白クマ
日医白クマ通信 No.896
2008年4月2日(水)


第118回日本医師会定例代議員会「唐澤会長所信表明」
日本医師会会長就任にあたって
〜日本医師会へのご理解と国民医療を守るために団結を〜

唐澤会長


 本日は第118回日本医師会定例代議員会の二日目でございますが、昨日は長時間のご審議、誠にありがとうございました。会長選挙、常任理事選挙ほか新役員をご選出いただきました。会長選挙には、私のほか1名の方が立候補されました。その理念と目指す方向は、基本的には同様の思いかと存じます。ことに他候補のご提言は謙虚に受け止め、十分に心に留めまして、今後の会務運営に当たりたいと思います。

 このたび全国各地域のご支持により、第118回定例代議員会で日本医師会会長に選出されましたことをここにあらためて、ご報告申し上げ、併せて前期2年間在任中に賜りましたご支援とご指導に対しまして、衷心より厚く御礼申し上げます。

 私自身、日本医師会会長としてのこの2年間を振り返ってみますと、まさしく医療制度の未曾有の転換期のなかで、荒波を全身に受けながらの船出であったと感じております。5年間で国庫ベース1.1兆円という社会保障費の圧縮を打ち出した経済財政諮問会議、あるいは制度の十分な検証もないままに成立した医療制度改革関連法など、すでにレールに乗り出してしまったものを、なんとかブレーキをかけるべく、必死で戦い続けた2年間でありました。

 日本医師会の事業運営において、目下の医療を巡る厳しい状況に真正面から対峙し、山積する課題に対し、全国的にご推薦をいただいた経験豊かな役員の皆様とともに、意見の集約と総合力を余すところなく発揮すべく、誠心・誠意邁進する所存であります。

 あらためて、各位のご指導ご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げる次第であります。

 すでにご高承のとおり、近年の医療を巡る環境は一層厳しいものとなっております。

 まさに、到来する超高齢社会と産業経済などの社会の構造変化は、地域間の格差是正、科学技術の進歩と国民医療の今後の課題解決、専門医療の提供と勤務医の厳しい勤務環境などへの取り組みをはじめ、すべて社会保障制度全体の方向性に大きな影響を与えております。

 ことに最近の国会運営おいては、道路特別会計の一般財源化や、いわゆるガソリン税の暫定措置の期限切れなど、地方行財政に影響の大きい税の問題が、意見を二分する状況となっています。

 政府の医療制度改革などが、財政主導型から脱却できない現況において、今後の政府の政策の方向によっては、国民の負担増と提供される医療の質の低下を招き、地域医療体制は崩壊への道を辿ることも強く危惧されます。あるべき医療提供体制の財政的裏付けとも関連する税制の問題は、今後とも最大の注意を払う必要があると考えております。

 さて、日本医師会は、学術専門団体として、真に医の倫理を戴き、すべての会員は、日進月歩の医学・医療の研鑽に励み、国民医療に貢献することがその理念の中核であります。そのような基本的使命を第一義として果たしていくことは、国民の大きく期待しているところであります。そして、会員一人ひとりの生き甲斐は、いかに日々多忙といえども、医療が絶え間なく継続されることと、多面的な地域医療活動において精励することに大きな手応えと感銘を得ているところにあります。そのような医療活動の原点に基づき、求められる医療は、安全で良質なものでなければなりません。患者にとって心温まる医療、満足度の高い医療の提供に精励することが肝要です。さらに、国民医療の観点から普遍平等な提供体制の確立への努力が最重要であります。

 この目的のために揺るぎない大きな流れを打ち立てるには、すべての日本医師会会員の拠り所となる将来性のある医療政策と理念を掲げ、国民の求める医療を追求していくことが第一義であります。

 超高齢社会の到来によって、生涯を通じての健康と生活の質を確保し、豊かな長寿社会構築のために、保健事業と医療制度・介護制度と年金制度など、ことに社会保障制度における中核ともいうべき医療制度の安定・恒久的確立を急がねばなりません。医学・医療の進歩と高齢人口の増加、疾病構造の変容、現役就労世代の健康管理など、関連する要因の一つ一つが、まさにエビデンスに基づいた説得力のある医療政策としてまとめられることが必要であり、多方面の理解と協力を得ながら、その実現を図らなければなりません。

 このような観点に立てば、社会医学的・医療経済学的・疾病発生状況の疫学的分析など、地域医療の詳細な情報と、救急医療など疾病の迅速な治療をはじめ、すべての地域医療の現況を観察、検証、分析し、そしてその課題と将来像と対策を立案提言する洞察力、気概の涵養まで、日本医師会の中心課題は、このような取り組みを源流としなければならないと考えているところであります。

 このような評価の困難な課題を克服しなければならない現況で、日本医師会は、国民医療を確保するために、全国の会員各位の意見と、国民の希求する医療の将来像を視野に、地域医療の活力と支持を確立し、将来への医療体制の構築に不撓不屈の精神で最大限の努力を続ける必要があります。

 夏前には、政府の来年度予算編成に向け、経済財政諮問会議が「基本方針2008」をとりまとめることになるでしょう。この基本方針には、現在、内閣府の社会保障国民会議で議論が始まっている、財源を含めた社会保障のあり方の議論が強い影響を与えることが予想されます。

 昨年、日本医師会は、「グランドデザイン2007」の総論、各論をとりまとめ公表いたしました。

 そのサブタイトルにお示ししたとおり、われわれが目指すべくは、「国民が安心できる最善の医療」を再構築することにつきます。

 グランドデザインに示した内容を、国の政策に反映させることこそが、日本医師会が果たすべき役割であると認識しています。

 全国の診療所医師・勤務医・研修医・青年医師・女性医師など、ことに全国医師会勤務医部会連絡協議会による「埼玉宣言」「沖縄宣言」を尊重し、「在宅における医療・介護の提供体制−指針」「子ども支援日本医師会宣言」などの重要な事項を踏まえ、すべての会員各位の意見の集約を図り、医療の進むべき方向について、有効な政策を立案、提言していく努力が何より必要であります。日々の活動の中にこのような事項を積極的に取り上げ、取り組む所存であります。

 医療崩壊が叫ばれるなか、国民医療の確保、地域医療の再生に向け、新執行部一丸となって、全身全霊を打ち込んで会務を遂行していくことをお約束し、ご挨拶といたします。

 今後とも折りに触れご報告申し上げる機会をいただくとともに、何卒宜しくご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 ここにあらためまして、代議員・会員各位の今後の限りないご発展と、併せてご活躍、ご健勝を祈念申し上げる次第であります。

◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代)


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