白クマ
日医白クマ通信 No.755
2007年10月23日(火)


中央社会保険医療協議会
「医療安全・救急医療・心の問題の評価検討」

中央社会保険医療協議会


 中医協診療報酬基本問題小委員会が、10月19日、都内で開催された。

 当日は、(1)医療安全対策、(2)救急医療(救急医療用ヘリコプター、脳卒中発症早期の対応)、(3)心の問題への対応(自殺対策、子どもの心)―について、議論が行われた。

 医療安全対策では、平成18年の医療法および薬事法改正により、すべての医療機関および薬局で、医療安全対策が義務付けられた。これを受けて、安全確保推進のため、臨床工学技師の配置、薬剤師の病棟での患者指導、集中治療室やハイケアユニットでの、薬剤の管理・使用の充実についての評価が論点として示された。

 中川俊男委員(日医常任理事・竹嶋康弘委員の代理出席)は、コスト調査分科会の調査結果である病院の入院患者1人1日当たりのコスト406円に対して、医療安全対策加算(入院初日のみ50点(500円))は、医療安全の費用としては低すぎると訴え、引き上げを求めた。

 救急医療における、救急医療用ヘリコプターに関しては、平成19年6月に施行された「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」の附則において、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の提供に要する費用のうち診療に要する費用について、3年を目途に検討を行うとしているが、現在、厚生労働省の「救急医療用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討会」にて検討していることから、現時点では中医協で議論すべき段階ではなく、検討会での審議結果を踏まえて議論することになった。

 脳卒中発症早期の対応では、脳卒中の死因の60%を占める脳梗塞について、血栓溶解剤t-PA(アルテプラーゼ)の早期投与が治療に有効とされている。しかし、発症後3時間以内という投与制限がある薬剤を使用するためには、高い病院機能が不可欠であり、体制作りについての評価が論点として示された。

 中川委員は、評価すべき点は「確定診断までスピーディーに対応できる」点であり、施設基準ではない。施設基準を厳しく設定すると、かえってt-PA投与の視野を狭めることになることを強調した。

 心の問題への対応については、中医協で初めて自殺対策が取り扱われた。平成19年6月に決定された「自殺総合対策大綱」によって、うつ状態の早期発見・早期治療に対する取組みが重要視され、内科等を受診した、うつ病等の精神障害が疑われる患者を、精神科医に紹介すること、また、自殺企図患者等への、救命救急センター等が行う精神と身体症状の両方の面からの総合的な診断治療に対する評価について検討することが論点として示された。

 子どもの心では、子どもの精神障害について、成人とは疾患傾向が異なること、診療時間が比較的長いこと、施設要件等の制限により、「児童・思春期精神科入院医療管理加算」の届出状況が少ない状況が挙げられた。診療時間に応じた診療報酬上の評価、一年とされている治療の算定期間上限の延長、管理加算評価の在り方が論点として示された。

 鈴木満委員(日医常任理事)は、自殺総合対策大綱全体を受けて言うなら、診療報酬では評価されない産業医・産業保健、学校医・学校保健の役割も重要であり、国の重要課題として整合性をとって全体の仕組作りを進めるべきと主張した。

 他の委員からは、うつ病患者を紹介する評価に関しては、内科医等と精神科医の連携機能に対しての評価を重視するべきとの発言があり、評価方法について議論された。

 社会的にも注目されている課題であり、論点整理や資料追加を行い、今後も議論を深めて行くことになった。

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