白クマ
日医白クマ通信 No.239
2005年10月4日(日)


第113回日本医師会臨時代議員会開催

◆個人質問◆

■個人質問1
「女性医師の医師会活動への支援、厚生労働省の女性医師バンク」
(清水美津子代議員 東京都)

第113回日本医師会臨時代議員会

 伯井俊明常任理事が回答。

1.女性医師の医師会活動への参加について
 医師会の役員登用については、定款に基づいてすべて選挙によって選ばれているので、定款変更という問題でなく、男女共同参画社会に対する男性側の強い認識が必要と考える。
 また、先般、開催した「男女共同参画フォーラム」で、植松会長が来期の日医の会内委員会に女性を1名入れるとの方針を述べている。

2.女性医師の復帰支援の医師登録制度について
 女性医師バンクについては、平成18年度の厚生労働省の概算要求で事業経費、総額1億4千万円が盛り込まれ、日医に運営を委託するよう働きかけている。

3.医師不足の診療科の地域医療への影響について
 小児科、産科において、医師不足が深刻な状況がある。医療資源の集約化・重点化について、省庁連絡会議のもとにワーキンググループを設置して討議している。

4.開業希望者の増加が及ぼす地域医療への影響について
 退職した病院医師、厳しい勤務に耐えられない病院医師が開業するというケースが増えている。開業のリサーチにあたって、医療コンサルタント会社を利用するかは、本人の判断による。自由開業制については、これまでどおり堅持する。

5.勤務医の過酷な労働環境の実態調査につて
 勤務医の過酷な労働環境は、わが国の低医療費政策がもたらしたもので、財源確保が最大のカギになる。
 診療所は外来、病院は入院という機能分担が確立すれば、さまざな問題は解決する。今後、各方面と十分相談し、検討を行っていく。

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■個人質問2
「女性医師の登用および代議員会の構成について」
(小笠原真澄代議員 秋田県)

伯井俊明常任理事

 伯井常任理事が回答。

 女性医師バンクについて、平成18年度の厚生労働省の概算要求で、事務経費として総額1億4千万円が盛り込まれており、日医に運営を委託するよう目下働きかけている。

1.代議員会の女性医師の登用について(数値目標を掲げるべきか)
 代議員会の構成について、女性医師の登用の数値目標を掲げるべきかどうかは、代議員はそもそも選挙で選ばれるものなので、定款の改正が必要であり、また、そのようなやり方が民主主義に反しないかの問題もあり、日医としては考えていない。
 ただ、医師会の組織強化の観点から、女性が参画しやすい体制を整備することは非常に重要な課題であると考えおり、積極的に取り組んでまいりたい。

2.日医役員の構成について
 役員の構成については、年齢の違い、男女の別、開業医か勤務医かということでなく、能力、意欲、あるいはできる環境にあるかなどを勘案して、判断すべき問題である。

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■個人質問3
「女性医師問題などについての取り組みについて」
(山内英通代議員 岐阜県)

 伯井常任理事が回答。

 女性バンクについて、平成18年度の厚生労働省の概算要求で、事務経費として総額1億4千万円が盛り込まれており、日医に運営を委託するよう目下働きかけている。

 予定されている事業概要は、東京と大阪の2か所の拠点を中心として、女性医師バンクを開設し、日医にメインバンクをおいて、再就業を希望する女性医師に対して職業斡旋を行うことである。

 具体的には、各医学会、各病院団体、各大学病院、日本女医会などの協力をえて、女性医師に関するデータベースシステムを構築し、採用を希望する医療機関に女性医師を紹介し、採用に至るまでフォローしていきたいと考えている。

 また、女性医師問題に対する各地域医師会の取り組み状況について、アンケート調査の必要性は認識している。女性会員問題懇談会で、アンケート項目を検討いただいている。本年中には、都道府県医師会を対象に調査を実施する予定なので、ご協力いただきたい。

 日医が女性医師に関わる諸問題に積極的に取り組むことが、若い医師に対しても医師会の重要性を認識してもらうことと考えている。

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■個人質問4
「医賠責および医療事故について」
(和田耕馬代議員 滋賀県)

