日医ニュース 第910号(平成11年8月5日)

介護保険制度の概要(14)

―主治医意見書の取り扱い―

 「介護保険制度の概要」シリーズの14回目は,主治医がいない場合の作成方法や作成料など主治医意見書の取り扱いについて解説する.

1.意見書作成の基本的考え方について

 かかりつけ医(主治医)が意見書を作成する場合の基本的な考え方は,下記のとおりである(図1,表1参照).介護保険では,要介護認定前の事項については保険給付の対象とされないので,意見書の記載費用は,要介護認定にかかる事務費として市町村(保険者)が負担する.


表1 基本的な検査の範囲



・基本診療料に含まれる簡単な検査(血圧測定検査等)
・胸部単純X線撮影
・血液一般検査
・血液化学検査
・尿中一般物質定性・定量検査 など

1)主治医がいる場合
 これまでの診療等によって得られている情報に基づき,意見書を記載することになるが,次の点に留意して記載することが求められる.
・介護保険適用と思われる症例については,あらかじめ意見書内容に準じて書いておき,意見書作成の要請があった時に診察のうえ記載.
・診療内容は,1カ月以内くらいのものが適切.

2)主治医がいない場合
 主治医のいない申請者については,地域医師会が市町村の要請をうけて適切な医師を紹介する体制をつくることが求められる.意見書作成の診察・検査にかかる費用は,次のようなケースがある.
(1)主訴等(寝たきりを含む)がある場合,診察に係る費用は医療保険に請求
(2)主訴等が特になく,申請者が医療を希望しなかった場合
  【基本的な診療】 →市町村事務費(診療報酬に準じた相当額)
(3)基本的な診療で医学的問題がなかった場合
   医師の判断により【基本的な検査】→ 市町村事務費(診療報酬に準じた相当額)
(4)基本的な検査によって医療が必要な場合,その費用は医療保険に請求

2.意見書作成料について

 意見書作成料については,同一の環境において集団生活を行っており,配置医師等により恒常的に医師の管理下にある施設入院・入所者は,在宅者に比して状況把握が容易であること,また,6カ月後の再認定においては,過去に記載された意見書を参考にできることにより,在宅・施設別,新規・継続申請別に分けて設定された.
 なお,作成料は,要介護認定にかかる費用として,制度上,各市町村が独自に設定することになるが,参考となる基準額がないため,厚生省が一定の基準額を提示(表2参照).大半の市町村が,この基準額に準じて設定すると思われる.

表2 意見書作成料
 

在宅者

施設入院・入所者

新規申請者

5,000円

4,000円

継続申請者

4,000円

3,000円
※継続:施設入院・入所者は,前回と同一施設に入院・入所している場合.
    在宅者は,前回と同一医療機関または主治医である場合.

 ※「施設入院・入所者」について:常態として医師(常勤・非常勤を問わず)の医学的管理・健康管理下にある施設入院・入所者をいう.
    例:配置医師の医学的管理下にある特別養護老人ホーム入所者
     :医師の医学的管理下にある療養型病床群(医療保険)の入院患者 など

3.その他留意すべき事項

(1)意見書の依頼・提出経路について
 ・市町村が主治医に直接依頼し,主治医から市町村に直接送付
 ・申請者が主治医にあらかじめ依頼しておき,主治医から市町村に提出
  (更新認定等,あらかじめ被保険者が申請を行うのが明らかな場合)
 ・申請者が主治医にあらかじめ依頼しておき,主治医から申請者を経由して提出
  (更新認定等,あらかじめ被保険者が申請を行うのが明らかな場合)
(2)意見書作成の拒否について
 正当な理由があるならば,意見書作成を拒否できるが,その場合,主治医となり得る他の医師を紹介することが望ましい.
 正当な理由の具体例:長期間診察を行っていない,専門外である,他に 頻繁に受診している医師がいる など


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