日医ニュース 第893号(平成10年11月20日)

視点

整形外科と医業類似行為


 以前より一部の医業類似行為者たちの施術をめぐって、いろいろなトラブルが生じているが、整形外科領域での問題も例外ではない。

 整形外科領域の医業類似行為には、法で認められた医業類似行為として、あん摩、マッサージ指圧師、はり師、きゅう師があり、主に腰痛、肩こり等の慢性疾患を扱うが、社会保険では医師の同意が必要である。

 柔道整復師(接骨師、整骨師は同意語)業務については後述するとして、法に基づかない医業類似行為としては、カイロプラクティック、整体等、いろいろ種類があるが、法で認められたものではない。

 柔整師の保険診療は、基本的に療養費払いであるが、現在、「受領委任払い制度」という方法で行われている。これは、施術料金のうち患者負担分については患者に請求し、残りの施術料金については、患者が療養費の受領を柔整師に委任することによって、柔整師が患者に代わって各保険者に請求する制度である。

 柔整師の業務範囲は柔整師法により規定されており、打撲、捻挫、脱臼、および骨折等の外相を扱うことができるか、脱臼、骨折は応急の場合を除き、持続して柔整師が施術を行う場合は「医師の同意」が必要である。内因性の慢性疾患は取り扱うことはできない。骨粗鬆症、膝や腰の変形症、リウマチなども適応外である。レントゲンを撮ったり、ギブスを巻いたり、薬を処方したりすることもできない。

 一方、昭和62年より平成3年までの間に国民医療費は20%増加したが、柔整師の療養費の伸び率は実に、47%に達しており年間2000億円あまりとなっている。

 平成5年に会計検査院が柔整師94施設を対象として行った調査結果によれば、医療機関との重複と内因性疾患の施術を行っているものが69.1%、そして、施術部位数をごまかしていたもの−ごまかし率50%以上のものが全体の23.4%など多くの問題点が指摘された。

 この報告に基づき、平成7年医療保険審議会柔道整復師等療養費部会がその改善に関する答申案を出したが、現在まで具体的改善策は行われているとは思われない。

 このような状況において、医療と医業類似行為との違いをわれわれ医師みずから、正しく国民に説明し、国民が適切に受診できるよう啓蒙する義務があると強く感ずる。同時に、日医としても行政に積極的に働きかけていきたい。

 


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