日医ニュース 第884号(平成10年7月5日)

介護保険制度の概要(1)

医療保険と介護保険の区分け


 会員の皆さま方に、できるだけ最新の情報を提供することを目的として、日医ニュースの毎月5日号に、「介護保険制度の概要」をシリーズで紹介していく。今回は、第1回目として、医療保険と介護保険の区分けについて解説する。

1.在宅サービス

1)介護保険給付対象の在宅サービス

・・・介護保険の対象となる在宅サービスとして、以下の12種類が挙げられる。

 

表1.介護保険給付対象の在宅サービス

 

(1)訪問介護(ホームヘルプサービス)
(2)訪問入浴介護
(3)訪問看護
(4)訪問リハビリテーション
(5)通所介護(デイサービス)
(6)通所リハビリテーション(デイケア)
(7)居宅療養管理指導
(8)短期入所生活介護(福祉系のショートステイ)
(9)短期入所療養介護(医療系のショートステイ)
(10)痴呆対応型協同生活介護(グループホーム)
(11)特定施設入所者生活介護(ケアハウスなど)
(12)福祉用具貸与

 

2)在宅における介護保険と医療保険の給付関係(図1参照)

 (基本的な考え方)

(1)介護保険の被保険者は、医療保険の被保険者でもある。

   介護サービス以外の医療が必要になれば、当然、医療保険から給付が受けられる。

   具体的には、「投薬」「検査」「処置」「訪問診療」などは、現行どおり医療保険からの給付となる。

(2)介護の必要性に対応する医療サービスは、介護保険で給付する。

   具体的には、表1の以下の医療系サービスは、介護保険の給付となる。

   ・居宅療養管理指導

   ・訪問看護

   ・訪問リハビリテーション

   ・通所リハビリテーション(デイケア)

   ・短期入所療養介護(医療系のショートステイ)

   居宅療養管理指導については、医師や薬剤師などにより行われる療養上の管理および指導と規定されているが、具体的な範囲については、今後検討される予定。

(3)法律上、介護保険の給付が受けられる同一サービスの場合には、医療保険からは給付しないとの調整規定が設けられており、介護保険の給付が優先する。訪問看護については、サービス内容を今後整理することが求められる。

 

図1.介護サービスと医療サービス(在宅)

 

 

2.施設サービス

1)介護保険給付対象の施設サービス

・・・介護保険給付の対象となる施設サービスとして、以下の3施設が挙げられる。

 

表2.介護保険給付対象の施設サービス

(1)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
(2)介護老人保健施設(老人保健施設)
(3)介護療養型医療施設
    ・療養型病床群
    ・介護力強化病院
    ・老人性痴呆疾患療養病棟

 

2)施設における介護保険と医療保険の給付関係

 (基本的な考え方)

(1)施設サービスについては、介護サービスのほか、おのおのの施設の有する機能に応じて、主として日常的な医療サービスが提供されることになる。

(2)老人保健施設や療養型病床群等に入所・入院している要介護者に、手術などの急性期治療が必要になった場合、原則として、適切な治療が可能な急性期病棟等に移って、医療保険から給付を受けることとなる。

(3)療養型病床群は、病床を介護保険適用部分医療保険適用部分に区分(原則は病棟単位、例外的には病室単位)できる。

   したがって、具体的なタイプとしては、以下の3つが考えられる。

    ア)介護保険適用施設(すべて介護保険の適用)

    イ)介護保険適用病棟型

    ウ)介護保険特例適用病室

   介護保険適用の療養型病床群に入院している患者については、原則として医療保険からの給付は行わない。

   ただし、入院者が急性増悪などを起こしたものの、転棟(転床)が困難な場合、一定期間介護保険適用の療養型病床群にて、必要十分なサービスを受けることができる運用を行う。

 

3)介護保険施設における介護報酬の考え方(案)

・・・介護保険施設における介護報酬の考え方については、以下の2案が考えられている。

 (案1)

  ・人員等の配置基準に関係なく、要介護度状態区分ごとに報酬を設定する。  

 

図2.介護保険施設における介護報酬の考え方

 

 

 (案2)

  ・上記に加え、人員配置基準も考慮した形で、介護報酬を設定する。

  今後の検討課題であるが、案2の方向で整理しつつある。

 


日医ニュース目次へ