日医ニュース 第900号(平成11年3月5日)
プリズム |
厄介な2000年問題
ふって湧いたようなコンピュータ西暦2000年問題が世界中を悩ませている.コンピュータ業界では,以前からプログラムの問題点を知っていただろうが,今になって突然どのような不測の事態が起きるかわからないと,まるで脅迫しているような危機説を流す.
医療機関では,コンピュータの欠陥や故障は人命にかかわりかねない.万が一にも事故を起こさないように配慮しなければならない.しかし,このままで2000年1月1日を迎えるならば,地雷原を目をつぶって歩いているような事態となり,どこで爆発が起きるかわからない.コンピュータを使っていなければ,こんな問題は起こらないといってみても,現代の医療はコンピュータなしでは,動かないようになってしまっている.
また,多くの医療機器,OA機器に多くのマイクロ・チップが組み込まれ,それもどこにどんなマイクロ・チップが組み込まれているかわからず,ブラックボックス化している.
最近の機器はともかく,古い機器では修理できるかどうかさえわからない.
さらに,機器の点検に必要な経験を持つ技術者が不足している.点検で欠点がわかれば修理しなければならないが,その方法も千差万別で,修理費用もいくらかかるかわからない.
それならば機器を更新して,この危機を回避しようとする医療機関も多くなった.コンピュータ業界では,更新,点検,修理を含めて,2000年特需として喜んでいる.
この特需にかかる費用は,莫大な額である.点検で欠点がわかれば,修理費用を業者に転嫁できようが,点検して欠点がなければ点検費用を転嫁するわけにはいかない.
2000年を前に,医療機関は巨額な費用を診療報酬から捻出しなければならない.ただでさえ,抑制されている診療報酬のなかから,医療費が医療に投資されずに流れ出てゆく.