専門医への道のり 外科系(前編)

専門医を取得した先輩医師に、これまでの歩みを聴きました。

History

2006年北海道大学医学部 入学臨床実習で胸腔鏡手術を見て、呼吸器外科に興味を持つようになる。
2012年
(1年目)
国立国際医療研究センター病院 
臨床研修
2014年
(3年目)
東京医科大学病院 
呼吸器甲状腺外科 後期研修
呼吸器外科を単独で学ぶことができる点に魅力を感じ、かつ医局の雰囲気にも惹かれたため、入局を決めた。
2015年
(4年目)
東京医科大学病院
八王子医療センター 呼吸器外科
若手医師が自分だけだったので、指導医と共に、肺がんの開胸手術の術者を多く務めた。またこの頃、外科専門医の筆記試験に合格した。
2016年
(5年目)
東京医科大学病院 
呼吸器甲状腺外科 後期研修
専門医を取得するため、消化器外科を4か月、乳腺外科を1か月、心臓外科を2か月回った。
2017年
(6年目)
外科専門医資格取得
2018年
(7年目)
がん研究会有明病院 
呼吸器センター外科 レジデント
肺がん手術の症例が非常に多い病院で、他の医局から集まった同年代の医師たちと切磋琢磨しながら学んだ。
2020年
(9年目)
東京医科大学病院 
呼吸器甲状腺外科 助教
呼吸器外科手術の術者だけでなく、外来や臨床試験、研究にも携わる。呼吸器外科専門医の取得を目指している。

 

河口 洋平先生
東京医科大学病院 呼吸器甲状腺外科

 

 

 

 

 

 

専門医への道のり 外科系(後編)

専門医は、術者としてのステップアップの
良い目標になっていると感じます。

外科専門医取得までのキャリア

――河口先生が呼吸器外科を志したきっかけを教えてください。

河口(以下、河):最初に興味を持ったのは臨床実習で胸腔鏡手術を見た時です。胸の様子がモニターに映し出され、学生も術者と同じ視点で見ることができたことで、胸腔鏡手術への関心が高まりました。

最終的に決断したのは臨床研修の時です。内視鏡を扱う消化器内科にも興味がありましたが、呼吸器外科をローテートした時、気胸や転移性肺気腫など専攻医が術者として行うような手術を一部経験させてもらったことが決め手となりました。

――後期研修先に東京医科大学病院を選んだ理由をお聴かせください。

:他の病院では外科一般を学ぶプログラムが多いなか、東京医大は呼吸器外科を単独で学べるところに惹かれました。また手術だけでなく気管支鏡や化学療法など、肺がん治療に総合的に関われるところも魅力でした。病院見学に行った際の第一印象も良かったですし、その後にも先生方から食事に誘っていただくなど、交流を重ねました。それによって医局の雰囲気もわかり、ここにしようと思いました。

――外科専門医を取得するまでの経緯を教えてください。

:3年目は大学病院で、肺がん全体のマネジメントや術前術後管理など、入院患者さんを診るときの一連の流れを経験しました。手技としては、胸腔ドレーンや気管支鏡の基本的なスキルを身につけるとともに、胸腔鏡のスコピスト(カメラ持ち)や、転移性肺腫瘍の部分切除を経験しました。

4年目は八王子医療センターに出向し、3年目で経験したことに加え、肺がんの肺葉切除など、主に開胸手術も経験しました。外科専門医の筆記試験に合格したのもこの頃です。

5年目で大学に戻り、5~6年目に呼吸器外科以外の外科をローテートしました。消化器外科を4か月、乳腺外科を1か月、心臓外科を2か月回り、外勤先や出張先でも手術を経験させてもらいました。そうして必要な症例数を得て、外科専門医を取得しました。

――外科専門医を取得した時点で、呼吸器外科以外の外科のことはどの程度できるようになっているのですか?

:一般的な消化器外科の術後管理や、虫垂炎・ヘルニア・胆嚢摘出など、臨床研修医が執刀を経験するような手術はできます。また、大腸がんや胃がんの手術を一部執刀させてもらうこともありました。

専門医取得後の研鑽と今後の展望

――外科専門医を取得された後は、呼吸器外科で研鑽を積まれたのですね。

:はい。7年目から2年間は、がん研有明病院にレジデントとして勤務しました。がん研は肺がん手術の歴史が古く、症例数が非常に豊富な病院で、それまでの経験如何を問わず一から肺がんの手術を教えていただきました。まずはスコピストや助手を務め、1年目の後半くらいから術者を務めるようになります。他の医局出身者との切磋琢磨は刺激的で、互いの医局の様子を情報交換できたことも有意義でした。

9年目からは再び大学に戻り、呼吸器外科手術の術者を務めると同時に、外来や臨床試験、研究にも携わっています。

――現在、先生は後輩の指導にあたっていらっしゃいますが、新専門医制度になって、専攻医の学びは変わったと感じますか?

:私は6年目で他の外科を回ったため、どうしても回った先ではお客様扱いをされていました。今のプログラムでは入局から3~4か月後には他科を回ることになるため、最も初歩的な業務から経験できる点は良いのではないかと思います。

また、今は内視鏡手術が全盛となったこともあり、開胸手術を飛ばして胸腔鏡手術から経験する若手も多いです。でも、私自身は開胸手術を経験して良かったと思っています。なぜなら肺の手術では非常に繊細な動脈の血管処理をするため、少し損傷しただけでも大出血につながります。開胸手術を経験していることで、術者として手を動かせる技術が身についているため、トラブルにも対応しやすいのです。

――今後の展望をお聴かせください。

:まずは呼吸器外科専門医を取得することを目指しています。またロボット手術も行いたいと思っているのですが、呼吸器外科専門医の取得はロボット手術の術者を務める条件にもなっているので、良い目標になっています。さらに、学会で胸腔鏡手術を安全に行えることを認定する制度が新たにできたので、その認定も得たいですね。

資格や認定を得たら一人前というわけではありませんし、今後も修練は必要ですが、私にとって資格や認定は、自身の技量がどこまで到達したかの確認や、「最低限ここまではできる」という証明になっているなと感じます。

 

※取材:2021年5月
※取材対象者の所属は取材時のものです。