視点

官主主義を打破するために


 わが国の官僚は世界一優秀で,真面目であると,国民の誰もが信じてきたのは,単なる思い込みであったのか.
 一連の不祥事から,今まで,秘密のベールに包まれていた官の内部が国民の目にさらされ,霞ケ関全体の地盤沈下につながった.遅ればせながら,立法府としての使命に気付いた永田町が官僚政治から議会政治に軌道修正しつつあることは大きな進歩といえよう.
 わが国は議院内閣制をとっており,大統領制で法案提出権を議員だけが持つ米国とは異なるが,政策を担うのは政治家のはずである.官僚にのみ政策を立案させ続け,官僚の権限を肥大化させたのは政治家の怠慢である.
 官からの立案が法案化される過程では,常に審議会なるフィルターを通す手法がとられているが,審議会は形式だけで,最終的には単なる承認機関に近い存在といえる.その理由は,審議会の構成メンバーの選定方法に起因する.あらかじめ官で立案された事項が,承認を受けやすい方向で人選されているとしか思えない.それゆえ,現場を理解する専門団体の意見は反映される余地が少なく,終局的に官の立案が強引ともいえる手法で承認されることとなる.官の立案が,遅かれ早かれ法案化されてきたのは,そのような経緯からである.
 各業界が主張を官に認めさせる最善の方策は,主張と引き替えに業界に官からの「天下り」を受け入れるという手法であり,それをとり続けたことが,官の権力を肥大化させ,官業癒着の図式を存続させる結果となった.
 「官による,官のための国家」は,わが国に民主主義をもたらすことなく,官主主義を根付かせた.そのうえ,国内に「官の社会」とそれを支えるための「民の社会」という二重構造をもたらしたことは,官を利用し,自らの存在を維持させた政治の責任といわざるを得ない.
 しかし今や,やっと議会政治が芽生えつつある.われわれは専門家集団として,国のため,国民のため,官と対峙するに価する対案を政治の場に常に投影し続ける努力をし,さらには,われわれの施策を理解する政治家を一人でも多く政治の場へ積極的に送り出し,応援すべきであろう.
 そのような手法をとる組織を圧力団体ととらえるべきであろうか.そうとは思えない.官に互して対案を持つことなく,過去と同様に官からの「天下り」をはかる業界は,いつか国民から見放されるに違いない.


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