白クマ
日医白クマ通信 No.636
2007年4月20日(金)


定例記者会見
「療養病床の再編に関する問題点について」

中川俊男常任理事


 厚生労働省が2012年度の医療療養病床の目標数を15万床とする考えを打ち出したことを受け、中川俊男常任理事は18日会見し、「(医療費抑制のためという)財政主導で決められた根拠のない数字だ」と批判した。今回、厚労省が合わせて示した計算式を踏まえて、都道府県ごとの医療療養病床目標数が設定されていくことになるが、中川常任理事は「都道府県がこれから把握できるのは、医療難民、介護難民が出た後の姿だ」と指摘。療養病床再編以前の姿を考慮する必要があるとして、昨年、日本医師会などが実施した緊急調査結果を療養病床数の計算式に反映させることを提案した。

 2008年4月に施行される「高齢者の医療の確保に関する法律」では、いわゆるメタボリックシンドロームを対象にした特定保健指導の実施、平均在院日数の短縮、療養病床の再編などについての数値目標を盛り込んだ、医療費適正化計画を全国、都道府県それぞれで策定することになっている。

 厚労省は4月12日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会で全国医療費適正化計画の案を公表。このなかで、都道府県医療費適正化計画における医療療養病床目標数は、2006年10月時点で医療療養病床、介護療養病床に入院していた患者のうち、「医療区分2」に該当する者の7割と「医療区分3」に該当する者とし、「医療区分1」と「医療区分2」の3割は在宅や老人保健施設への移行分として対象外とする計算式を示した。この式をベースに第1次計画の終了年度である2012年度の医療療養病床数を機械的に計算すると、約15万床になるという(いずれの場合も、回復期リハビリテーション病床は除く)。

 これに対して中川常任理事は、今後の高齢者人口の増加に伴って、医療療養病床数の必要性は高まる一方だと反論。2012年度には2005年度時点の25万床を上回る26万床が必要になるとの推計を示した。

 さらに厚労省計算式が、2006年10月時点の医療区分別患者数をベースにしている点を問題視。7月の診療報酬大幅引き下げによって、医療が必要であるにもかかわらず在宅復帰を余儀なくされた医療難民の数が考慮されないことになるとして、計算式の見直しを求めた。具体策としては、患者の移動が始まる以前に実施した日医の緊急調査で、医療区分1の21.1%は医学的管理・処置が必要との結果が出ていることから、この分を医療療養病床目標数の中に織り込むことを提案した。また「医療区分2」については、医療療養病床、介護療養病床とも該当者すべてを医療療養病床目標数に含める。

(日医の計算式:「医療療養病床の現状の数」−「医療療養病床から介護保険施設などに転換または削減する見込み数(医療区分1)×(100−21.1%)」+「介護療養病床から医療療養病床へ転換する見込み数(医療区分2)+(医療区分3)」×「調査時点(2006年)と計画スタート時点の間の後期高齢者の増加数による補正」)

(厚労省の計算式:「医療療養病床数」−「医療療養病床の医療区分1と医療区分2の3割」+「介護療養病床の医療区分2の7割と医療区分3」=15万床)

◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)

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