日医ニュース 第925号(平成12年3月20日)
平成10年国民栄養調査結果の概要 (厚生省) |
1.身体状況,食生活状況
(1)体型の変化―増える男性の「肥満」と若年女性の「やせ」
昭和54年に比べ,男性ではいずれの年代においても,肥満者の割合が増加.一方,若年女性ではやせの者が増加.
肥満の判定に用いられるBMI(体重kg/身長(m)2)の平均値を昭和54年と比べると,男性ではいずれの年代でも上回っているが,女性では15〜49歳までは下回っている.男性では,肥満者(BMI≧25.0)の割合が15〜19歳代で6.0%から11.4%,20歳代で9.2%から19.0%,30歳代で16.3%から30.6%へと若年層において増加が著しい.一方女性では,やせ(BMI<18.5)の者の割合が15〜19歳で13.5%から20.4%,20歳代で14.4%から20.3%に増加し,若年女性のやせの傾向が顕著になってきている.
日本人の肥満人口(15歳以上)は推計で2300万人.男性で1300万人,女性で1000万人.
ここ20年間の肥満者の割合の推移では,男性では20,30歳代を中心に著しい増加,女性ではほぼ横ばい.
肥満の判定に用いられるBMIを基準として求められた肥満者の割合について,平成10年10月1日の人口をもとに推計したところ,肥満人口(15歳以上)は男性で1300万人,女性で1000万人と推計される.
また,ここ20年間の肥満者の割合の年次推移をみると,男性では15〜19歳,20歳代,30歳代でほぼ2倍の増加を示し,平成元年と比較してもこの年代層では1.3倍の増加がみられる.一方女性では,ほぼ横ばいである.
(2)体型に対する意識の変化―進む女性の「やせ指向」,理想もスリム化
昭和54年に比べ,男女とも自分の体型を「太っている」と評価する者が増加.一方「やせている」と評価する者は減少.
男性では,「太っている」と評価する者が増加し,30歳代,40歳代では2人に1人みられる.
一方,女性でも「太っている」と評価する者が増加し,70歳以上を除くいずれの年代においても2人に1人が「太っている」と評価している.特に若年女性においては,体型の変化では「やせ」の者が増加しているのに対し,意識では「太っている」と評価する者が増加している.
肥満度別に体型に対する自己評価をみると,男性では適正に評価している者が多いが,女性では現実の体型より太めに評価する者が多くみられる.特に,若年女性でその傾向が強い.
現実の体型を「肥満」「普通」「やせ」の肥満度別に分け,体型に対する自己評価をみると,男性ではいずれの年代でもほぼ半数以上は適正に評価している.一方,女性は現実の体型より太めに評価する傾向にあり,現実の体型が「ふつう」であっても半数以上は「太っている」と評価している.
理想とするBMIは,男女とも現実のBMIより低くなっており,特に女性では現実のBMIも低いが,理想のBMIはさらに低い値となっている(BMI=22が標準とされている).
体重についても,女性では15〜19歳といった若い世代から,現実と理想の差が大きい.
BMIは22が標準とされており,理想とするBMIは男性では15〜19歳では20.7であるが,30歳以降では22前後となっている.一方女性では,現実のBMIが15〜19歳,20歳代,30歳代で22を下回っているが,理想のBMIはさらに低く,15〜19歳で18.7,20歳代で19.1である.
体重も,男性では,15〜19歳,70歳以上で現実と理想がほぼ一致しており,肥満が多くみられる30歳代で理想との差が最も大きくなる.女性では,15〜19歳といった若い世代から,現実に比べ理想の体重が5kgほど低い.
(3)体重や食事コントロールの状況―男性で少ない実践
男性で少ない「体重コントロール」への心がけ.
肥満であっても4割は「心がけていない」.
「理想体重に近づけよう,理想体重を維持しようと心がけている」者は,男性では15歳から40歳代で女性に比べて20ポイントほど低い.女性では20〜40歳代で70%を占め,50〜60歳代では80%に達しているが,男性は15〜19歳で45.7%と低く,20〜40歳代でも50%台にとどまっている.
また,肥満者であっても,男性では体重コントロールに心がけていない者が40%を超えてみられる.
体重コントロールを心がける理由は,若年女性では「きれいでありたいから」男性ではいずれの年代でも「健康のため」がトップ.
