白クマ
日医白クマ通信 No.798
2007年11月28日(水)


中央社会保険医療協議会(11月21日)
「DPC対象病院として「軽症の急性期入院医療」も含める基準案には強く反対、議論は再度」

 中医協は、薬価専門部会、診療報酬基本問題小委員会および総会が、11月21 日、厚生労働省で開催された。

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<薬価専門部会> 平成20年度薬価制度改革の骨子(たたき台)が示される

 薬価専門部会では、「平成20年度薬価制度改革の骨子(たたき台)」が示され、議論が行われた。

 同骨子では、本年4月の「革新的医薬品・医療機器創出のための5ヵ年戦略」を踏まえ、革新的新薬の適切な評価に重点を置き、特許の切れた医薬品については、後発品への置き換えが着実に進むような薬価制度としていくことを基本としている。具体的には、現行の薬価算定方式を基本に、これまでの同部会での審議内容を盛り込んだ内容となっており、1.新規収載医薬品の薬価算定、2.既収載医薬品の薬価改定、3.その他―からなる。

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<基本小委> 日医は、DPC対象病院として「軽症の急性期入院医療」も含める基準案には強く反対、議論は再度

 基本小委では、「歯科診療報酬」と「DPC」について、議論が行われた。

 当日は、DPC評価分科会から、「平成19年度『DPC導入の影響評価に関する調査結果および評価』中間報告概要」と「7月から12月までの退院患者に係る調査(7〜8月分中間報告)」の2つの調査が報告され、承認された。

 また、基本小委から付託された事項(1.適切な算定ルール等の構築、2.DPC対象病院のあり方、3.調整係数の廃止および新たな機能評価係数の設定)について検討した結果が「提案書」として提示され、西岡清同分科会長より説明があった。

 1.については、(1)同一疾患での再入院に係る取り扱いとして、a.3日以内の再入院は1入院として取り扱う b.4〜7日以内の再入院については調査・検討を継続する c.外来で実施できる治療を入院医療で行っている例については、実態の調査・検討をしていく―ことが、(2)診断群分類の決定方法として、a.DPCにおける診療報酬明細書の提出時に、包括評価部分に係る診療行為内容の分かる情報も加える b.院内で標準的な診断・治療方法の周知を徹底し、適切なコーディングにつながるような体制を確保する―ことが示された。

 2.では、今後の対象病院の拡大に当たり、(1)平成18年度の基準に関する考え方、(2)データの質に関する考え方、(3)DPC対象病院の基準案―について、複数の基準案が提示された。(2)では、データの提出期間は、通年調査となっていない現状では、季節変動などの不安定要素を除き、データの質・量を確保し、安定性を図る観点から、「2年間(10カ月分のデータ)」とすべきとされ、また、(データ/病床)比は8.75とすることが示された。

 (3)では、軽症の急性期入院医療も含めてDPCの対象とする<基準案1>と、ある程度以上の重症の急性期入院医療をDPCの対象とする<基準案2>の両論併記とされた。

 議論の結果、(2)のデータ提出期間が「2年間(10カ月分のデータ)」とされたため、698の平成19年度準備病院は、平成20年度には移行することができなくなった。

 議論のなかで、鈴木満委員(日医常任理事)は、平均在院日数が2日間短縮したとされていることについて、一方で、治癒率が低下し、再入院率が上昇していることを指摘、「“DPCによる効率化”というが、本当にエビデンスはあるのか」と質した。

 さらに、竹嶋康弘委員(日医副会長)は、平成15年度対象病院(特定機能病院)の例として、平成16年から19年にかけて、再入院率は16人に1人が13人に1人に、6週間以内の再入院率は26人に1人が21人に1人に増えている事実を紹介し、「不十分な状態のまま退院させているのではないか。そうであれば、患者にとって危険であるばかりか、医療費の増大も招きかねない」と指摘した。

 (3)については、<基準案1>を可とする意見が出されたが、鈴木委員は、重症を扱う病院と軽症を扱う病院では差がありすぎ、バラつきをなくすには重症を扱う医療機関を対象とする方が望ましいとして、「反対である」と明言。意見が分かれたため次回再度協議することになった。

 さらに、3.でも、「DPCに入れば経営が担保されるというのはおかしい」「急激に準備病院が増える理由は何か」などの意見が続出し、結論はペンディングとなった。

 また、鈴木委員はペナルティーの必要性や一度DPC対象となると抜けられない事実を確認し、これを受けて小委員長より、ルール作りについて事務局に整理して提案するよう指示された。

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<総会> 平成20年度診療報酬改定に対する診療・支払双方の意見が出そろう

 総会の議題は、「平成20年度診療報酬改定について」と「その他」であった。

 当日は、診療側・支払側双方から、平成20年度診療報酬改定に対する意見が、それぞれ提出された。

 支払側の意見は、「社会経済の実情や患者・国民の負担感を勘案すると、20年度は診療報酬を引き上げる環境にはない」としながらも、「外来医療や長期入院の効率化を図りつつ、勤務医の負担軽減と評価、急性期病院医療、産科・小児科・救急医療等の厳しい医療現場への対応に財源を重点的に配分すべき」としている。

 診療側は、長年にわたる医療費抑制策によって、地域医療提供体制は崩壊の危機に直面しているとし、「診療報酬の大幅な引き上げの実現を強く要望する」との意見書を提出した。医科診療報酬については、中川俊男委員(日医常任理事)が資料を基に説明し、診療報酬プラス5.7%の引き上げを要望した。

 議論のなかでは、人件費等のさらなる効率化を求める意見も出されたが、中川委員は、「医療は“労働集約型”であり、地域性等もあるため、人件費はある程度までしか削減できない」と説明。

 土田武史会長(早大商学部教授)からは、「病院医療が悪化していることは共通認識」との考えが示された。

 また、14日の総会で示された、平成18〜19年度集計による賃金・物価の動向でも、増加傾向(賃金は人事院勧告で0.7%増、物価は消費者物価指数で0.7%増)だったことを踏まえ、一部の支払側委員からは、「2年間の物価・賃金の動向をもとに反映すべきで、今回は物価・賃金ともにプラス傾向だ」という意見が、また、公益委員からも、「医療資源の再配分を積極的に行うことは重要だが、地方の病院医療の困難な現状や勤務医の疲弊といった状況で上げないとなると、どういう状況で上げるのか。今回は、常識的に言っても引き上げが妥当だと考える」という意見が出された。

 次回総会で公益側により意見書がまとめられ、厚生労働大臣に報告することとなっている。

 その他では、「健康保険受給権確認請求訴訟事件の概要」が示され、被告である国が、11月16日に控訴したことが報告された。

◆問い合わせ先:日本医師会保険医療課 TEL:03-3946-2121(代)


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