日医ニュース 第896号(平成11年1月5日)

介護保険制度の概要(7)

介護報酬設定の基本的考え方


 「介護保険制度の概要」シリーズの7回目は、平成11年度中に公布予定の介護報酬について、現時点での基本的考え方を解説する。

 

 1.介護報酬設定の基本的考え方

 保険給付の対象となる各種介護サービスの費用の額は、介護保険法上、厚生大臣が定める基準により算定することとされ、この算定基準を「介護報酬」という。「介護報酬」は、@簡素・簡明な報酬体系であること、A適切な評価がなされた報酬であること、Bサービス費用の効率化を促す報酬であること−などの考え方を基本に、各サービスについて設定される。

 2.介護報酬設定方法

 介護報酬の額は、各サービスの内容に応じた平均的な費用に、サービス事業者や介護保険施設の所在地域や利用者の要介護度等を加味して設定するのが基本原則となる。各サービスごとの具体的な設定額は、今後の実態調査を踏まえて決定されるが、主なサービスの種類とその介護報酬設定方法を図1に示す。

図1.サービスの種類と介護報酬設定方法

サービスの種類 介護報酬設定方法
居宅介護サービス費
 @訪問介護
 A訪問入浴介護
 B訪問看護
 C訪問リハビリテーション
 D通所介護
 E通所リハビリテーション
 F福祉用具貸与
 G居宅療養管理指導
サービス内容に応じた平均的費用(通所介護・通所リハの食事を除く)に次の事項を勘案して設定
  ●サービスの内容
  ●事業所の所在地域 等
 H短期入所生活介護
 I短期入所療養介護
 J痴呆対応型共同生活介護
 K特定施設入所者生活介護
 サービス内容に応じた平均的費用(食費、理美容代等の日常生活に要する費用を除く)に次の事項を勘案して設定
  ●要介護度
  ●事業所の所在地域 等
居宅介護福祉用具購入費 現に購入した費用
居宅介護住宅改修費 現に改修した費用
居宅介護サービス計画費 事業所の所在地域等を勘案した平均的な費用の額を勘案して設定
施設介護サービス費
 @指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
 A介護老人保健施設(老人保健施設)
 B指定介護療養型医療施設(療養型病床群・老人性痴呆疾患療養病棟・介護力強化病院)
○介護サービス等の費用
 サービス内容に応じた平均的費用(食費、理美容代等の日常生活に要する費用を除く)に次の事項を勘案して設定
  ●要介護度
  ●施設の所在地域 等
○食事
  食事の提供の平均的な費用の額を勘案して設定

3.介護報酬設定方法の考え方

 (1)居宅サービス

 居宅サービスにかかる介護報酬の設定方法は、居宅サービスの内容により概ね三つに分類して考えられる。まず、@訪問看護・訪問介護の訪問型サービスでは、「各サービス行為を組み合わせて評価し設定する方法」や「サービスに係る時間単位・日単位で設定する方法」などが案として挙げられている。また、A通所リハビリテーション・通所介護などの施設利用型サービスでは、「要介護度を3段階に分けて設定する方法」や「3段階の要介護度に施設・人員基準を加味して設定する方法」などが、また、B訪問リハビリテーション・訪問入浴介護については、「要介護度に関わらず平均的な費用で設定する方法」などが案として挙げられている。ここで、一例として、通所リハビリテーションの介護報酬設定方法の考え方(案)を図2に示す。

図2.通所リハビリテーションの介護報酬設定の考え方(案)

 ●案1要介護度ごとに設定する方法

 ●案2要介護度および施設・人員基準により設定する方法

要支援 要介護(軽度) 要介護(重度)

大規模 医療機関型

小規模 医療機関型

老人保健施設型

 (2)施設サービス

 施設サービスでは、介護報酬の設定方法として、「施設の人員配置等に関係なく、要介護度に応じて設定する方法」や「要介護度に加えて施設・人員基準を加味して設定する方法」が案として挙げられている。各介護保険施設の介護報酬設定方法の考え方(案)を図3に示す。なお、現在は案2の方向で検討されている。

 図3.介護保険施設の介護報酬設定の考え方(案)

 ●案1 要介護度ごとに設定する方法

 

 ●案2 要介護度ごとおよび人員配置ごとに設定する方法

施設 人員配置 要介護1
指定介護老人福祉施設 要介護者:介護職員=3:1
要介護者:介護職員=4:1
介護老人保健施設 要介護者:看護・介護職員=3:1
要介護者:看護・介護職員=3.6:1
指定介護療養型医療施設 要介護者:看護・介護職員=2:1
要介護者:看護・介護職員=3:1

 


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