問題があった。この間に医療の質の向上を導く努力をしてきたが、その基本にあるのは社会保障理念の確立と国民皆保険制度の堅持にあり、各都道府県医師会の多大な協力によりそれ相応の効果を得たと考えている。

 解散・総選挙が行われ、自由民主党の大勝となった。これにより、医療改革の進行が加速されるのは明らかである。少なくとも、経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議のいわゆる民間議員諸氏の発言が元に戻って厳しくなってきた。

 医療費抑制の論拠となるのは、厚生労働省が示す医療費の推計であるが、それによると医療費は2025年に69兆円に達するという。過去の厚労省の推計をみると、平成7年の予測では2025年には141兆円になるとされていたが、徐々に低くなり、本年は69兆円と発表された。この推計がどの程度の精度かご理解いただけると思う。日医としては、理論的に各種データを検証しながら今後の対応を考えたい。なお、日医は糖尿病対策の行動を展開しており、中期的にみても医療費の削減に大きく効果が表れると思っている。

 国民の負担増が起こり、皆保険制度が危ういような道に進むようであるならば、混合診療解禁を阻止したように、国民と共に皆保険制度と医療の質を守る運動を展開する必要があるかも知れない。また、アスベストによる健康被害も重大な問題だが、アスベストに限定せず、各種の状況を見ながら検討しなければならない。

 勤務医の過重労働の問題を考えると、医療提供体制の根本的あり方に立ち返る。病院は入院医療を中心に行うべきであると思うので、原点に戻った議論をしていただきたい。そして、診療報酬改定にはこの議論を踏まえて臨まなければならない。医療改革の一部に医療計画見直しも準備されているが、これも会員の意見を反映できるようにしたい。

 ※詳細は、日医ニュース10月20日号(日医ホームページにも掲載予定)をご覧ください。

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◆ブロック代表質問◆

■代表質問1
「新しい高齢者医療保険制度ならびに次期診療報酬改定について」
(東京ブロック)

植松治雄会長

 植松治雄会長が回答。

 高齢者医療保険制度についての案は各種出されているが、高齢者の保険料負担のあり方について定量的水準を示しているのは日医のみである。国民的共助は、若年被保険者負担、他保険者との財政調整などが考えられるが、公費負担のあり方の再検討を含め、コンセンサスを得られる負担割合を検討すべきである。高齢者医療保険制度の発足と医師国保の将来像については、世帯主が被用者保険に加入している場合の擬制世帯主のような形式等を考えながら、すべての医療保険制度の改革の中で考えていかなければならないと思っている。

 診療報酬改定については、中医協も、医療経済実態調査などの結果を検討するなど、改訂率についての意見を表明することはあり得る。また、4年間抑制されたままの診療報酬では、医療の安全、質の確保をはじめ、国民の求める医療を提供できないことは明らかである。市場原理による医療費の抑制、患者負担増に対しては、従来以上に強力に反対していく。また、グランドデザイン的な「生涯を通じた医療と保健と福祉―推進ビジョン5ヵ年計画―」を近々配付したい。

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■代表質問2
「日医執行部の決意を問う」
(関東甲信越ブロック)

 植松会長が回答。

 今回の自民党圧勝を受けて、経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議の民間議員、財務省官僚などが声を大きくしている状況を打破するには、今までと違った手法で国民に訴えていかなければならない。

 立候補以来、この1〜2年が、医療改革の正念場であることを訴え、会長就任後は対応に努めてきた。対応姿勢、成果については、いろいろな評価があろうが、代議員・会員の理解、支援をいただき、来期引き続き会務を担当させていただければ、できる限りの努力をする覚悟である。

 執行部のあり方については、各都道府県医師会や各ブロックの意見を尊重しながら強力なものをつくりたい。

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■代表質問3
「医療保険と介護保険の給付調整に係る現状の問題点」
(近畿ブロック)

櫻井秀也副会長

 櫻井秀也副会長が回答。

 基本的に日医は、介護保険のルールが優先され、適正な医療の提供が阻害される事態が生じていることに、きわめて大きな問題があると認識している。

 この問題を根本的に解決するためには、「医療保険制度」と「介護保険制度」の給付対象をはっきり区別するような「新しい制度設計」が必要であろう。

 これは、重要な問題であり、関連委員会などでの審議結果を踏まえ、日医としての主張をしていきたい。また、介護保険施設における、いわゆる「ホテルコスト」の徴収のような制度が医療保険対象の施設に及ぶことのないように、断固反対していきたい。

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■代表質問4
「少子化対策について―日医はキャンペーンを―」
(中部ブロック)

