白クマ
日医白クマ通信 No.244
2005年10月14日(金)


医療政策会議「医療の質とその財源の確保について」

医療政策会議


 医療政策会議が、10月12日、日医会館で開催された。冒頭、植松会長は「医療費をめぐる話題が出ているが、日本医師会からも厚生労働大臣に要望を提出する予定になっている。医療関係者など医療にかかわる人の人数が増えているのに、医療費が削減されるのでは、日本の医療はもたない。医学の進歩の部分についても勘案することが必要だ」と話した。議事として、田中滋慶応大学教授が「医療の質とその財源の確保について―社会科学の視点から―」と題する講演を行った。

 田中教授は、医療の質にかかわる3つの層として、(1)医療技術と医療の質、(2)医療システムと医療の質、(3)住民・患者の安心感につい て述べた。

 「インフォームド・コンセントなどの概念が広まって、患者への説明などに使う医師の労働時間は増えているのに、財源は確保されていない。優秀な医師であっても過重労働すれば、医療事故の危険性は高まるのは当然のことだ。医療費抑制の悪影響が出てきてしまっている。また、急性期の医療は疲弊しており、小児科、麻酔科、産科は地域によっては激減している。残された医師が過重労働となって、また辞めてしまうという悪循環に陥っている」と、医療費抑制策が深刻な悪影響をもたらしていると説明した。 医療政策会議

 政府側などから話題に上っている、医療費の総額管理制度については、ヨーロッパでは失敗しているとして、否定的な意見を述べた。

 また、公的保険から簡単な病気を外すという声が政府側から上がっていることについて、「簡単な病気が公的保険から外されると、多くの国民は公的保険に入る意味はないと考え、国民皆保険制度に深刻な悪影響を与える」と説明した。議論に上っている“小さな政府”という方向性についても、より弱い人により多くの負担がいくということになり、医療の質を落とすことになるだろうと話した。

 この後、本会議の報告書のとりまとめについて話し合われた。


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