白クマ
日医白クマ通信 No.525
2006年10月31日(火)


定例記者会見
「療養病床の再編に関する緊急調査」の結果を報告

定例記者会見


 日本医師会は10月25日の中央社会保険医療協議会・総会に、「療養病床の再編に関する緊急調査」の結果を報告した。それによると、比較的医療の必要性が低いとされる「医療区分1」該当者のうち、約4割は、介護保険サービスの基盤が整っていないために、退院後の行き場がない「介護難民」、約2割は医師の指示のもと看護師の業務独占である医学的管理・処置を必要としており、退院を迫られれば「医療難民」になる可能性が高いことが分かった。天本宏常任理事は総会終了後会見し、厚生労働省に対して、医療区分の見直しや、受入体制の早急な整備を要請していく考えを明らかにした。

 緊急調査は、今年7月現在で医療療養病床の届出がある、全国6,186医療機関(病院4,139、有床診療所2,047)を対象に実施。2,870医療機関(病院1,884、有床診療所986、有効回答率46.4%)から有効回答があった。

 回答医療機関の医療療養病床入院患者のうち、「医療区分1」は、2万9,392人で入院患者全体の42.1%を占めた。このうち30.9%は、「病状不安定で退院の見込みがない」と判断されていた。その理由では、「一定の医学的管理を要するため」(57.2%)と「処置が必要なため」(11.2%)が、約7割を占め、およそ医療区分1の患者の約2割が、医師の指示のもと看護師しかできない医学的管理・処置を必要としていることが明らかになった。

 医療区分1の患者に実際に行われている処置としては、「喀痰吸引」11.3%、「胃瘻の管理」10.5%、「経鼻経管栄養」8.8%などが挙げられた。胃瘻の管理と経鼻経管栄養が、同時に行われることはないため、ここからも患者の2割が医学的管理・処置を必要としていることが裏付けられたと指摘。医療従事者の配置が薄い介護保険施設などでは、十分な対応ができないと考えられることから、これらの患者が退院を迫られれば、「医療難民」になると危惧している。

 一方、医療区分1の患者の63.4%は、病状が安定してきて退院可能であるものの、このうち、在宅での受入困難のため、現実には退院不可能が70.1%存在し、そのうち「独居や家族の仕事などで在宅での受入困難」が約7割弱であった。一方、「在宅受入困難を除く施設入所待ち」が19.7%で、総合すると、医療区分1の患者の約4割は、介護保険対応すべきであるにもかかわらず、退院後の受け入れ先がない、「介護難民」だと結論づけている。

 また、今回の医療療養病床における診療報酬の見直しで、1医療機関当たりの診療報酬請求点数の前年同月比が、おおむね10%以上のマイナスとなったこともわかった。

 天本常任理事は会見で、医師の指示のもと看護師の業務独占である医学的管理や処置を必要としている約2割の患者(医療難民)を「医療区分2」の対象とするよう、見直しを求めていく意向を表明。「医療の必要性が低いと想定されている医療区分1の患者のなかにも、検証の結果、実際は胃瘻など、処置が必要な人たちがおり、それを医療区分2から外したこと自体、間違っている」と述べた。

 約4割の患者が「介護難民」化していることについては、「介護保険料を払っているのに介護保険サービスを受けられないという不公平・不平等が起こっている。介護と医療の明確化を目指した改定であったはずなのに、本来介護保険サービスの対象者の方々を医療で診ているのは、どういうことなのか」と問題視し、第4次介護保険事業計画の前倒し実施など、受入体制の早急な整備を求めていく考えを示した。

 受入体制が整うまでの間は、緊急措置として、医療療養病床を「介護受入待機病床」と位置づけて、介護保険給付の対象にすることも提案した。

 なお、会見には、鈴木満・中川俊男両常任理事も同席した。

◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)

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