体重コントロールを心がける理由は,男性ではいずれの年代でも「健康のため」と回答する者が多く,40歳代以降は70%前後を占める.一方,女性は,「きれいでありたいから」が15〜19歳で62.9%,20歳代で51.0%と多くみられ,40歳代以降では「健康のため」が多く,60%台を占めている.
「いつになったら体重コントロールに心がけるか」―20〜40歳代の男性の8割はすぐには心がけるつもりはない.
体重コントロールに心がけていない者が多くみられる男性では,「いつになったら心がけるか」について,20歳代男性では「20歳代」と回答する者が14.5%,30歳代男性で「30歳代」が17.3%,40歳代男性で「40歳代」が19.1%と低率であり,8割以上はそれ以外の回答であり,すぐには心がけるつもりはない.また,肥満であっても20,30歳代男性で「20歳代」「30歳代」と回答する者は20%台しかみられない.
男性で少ない「食事コントロール」の実践.
「いつになったら食事の量や内容に気をつけて食べるようになるか」―20〜40歳代の8割はすぐには実践するつもりはない.
「食事の量や内容に気をつけて食べている」者の割合は,男性は女性に比べて低く,特に20〜40歳代では20ポイント以上低い.女性では30歳代以上で80%を超えるが,男性では15〜20歳代では50%を下回り,60歳以降で80%を超える.また,「いつになったら食事の量や内容に気をつけて食べるようになるか」については,20歳代男性では「20歳代」と回答する者が14.1%,30歳代男性で「30歳代」が15.3%,40歳代で「40歳代」が16.3%と低率であり,8割以上はそれ以外の回答であり,すぐには実践するつもりはない.
(4)進む「運動不足」の蔓延化
「運動不足と思う」者は,昭和54年に比べ,20歳代以降で増加.特に男性では,30,40歳代で7割を超え,女性では,20,30歳代で8割を超えている.その時期は,15〜19歳では7割が「中学,高校生頃から」,20歳代では「高校を卒業した頃から」が5割.
「運動不足と思う」者の割合は,昭和54年に比べ,20歳代以降で増加し,男性では30歳代,40歳代がピークで72.7%,73.0%,女性では20歳代,30歳代がピークで81.8%,82.3%を占める.「運動不足と思う」者について,「いつごろからか」尋ねたところ,15〜19歳では69.2%が「中学・高校生頃」,20歳代では47.6%が「高校卒業頃」と回答した.
(5)男性20歳代後半から30歳代で増える飲酒
男性では20代後半から30代にかけて飲酒頻度,飲酒量が増加する.飲酒が増えた理由は,20代から30代にかけては「仕事上のつきあいが増えた」,さらに,40代にかけては「ストレスが多くなった」.
飲酒頻度をみると,男性では「ほとんど毎日」の者が,20〜24歳では8.0%だったのが,25〜29歳で17.3%,30歳代で38.9%と増加し,40歳代,50歳代では約半数を占める.
また,ここ1,2年飲酒が増えた理由を尋ねると,20〜24歳では「お酒を飲む仲間が増えた」,25〜29歳および30歳代では「仕事上のつきあいが増えた」,40歳代では「ストレスが多くなった」が多くみられる.
2.栄養素等摂取状況について
(1)栄養素等摂取量について
国民1人1日あたりの栄養素等摂取量を調査対象の平均栄養所要量に対する充足率でみると,エネルギーはほぼ適正摂取であり,カルシウムを除く栄養素については所要量を上回っている.
性・年齢階級別でみると,若年層を中心に,男性ではカルシウムの充足率が低く,女性ではカルシウム,鉄の充足率が低くなっている.
(2)食品群別摂取量について
主要食品群別の摂取量について,年齢階級別にみると,15〜19,20歳代で摂取量が多いのが油脂類,肉類.一方,緑黄色野菜,その他の野菜,海草類,魚介類は,若い世代で摂取量が少なく,50,60歳代での摂取量が高い.牛乳・乳製品については7〜14歳で300gを超えるが,20歳代以降は100g前後と少ない.
(3)エネルギーの栄養素別摂取構成比について
摂取エネルギーに占めるたんぱく質,脂質,糖質の構成比をみると,平成7年以降26%を超えている.年齢階級別にみると,20〜40歳代で,脂質エネルギー比率が適正比率の上限とされる25%を超えて高率である.