総合病院の歯科医師(後編)

他科や院外との関わり

――病院内では、どのような機会に他の診療科の医師と関わるのですか?

:口腔外科の診療を行ううえで、患者さんの基礎疾患のコントロールが必要な場合、医師の先生方と連携します。例えば、重篤な炎症の患者さんに血液検査を行ったことで糖尿病が見つかった場合は、代謝・内分泌内科に管理していただきながら治療を進めます。天疱瘡のように口の中から初発症状が出ることが多い病気は、生検や血液検査で診断がついた後、皮膚科や膠原病内科の先生にお世話になります。また、手術時に全身麻酔が必要な場合は、麻酔科の先生に麻酔管理をしていただきます。

一方、他科の治療に口腔外科として介入が必要な場合もあります。人工呼吸器を装着している患者さんや、周術期の患者さんに対しては、感染症を防ぐためにも口の中の状態を診る口腔ケアが欠かせません。また、入院中の患者さんの口の中の状態が悪化し、ご飯が食べられず、栄養不足になるということを防ぐため、栄養管理サポートチームへの参加なども行います。放射線治療により口内炎ができた場合の管理などもしています。さらには不明熱の原因探索など、基礎疾患の影響で口腔内に症状が出る患者さんについて、医師と調整し連携しています。

救急においては、頭部外傷を伴うような顎骨骨折などは、脳神経外科の診察を経た後、こちらで手術を行います。

――他科の医師と連携するうえで、日頃から心がけていることはありますか?

:当院の場合、私たちは他科の先生と同じ医局にいるので、普段から医局会や委員会を行っていますし、ときには昼食を一緒に摂りながら、コミュニケーションを図っています。他にも、院内で自ずと会話が発生して比較的わかりあえる環境だとは思います。

――開業の歯科医師など、院外との連携についてお聞かせください。

:術前の口腔ケアに関しては、時間がないときはこちらで行うこともありますが、口腔外科から直接、患者さんのかかりつけの歯科医師にケアを依頼しています。

また、開業の歯科医師だけでなく、開業の医師との連携もあります。整形外科からは顎関節症や顔面骨折、内科からは口内炎や顎の腫れなど歯性炎症の患者さんの紹介状が来ることが多いです。

――患者さんを紹介し合うためには、地域での連携が大切だと思われますが、何か工夫はされていますか?

:地域の医師・薬剤師・歯科医師の連絡協議会があり、コロナ禍以前は定期的に会合を開くなど、様々な交流の場を設けています。

私個人としては、医師・歯科医師から患者さんを紹介されたら、その後の信頼につながるよう、返書と患者さんの経過及び治療終了の報告を出すようにしています。

歯科は全科の主治医

――総合病院で働く歯科医師として、どのような場面で仕事のやりがいを感じますか?

:不明熱の原因探索で口の中や顎骨内に原因疾患が発見されたときや、口腔ケアを徹底したことでその後の粘膜症状が軽減されたときなど、自分の診断から治療の方向性が定まったときは、特にやりがいを感じます。

口腔は、食事の門戸であるとともに病気が体に侵入するときの門戸でもあります。う蝕や歯槽膿漏以外にも口腔の病気は様々あり、例えば歯槽膿漏が動脈硬化に関係して虚血性心疾患や脳卒中など全身疾患を引き起こすこともあります。そういった様々な病気を研究したり、治療したりすることは興味深いですし、口腔を守ることが自分の生きがいだと感じています。

――他科の医師はどのようなときに口腔外科を頼るとよいのでしょうか?

:私たちは咀嚼を含めた口腔機能に関するエキスパートなので、口の中に何か問題があったときはとにかく相談してほしいです。口腔の疾患を疎かにすると全身に影響を及ぼしてしまうこともあるため、私は「歯科は全科の主治医である」と言っています。逆に言うと、口腔の健康状態を維持しておけば、全身的な健康状態の安定をかなり保つことができるのです。

――最後に、これから医師になる医学生へのメッセージをお願いします。

:小児科医や内科医の先生は、発熱時に口の中を診ますが、他科ではなかなかそういう機会はないと思います。そのため、医師の皆さんは、口腔と体は別という感覚を抱きがちになってしまうかもしれませんが、口腔も体の一部だと認識していただきたいです。そして患者さんの口腔に関わる問題が何かあれば、ぜひ気軽に口腔外科に相談していただきたいと思います。

 

高田 典彦先生
草加市立病院
歯科口腔外科 部長






 

 

※取材:2022年5月
※取材対象者の所属は取材時のものです。