 宮崎秀樹副会長が回答。

 少子化対策は、わが国の重要課題の1つである。日医としても、「母体保護法指定医師の指定基準」モデル等に関する検討委員会で、看護師等の産科業務のあり方について検討している。さらに、厚生労働省の「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」でも、少子化時代に即した産科現場の状況を改善するよう要望するなど、小児救急、NICU等、母子保健医療の環境整備に努力している。

 また、これまでも、日医少子化対策委員会からの提言を受け、与党および政府に繰り返し予算請求した結果、児童手当の支給対象年齢の拡大、不妊治療への補助金等が実現してきている。

 今後の課題は、対策をいかに具体的に実行していくかであり、少子化対策についての宣言をすることも含め、政府への一層の働きかけなど、積極的に推進していきたい。キャンペーンについては、広報活動のなかで今後強化すべきと考えている。

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■代表質問5
「日医への評価と准看護師養成に対する日医の展望について」
(東北ブロック)

宮崎秀樹副会長

 宮崎副会長が回答。

 国民の日医への評価は何を基準とするか難しい。広報活動のあり方は、今後考える必要がある。一般国民に向けた医師会活動の広報を行う必要を実感し、マスコミとの勉強会等を定例的に行っている。

 准看護師養成については、従来どおり、制度存続の方針に変更はない。現在、日医医療関係者対策委員会の下にカリキュラム小委員会を設置し、時間数を単位制に改変し、各養成所が柔軟に時間割を組める案を作成、近く答申書をまとめ、厚生労働省と折衝する予定である。なお、日医としては、准看護師養成所の運営費補助金が減額されることのないよう努力してきたが、来年度予算でも概算要求されている。

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■代表質問6
「日医の政策決定(1.新しい高齢者医療保険制度の提言、2.混合診療の全面解禁阻止)について」
(北海道ブロック)

 寺岡暉副会長が回答。

 1:日医案の基本的で重要な点は、国民皆保険制度を堅持するなかで、高齢者医療保険制度が現金給付を基本とする介護保険制度とは統合し得ないという原則である。財源については、社会保障や高齢医療の場という「公共的空間」にあって、公共的理性と連帯感をもって取り組むという新たな保険倫理観を国民全体が共有する必要があり、日医案が自助・共助・公助にこれを求めるゆえんである。また、提案については、会内の医療保険チームでの慎重な検討を経て、常任理事会、理事会で承認後、会長連絡協議会でも報告している。

 2:制限回数を超える医療行為として選定療養に追加された7項目は、医療上ほとんど必要のないものをカテゴライズしたものである。医療上必要なものについては、保険導入されるべきである。

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■代表質問7
「次期医療制度改革における日医と都道府県医師会のあり方について」
(九州ブロック)

寺岡暉副会長

 寺岡副会長が回答。

 18年度医療制度改革の重点項目の1つは、医療費の抑制・削減策にあることは明瞭である。公的医療給付の縮小までして「小さな政府」の砦に逃げ込むのは、国の責任放棄であるといわざるを得ない。

 日医としては、引き続き、医療提供体制が規制的・抑制的偏向に向かわないよう監視しつつ、安心・安全な医療提供のためには、むしろ医療費の拡大が必要であり、いわんや公的給付の守備範囲の縮小は絶対あってはならないことを、社会保障審議会医療部会・医療保険部会、中医協等、あらゆる協議の場で主張していきたい。

 保険者協議会への対応では、国から地方への権限委譲のなかで都道府県医師会の役割が一層大切になってくるので、地域住民への地域医療提供を医療側から守るために積極的に参加してほしい。日医としては、地区医師会との情報共有を図り、国民、行政、マスメディアとの共通空間を広げながら相呼応して主張し、行動していく所存であり、一層の協力をお願いする。

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■代表質問8
「医療改革は医師会の手で」
(中国四国ブロック)

 櫻井副会長が回答。

 日医は、日医が考える「医療改革」について、堂々と言及していきたい。特に、「医療の質と安全確保のために医療費の拡大が必要」という主張を今後も続けていきたい。われわれが将来について予測しなければならないのは、「医療費がどのくらいになるか」ではなくて、「どのような医療を国民に提供すべきか」ではないか。

 現在、日医総研を中心に、「生涯を通じた医療と保健と福祉―推進ビジョン5ヵ年計画―」を作成中であるが、われわれの描くべきグランドデザインは、「医療費の推計」を中心としたものではなく、われわれが目指す「医療と保健と福祉」の「あるべき姿」であると考える。


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