白クマ
日医白クマ通信 No.926
2008年6月12日(木)


定例記者会見
「新医師臨床研修制度が医師不足顕在化の引き金に」
―中川常任理事

中川俊男常任理事


 中川俊男常任理事は、6月11日の定例記者会見で、「日本医師会新医師臨床研修制度(以下、新制度という)と医師偏在・医師不足に関する緊急アンケート調査」の結果を公表した。 以下はその内容である。

 もともと、日本は医師不足の状況にあったが、近年、顕在化し、大きな社会問題となっている。2004年4月、新制度の導入によって、大学医学部の医師供給システムが崩壊した。その結果、医師配置の偏在化を通じて、医師不足が顕在化したのではないかと考えられる。そこで、本調査では、新制度の導入によって、医師配置がどのように変化し、その結果、どこでどれぐらい深刻な医師不足という現象が起きているのかをデータで明らかにするために、アンケート調査を実施した。

 調査では、(1)大学医学部に対するアンケート、(2)医学部教室(医局)に対するアンケートを実施し、それぞれ82.3%、56.2%と高い有効回答率を得た。

 (1)の結果から、大学において、初期研修医の受入れ数は減少傾向、後期研修医の受入れ数は若干の増加傾向にあることがわかった。このことは、人材不足対応のために、即戦力となり得る後期研修医を確保する動きと考えられる。

 国家試験合格者数に対する初期研修医数の割合は、新制度の導入を受けて、大きく落ち込んだ。2004年以降も減少傾向となっている。

 (2)の結果では、有効回答1,024教室のうち、2004年4月以降、関連医療機関への医師派遣を中止・休止したことがある教室(医局)は、784(76.6%)にも及んだ。このうち、新制度の導入が主な原因であると回答した教室は、609教室(77.7%)であった。結局、新制度の導入を主因として、約60%の教室(医局)が医師派遣の中止・休止を実施したことになる。このことから、新制度が引き金となって、医師不足が顕在化したことが伺える。つまり、新制度の導入によって、大学において初期・後期研修医が減少し、大学医学部の医師派遣機能が弱体化した可能性が高い。また、医師派遣の中止・休止があった医療機関のうち、60%強の医療機関で、診療の制限(診療時間の短縮、外来のみにした、分娩中止など)、あるいは診療科自体の閉鎖が起きている。

 専門科別では、産婦人科で影響が一番大きかったが、これは新制度の影響だけではなく、産婦人科医の減少、訴訟リスクの問題もあると考えられる。

 地域別では、もともと一般病院従事医師数が手薄な地域で、派遣医師数が最も減少しており、地域間格差が広がっている。

 最後に、同常任理事は、全国一律に実施した今回の調査は初めての試みで、本調査への回答率の高さは危機感が反映されたものであると言えよう。医療関係者は、新制度が引きがねとなって、医師不足が顕在化している現実に目を向けるきっかけにして欲しい、と述べた。 

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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