藤村伸常任理事

 藤村伸常任理事が回答。

 「いわゆるリピーター医師」会員に対する経済的ペナルティーに関わる検討は、過去数次にわたり「日医医賠責保険制度検討委員会」において議論されてきた。

1.「いわゆるリピーター医師」は会員のなかで極めて少数であり、その懲罰金は、保険会社に支払う保険料原資としては経済効果が非常に小さい

2.医療事故における医師の責任には濃淡があり、賠償金額の多寡とは必ずしも相関しない

3.懲罰金の日医への納入は、会計上複雑なものがある

4.犯人を捜して懲罰を加えることは、萎縮診療、防衛診療につながり、事故再発防止には効果が期待できない

 日医としては、以上の観点から、あるいは制度設立の精神からしても、経済的なペナルティーは導入すべきでないと考える。

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■個人質問5
「医療法第13条および有床診療所入院基本料について」
(稲倉正孝代議員 宮崎県)

三上裕司常任理事

 三上裕司常任理事が回答。

1.医療法第13条の撤廃について
 社会保障審議会医療部会における議論のなかで、48時間の入院期間制限の撤廃については大半の委員に異存のないものと推察している。
 48時間規制の早期撤廃は、すべての有床診療所において実施すべきであり、また、地域ニーズに柔軟に応えられる身近な医療施設であることを堅持するために、基準病床数への算入や医師数などの施設基準は強化すべきではない。「有床診療所の類型化は、規正法である医療法でなく、診療報酬によって行うべきである」との方針を主張してきた。

2.有床診療所入院基本料の診療報酬の見直しについて
 診療報酬については、一律何点上げるということでなく、ドクターフィーやホスピタルフィーの適切な評価という観点から、人員配置等に対する評価を適切に行うことが医療安全上から見ても必要であるという方向で議論を進めていきたいと考える。

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■個人質問6
「介護保険施設の食費について」
(吉野俊昭代議員 愛媛県)

 野中博常任理事が回答。

 本年10月から介護保険施設等における居住費ならびに食費が保険外とされた。何らかの疾病や障害を抱えた人は、本来、「受難者」であり、医療や介護保険の恩恵を受けても決して「受益者」ではない。この受難者に対して居住費ならびに食費の負担を強いることは、社会保障制度本来の姿として、まったく不適切であると日医を代表して主張を続けてきた。現在でもこの主張はまったく変わらない。

 低所得者の各段階に対しての居住費ならびに食費については上限額が示されたが、所得段階4段階以上の利用者に対しての徴収金額には上限額が設定されておらず、その利用者負担額は指針に沿ってあくまでも施設と利用者との契約によるとされている。このことに関する適切な理解が、すべての施設においてなされるように、必要な説明の実施、さらには、現場の状況を速やかに把握し、改善が必要な部分の再検討などを厚労省に強く求めているところである。

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■個人質問7
「健康診断の有効性について」
(山崎博代議員 埼玉県)

野中常任理事

 野中常任理事が回答。

 最近、健康診断について、特に胸部X線検査の意義について議論があるが、結核について、わが国はOECD加盟国中もっとも患者が多く、さらにアスベストの問題もあり、日医としては労働者の健康維持と健康な労働力確保のために、職域における胸部X線検査の重要性ならびに継続を主張する所存である。

 また、生活習慣病対策面から、健康診査項目についても検討されているが、健康診査が実施されるうえで重要なことの一つに、受診者が自らに適した「かかりつけ医」を見つけられることがある。「かかりつけ医」の健康管理や健康チェックによって、受診者は安心して日常生活を送ることができる。そのような意味からも、日医は健診の推進を主張してまいりたい。

 聴力検査については、その重要性は理解しているが、検査項目の裁量権が市町村にあり、ぜひ地区医師会から関係市町村に検査項目に入れるよう働きかけていただきたい。

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■個人質問8
「日本医師会の少子化・子育て支援対策について」
(池田琢哉代議員 鹿児島県)

田島常任理事

 田島知行常任理事が回答。

 日医では、子どもが心身ともに健康で育っていくための支援が重要であるとの認識のもと、平成13年に、出産前小児保健事業(プレネイタル・ビジット)モデル事業を全国46カ所で実施した。また、「児童虐待の早期発見と防止マニュアル」および「乳幼児健康支援一時預かり事業Q&A」などの作成、平成15年からは、子ども予防接種週間を実施して、接種率の向上に努めている。

 今年度は、禁煙推進活動の一環として、子どもの防煙対策のビデオおよび絵本の作成、糖尿病対策推進会議として、子どもの生活習慣改善のためのリーフレット作成等を予定している。

 今後とも、学校保健の充実、こころの問題等、子どもを生み、育てやすい環境整備などに対応していきたいと考える。

 9月28日に開催された乳幼児保健検討委員会においては、「子ども・子育て支援宣言(案)」についての検討がなされており、次回の代議員会に、宣言(案)を提出することも視野にいれたいと思う。

