日医ニュース 第964号(平成13年11月5日)

第105回日本医師会臨時代議員会
医療制度改革への質疑が集中

 小泉内閣が進めている「聖域なき構造改革」において,今,世界に誇るべきわが国の医療制度が危機に直面してる.そのような状況のなか,去る十月十六日,全国から三百二十四名(定数三百二十八名)の代議員が出席し,第百五回日本医師会臨時代議員会が,日医会館大講堂で開催された.当日は,提出議案三件,「平成十二年度日本医師会決算の件」「平成十二年度医賠責事業特別会計決算の件」「平成十二年度診療情報の提供の環境整備事業特別会計決算の件」が審議され,いずれも賛成多数で可決承認された.

 午前十時,林幹三代議員会議長の開会宣言,あいさつのあと,定足数の確認,議事録署名人二名の指名,次いで議事運営委員会委員八名が紹介された後,議長は坪井栄孝会長の登壇を求めた.会長は,冒頭のあいさつのなかで,十月六日,フランスにおける世界医師会理事会にて,世界医師会長の任期を終了し,今後一年間前会長として世界医師会の会務を担当することになったことを報告.つづいて行った所信表明では,国際協力援助事業,同時多発テロへの医療対応,日医の禁煙啓発アクション並びに橋渡し医療の体系化,健康基本法の創設,医療構造改革などについて述べた.
 次いで,糸氏英吉副会長から,平成十三年四月から現在までの会務報告がなされたのち,先に議事運営委員会で決定した順序に従って,代表質問五件および個人質問二十四件が行われた.今回の代表質問は,現在進められている医療制度改革への対応に対するものが主となった.

代表質問

 ブロック代表質問は,五件で以下のとおり.
 島田保久代議員(北海道)の「公的保険と民間保険の併用について」の質問に対して,糸氏副会長は,「日医は,これまで医療構造改革構想を通じて主張してきた本当の改革を実現すべく,混合診療の導入をはじめとする,これ以上の患者負担増を断固阻止する覚悟でいる」と述べた.
 原中勝征代議員(関東甲信越・茨城県)の「医療制度改革反対を国民運動に」については,石川高明副会長が,「都道府県を中心として,地方紙に意見広告を載せることと,患者の声を反映させるための反対署名運動を,第一弾として選択したい」と答えた.
 角田均代議員(中部・三重県)の「医療制度改革について(一,医療保険の負担の見直し 二,老人医療費の伸び率管理制度 三,保険者に関する規制緩和)」の問いに対して,糸氏副会長は,「極めて重大な問題をはらんでいる内容であり,公正と平等の観点から,いずれも到底認容できる内容ではない」と厳しく反論した.
 上原春男代議員(近畿・京都府)の「一,医療制度改革の対応 二,日医総研について」には,石川副会長が,今回の署名運動も含め,全会員がこの難局に積極的に行動することが大切だと考えていること,また,日医総研の意見を取り入れるのはやぶさかではないと述べた.
 桑原正彦代議員(中国四国・広島県)の「個人情報保護制度において地域がん登録事業を適用除外とすることについて法的整備の推進を」の提案に対して,小泉明副会長は,適用除外としない場合,患者のデータをがん登録に載せないことになれば,すべてのがんを網羅的に調査することにより得られる科学的な価値および信憑性が,大いに減じられることになる.引き続き,法の整備について働きかけていくと述べた.

個人質問

 個人質問は二十四名で次のとおりである(質問順).
(1)星博巳代議員(埼玉県)「日本医師会医師賠償責任保険の運営状況について」
(2)犬尾博治代議員(長崎県)「医療法改正による新設備基準への対応措置について」
(3)豊田大徳代議員(熊本県)「日医の意見広告について」
(4)栗山覚代議員(神奈川県)「わかりやすい広報活動を」
(5)宝住与一代議員(栃木県)「日本医師会の広報活動について」
(6)辻政義代議員(福岡県)「営利法人による医療機関の買収について」
(7)浜崎章代議員(長崎県)「小児医療についての要望」
(8)羽鳥雅之代議員(埼玉県)「療養費無払い患者の増加傾向について」
(9)鶴谷嘉武代議員(群馬県)「製薬業界も医療改革の痛みを分かつべし」
(10)加藤寿彦代議員(愛知県)「ORCAの現状と将来構想及び厚生労働省のレセプトオンライン請求等の試験事業との係わりについて」
(11)水谷昇一代議員(愛知県)「准看問題について」
(12)斉藤元康代議員(長野県)「医療保険制度の一元化について」
(13)藤村伸代議員(埼玉県)「介護保険サービス受給者に対する保険診療の制限について」
(14)佐々木繁代議員(新潟県)「母子保健事業費,老人保健事業費(がん検診)等の国庫補助事業への復活を望む」
(15)追川孝雄代議員(千葉県)「航空機事故に対する医療救護活動について」
(16)高柳功代議員(富山県)「女性医師の組織化と支援について」
(17)内藤哲夫代議員(神奈川県)「高額医療と保険財政」
(18)青山喬代議員(広島県)「第四次医療法改正に伴う一般病床における在院日数及び療養病床における特定療養費制度について」
(19)古橋貞二郎代議員(岐阜県)「厚労省は高齢社会を乗り切るビジョンを示すべきである 改革へ向けた案はいずれも目先の制度維持に固執」
(20)和田耕馬代議員(滋賀県)「セコム損保の『自由診療保険メディコム』について」「医療廃棄物の収集運搬,処理等にかかる責任問題について」
(21)八幡雅志代議員(大阪府)「労災保険における二次健康診断等給付事業の拡充について」
(22)藤原淳代議員(山口県)「総合病院制度廃止に伴う患者の大病院集中助長について」
(23)原學代議員(三重県)「共同利用施設の運営について」
(24)多田昌弘代議員(香川県)「これからの介護保険について」

議案審議

 午後二時二十分,個人質問を中断して議事に入る.まず,第一号議案「平成十二年度日本医師会決算の件」,第二号議案「平成十二年度医賠責事業特別会計決算の件」,第三号議案「平成十二年度診療情報の提供の環境整備事業特別会計決算の件」が一括上程され,石川副会長より決算報告書に基づいて,三議案についての説明がなされた.
 内容は,第一号議案に関して,当期収入合計と前期繰越収支差額をあわせた収入合計は,百五十九億六千三百七十一万九千百三十六円,支出合計は,百三十九億三千五百八十五万八千百二十四円となり,執行率は八六・九%,第二号議案については,繰越金収入,支出の事業費とも,六十四億二千四百十三万七千六百八十八円,第三号議案については,収入は,全額国庫補助金で三千七百万三千円で,支出も同額であるということであった.
 議長から慣例により十五名の決算委員が指名され,別室にて決算委員会が開かれた(左掲).この間,本会議場では個人質問が続行された.
 個人質問は,予定時間を約二十分超過して終了.
 午後四時二十五分,決算委員会の審議結果について加納守男決算委員会委員長(福井県)から報告が行われ,質疑のあと,第一,第二,第三号議案ともに賛成多数で可決承認された.
 最後に,坪井会長より謝辞があり,午後四時三十分,議長の閉会宣言により代議員会の全日程を終了した.


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