日医ニュース 第887号(平成10年8月20日)
視点
これからの勤務医は
今、医療を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。特に、入院医療に関しては、厚生省において、「21世紀に向けての入院医療の在り方に関する検討会」が平成10年7月3日に報告書を出し、そのなかで、一般病床の機能を明確にし、急性期医療の病床と慢性期医療の病床に区分することを提案している。もし、この病床区分が具体化されてくるとすると、平均在院日数の問題も表面化し、初期・2次・3次の各医療施設はお互いに連携しながら、効率的な医療システムのなかで分化と結合を主体とした医療を展開していかざるを得なくなる。
さらに、平成9年12月17日に医療法が一部改正され、かかりつけ医を支援する病院として地域医療支援病院を創設し、病診連携を推進するために紹介率80%以上と逆紹介が義務化されることになった。この病診連携は昔からいわれていることであるが、なかなか発展しないのが現状である。その原因の一つに、医療機能の公開の問題と勤務医の問題が浮かびあがってくる。地域の医療機能の公開は情報が整備されていないことが多く、また、病院の勤務医は大学病院から出向してくることが多いため、地域の医療機能を知る間もなく、1〜2年で大学病院へ帰っていく。このことが病診連携の推進を遅くしている一因ともいえる。
ところで、これからの地域医療の充実を考えるとき、病診連携の推進のうえで勤務医の役割が重要であることはいうまでもない。ところが、勤務医の認識がそこまでに至っていない。これからの日医の勤務医対策は、勤務医の入会を増やして、数のうえで組織強化を図るというだけではなく、地域医療のなかでの勤務医の役割を明確にする必要がある。病診連携を推進していくためのシステム作りを地域医師会が中心となって行い、詳細な医療機能(医師機能、医療施設機能)の情報を整備し、医療マップを作成し、友人、知人、同窓という狭い範囲ではない、幅広い情報のなかで、患者のニーズに合わせた紹介、逆紹介ができるような体制を整備することが緊急の課題であり、これが地域医師会の組織強化に繋がると考える。
今後は、大学医師会に働きかけ、これらの認識を大学病院勤務医が持つことになれば、地域の医療の質をさらに向上させることが可能となる。