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■個人質問9
「地方の医師不足について」
(竹内守代議員 北海道)

 土屋隆常任理事が回答。

 日医は、厚労省の審議会などで、(1)自衛隊医官の地域への派遣、(2)臨床研修医の地域医療履修の研修プログラムの改善、(3)ドクターバンク事業の医師福祉対策に加え、地域医療確保を念頭に置いた推進・拡充、その他、女性医師のライフステージに応じた就労環境の整備等を提言してきた。

 医師になるまでには、当人の努力はいうまでもなく、多くの人の善意と支援、さらに多額の国費が投じられている社会資本としての1面がある。国家試験合格後は、一定の期間は地域医療等に従事することを責務としてもよいという意見さえあるほど現状は深刻である。

 もっか国ではワーキンググループを設置して、特に小児・産科の医師不足対策は、医療資源の集約化・重点化に焦点を当てて具体的に検討することが必要であるとしている。

 この課題については鋭意検討をつづけていくが、集約化・重点化は、既存の地域の医療資源を最大活用することにあるが、一方で、地域の医療連携体制を大きく変えることに繋がってしまう。すわなち、これは緊急避難的な措置で、医師の偏在・不足には、喫緊の対策と医療連携体制の構築などの中長期的な対策との両面からの検討が必要と考えている。

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■個人質問10
「今度こそ国民と一体となって社会保障について戦うとき」
(原中勝征代議員 茨城県)

 田島常任理事が回答。

 経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議の有力メンバーは、多国籍企業を代表する経済界の人々と市場経済原理を信奉する学者たちである。純然たる国内問題である社会保障の問題をこのような多国籍的な思考を基盤としている人々にゆだねることは問題が多いと考える。

 国民は今や国家と企業との関係を考え直さなくてはならない。

 執行部は、これに対処するため「国民医療推進協議会」を中心にして、国民の声を大きくまとめ、今後行われる医療制度改革にも国民の生命と意義ある人生を守るため、最大限の努力を行っていく。

 マスコミ対応については、勉強会などを行い効果をあげているが、さらに広報戦略会議のなかで戦略を練っている最中である。

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■個人質問11
「ORCAプロジェクトについて」
(宝住与一代議員 栃木県)

松原謙二常任理事

 松原謙二常任理事が回答。

 本稼働から2年ほど経過した2004年4月までに約500医療機関が導入。

 その1年半後の2005年9月現在、実質運用中が1407医療機関、導入作業中が313医療機関である。

 内容は、当初は未熟な部分もあったが、現在は市販のレセコンと遜色のないところまで改善している。今後は普及促進と広報活動に重点を置き、組織体制を(1)開発、(2)普及促進、(3)広報、(4)ネットワーク・セキュリティーの4チームに分割している。

 普及促進として「日医ITフェア」、「医療事務職への研修の強化」、認定サポート事業所を対象に「日レセ普及推進会議」を実施している。今後も会員の意見を十分に反映させ、優れたレセコンにするため努力してまいりたい。

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■個人質問12
「国民保護法と医師会活動について」
(石井正三代議員 福島県)

雪下國雄常任理事

 雪下國雄常任理事が回答。

 平成16年6月に国民保護法が成立している。

 これは武力攻撃事態などにおいて武力攻撃から国民の生命、身体および財産を保護するために必要な事項を定めたものである。

 それに伴い、緊急事態に対応する制度の確立として、国費を投入し、各都道府県医師会との情報連携ネットワークを構築すべしとのご主張は傾聴すべき提言と考えている。

 従来、日医もSARSや新型インフルエンザ、地震・風水害、細菌テロ、その他の大災害に対して、都道府県医師会・郡市区医師会・各医療機関の協力を得て、双方向的に情報交換し医療提供体制の整備に独力してきたが、今後も強固な情報ネットワークを構築し、広域的にも対応できるように努力を重ねたいと考えている。

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■個人質問13
「医師資格と日医生涯教育制度」
(横倉義武代議員 福岡県)

橋本信也常任理事

 橋本信也常任理事が回答。

 質問の論点をまとめると、次の4点に絞られると考える。

1.生涯教育に関する会員の努力をマスコミや国民が十分理解していない
 会員が生涯教育に励んでいることを、マスコミや国民に分からせることは極めて重要であり、ことあるごとに、日医の生涯教育の現況を伝えている。医師が「医療の質の向上」「患者安全確保」のために生涯教育に励んでいることを十分理解してもらうよう、今後も努力していきたいと思う。

