日医ニュース 第912号(平成11年9月5日)

介護保険制度の概要(15)

医療保険と介護保険の区分け
―居宅療養管理指導と訪問看護―

「介護保険制度の概要」シリーズの15回目は,介護保険制度の施行に伴う医療保険と介護保険の区分け,特に,居宅療養管理指導と訪問看護について解説する.

 介護保険制度下における医療サービスの取り扱いについては,(1)要介護認定等を受けた者に対しても必要な医療サービスの受給は妨げられない,(2)急性期医療が必要になった場合,原則,医療保険から給付を受けるということが基本原則となっている.これを踏まえて,居宅療養管理指導と訪問看護における医療保険と介護保険の区分けについて解説する.

1.居宅療養管理指導について

  居宅療養管理指導とは,「居宅要介護者・要支援者(要介護者等)について,病院,診療所または薬局の医師,歯科医師,薬剤師,管理栄養士,歯科衛生士等により行われる療養上の管理および指導であって厚生省令で定めるもの」と定義され,医師については,通院困難な要介護者等に対して訪問して行う計画的かつ継続的な医学的管理に基づき,
 (1)本人の同意を得たうえでの居宅介護支援事業者等に対する介護サービス計画(ケアプラン)の作成などに必要な情報提供
 (2)介護サービスを利用する場合の留意事項,介護方法等について利用者や家族等に対する指導・助言
 を行った場合,1月1回に限り算定するとなることが想定されている.これらの行為に対する評価として新しく設けられるもので,訪問診療や往診,疾患の治療に関する具体的な指導管理,投薬,注射,検査,処置等の個別の医療行為は,医療保険から給付される.
  また,寝たきり老人在宅総合診療料(在総診)を算定している場合,在総診の療養上の管理指導における福祉・保健との連携をはかるという部分が居宅療養管理指導と一部重複するため,この部分が調整されることになる(図1参照).
  薬剤師,管理栄養士,歯科衛生士の居宅療養管理指導とは,現行の寝たきり老人に対する訪問薬剤管理指導,訪問栄養食事指導,訪問歯科衛生指導に相当する内容となろう.

2.訪問看護について

  訪問看護については,現在,医療保険では,医療ニーズが特に高い場合を除いて週3回を限度として行われているが,このような通常の頻度で行われる要介護者等に対する訪問看護については,原則,介護保険から給付される予定である.
  一方,神経難病やがん末期,急性増悪時のような医療ニーズの高い場合には週3回の回数制限が撤廃され,毎日,訪問看護を行うことが認められているが,このような場合,要介護度に応じた支給限度額の範囲内では対応できないことから,医療保険からの給付が妥当と考えられている.また 社会復帰支援等を行う精神科訪問看護についても,これまでどおり,医療保険から給付が行われる方向で検討されている(図2参照).

  また,訪問看護において留意すべき点として,次のような事項がある.
 (1)訪問看護指示書の取り扱い
   介護保険制度下においても,訪問看護には,これまでどおり,主治医の「訪問看護指示書」が必要となる.指示書料については,基本的には医療保険の取り扱いとなる方向で検討されている.
 (2)訪問看護ステーション
   介護保険における訪問看護には,医療機関の行う訪問看護と訪問看護ステーションの行う訪問看護があるが,特に訪問看護ステーションについては,制度施行後,要介護者等に対して訪問看護を行う介護保険制度上の「指定居宅サービス事業者」と従来の健康保険法による「指定訪問看護事業者」,老人保健法による「指定老人訪問看護事業者」の3種類が存在することに留意する必要がある(表1参照).

表1 訪問看護の事業者と主な対象者
事業者の種類 主な対象者
指定居宅サービス事業者 65歳以上または40歳以上65歳未満の特定疾病者で要介護・要支援の認定を受けた者
指定老人訪問看護事業者 要介護認定で「自立」と判定された者,要介護認定自体を受けなかった者等で,医療の必要性があると医師が判断した者
指定訪問看護事業者 若年者など介護保険の被保険者(対象者)でない者等で,医療の必要性があると医師が判断した者


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