2.医師免許更新について
 必要なことは、「臨床医」としての資質・資格の認定であり免許の更新ではない。日医の生涯教育をしっかりやれば、「安心してかかれる臨床医である」との保証が重要であると考える。

3.日医生涯教育の義務化について
 前期の生涯教育推進委員会の答申書でも、全会員を対象として義務化することが望ましいと提言している。生涯教育を義務化して100%の医師が研鑽に励んでいることを社会に示すことは、医師免許更新に値する意味を持つと考える。

4.日医生涯教育制度と学会認定専門医制との関係について
 日医の生涯教育制度をベースに、特に日医生涯教育カリキュラム「基本的医療課題」をすべての医師の基礎研修としたうえで、各学会の専門医資格を取得するよう、学会や日本専門医認定制機構と検討していくところである。

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■個人質問14 となって社会保障について戦うとき」
「医療費未納について」
(伯野中彦代議員 千葉県)

 松原常任理事が回答。

1.保険者に対して働きかけること(保険証の不正使用などについて)
 診療報酬の未納については、個々の問題によって対応が異なる。
 保険証の期限切れ、資格喪失、不正使用などについては、保険証の回収を徹底するよう日医は保険者、厚労省に絶えず主張している。
 このほど、2次元バーコードを保険証に貼付することを、厚労省の検討会で検討を開始している。

2.資格証明書の問題について
 資格証明書はほとんど国保の問題と思われる。
 証明書の発行は保険料が払えるのに払わない悪質滞納者に発行していると聞いている。悪質滞納者は療養費払いであるので、全額患者から徴収することになる。市町村が安易に発行しないよう、また、制度の見直しも要請したいと考えている。

3.救急保障制度について
 救急保障制度は各自治体で実施しているが、問題があることは承知している。適正なかたちになるよう検討していきたい。

4.未納金の負担について
 応召義務との関係があるので、公的手段による何らかの解決方法を検討したい。

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■個人質問15
「医師会活動の活性化に対する提言」
(森洋一代議員 京都府)

青木重孝常任理事

 青木重孝常任理事が回答。

 医学生に対する医療制度、地域医療、医師会活動等の講義は意義のあることと考える。9月30日に開催された「大学病院の医療に関する懇談会」でも本質問の趣意書を資料として話し合いを行った結果、医学部に現在ある講座のなかで、適切な時間を配分して講義を行うことで大筋の合意に達した。次年度には、できるだけ多くの医学部で実現するように努力したい。

 「日医のなかに医学生部会とも言うべき組織活動を」との提言に関しては、その主旨には会員のすべてが賛成であろうと思う。

 ただし、定款上の問題があるので、ただちに部会として何らかの活動を始めることは難しいと考えるしだいである。過去に医学会総会を授業の一環としてそのシンポジウム等への参加を呼びかけ成功裏に終わったこともあるので、このような例を参考に、先生のご主旨が実現できるように考えたいと思う。

 なお、9月30日に開催された「大学病院の医療に関する懇談会」では、国民医療推進協議会への理解と積極的な参加をお願いするとともに、全国大学医学部長病院長会議としてのアピール、特に日医を通じた統一的行動をお願いした。

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■個人質問16
「地域医師会の活性化について」
(武久一郎代議員 徳島県)

土屋常任理事

 土屋常任理事が回答。

 地域医師会の活性化は、地域医師会が組織として、事業・活動をいっそう活発化させることであり、その原動力となるのは、医師会組織を構成している個々の会員である。

 会員それぞれの意識改革を促し、地域住民の健康な生活を確保することは、われわれ医師としての責務であることを、あらためて認識する必要があると考える。

 医療を取り巻く環境が厳しくなっていく情勢下にあっては、全国的な地域医療の実態調査は必須である。各地域医師会の調査結果をまとめて紹介することは、他の地域医師会の新たな地域活動の試みにつながり、地域医療政策策定の基礎となる有用なデータを提供することになると考える。

 現在、日医総研を中心に「生涯を通じた医療と保健と福祉−推進ヴィジョン5か年計画−」を作成している。まだ素案の段階であるが、近日中に、これを日医の基本的ヴィジョンとしてお示しできる予定である。

 また、かねてから、日医総研においても全国レベルでの地域医療活動に関する情報収集の必要性が論じられてきたところでもあり、これを機に、研究のテーマのひとつとして取り組みたい。

*土屋隆常任理事の「隆」等の機種依存文字につきましては、近い字を使用しております。ご了承ください。


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