日医ニュース 第972号(平成14年3月5日)

中央社会保険医療協議会総会
診療報酬改定で諮問・答申

 中央社会保険医療協議会(星野進保会長)総会が,2月20日に厚生労働省で開催され,坂口力厚生労働大臣から諮問のあった平成14年度診療報酬改定案を原案どおり即日答申した.なお,答申には,8項目からなる診療側支払側共同の意見書が付記された.

 政府・与党が,昨年の十二月十七日に診療報酬本体の一・三%のマイナス改定を実施することを決定したのを受けて,中医協では今年一月から,その改定内容について集中的に議論を行ってきた.そのなかで,診療側は,すべての項目を一律に引き下げるのではなく,メリハリのきいた改定を実施すべきであると主張し続け,今回答申を取りまとめるに至った.以下には主な改定内容を紹介する.

主な改定内容

 小児医療については,療養環境に特別な配慮を必要とする小児患者の入院医療,あるいは児童・思春期の精神医療に関して手厚い医療提供体制を整備した場合には新たな評価をすることとした.また,地域の小児科医が連携して小児夜間・休日診療体制を確保し,時間外,深夜等に六歳未満の患者を診察した場合には,新たな算定ができることとなった.
 さらに,深夜マイカー等で運び込まれた小児救急患者を受け入れた場合,紹介率が低下してしまうという問題に関しては,紹介率計算方法の見直しを行う対応がなされた.
 精神医療では,重症の精神科救急患者を多く受け入れる基幹的医療機関の評価を充実するとともに,慢性期における入院医療の評価の見直しを行った.
 患者の状態に応じた慢性期入院医療の評価については,在院日数による逓減制が見直され,初期加算および長期減算が廃止された.
 また,入院医療の必要性は低いが,患者側の事情で長期にわたり入院している患者に関しては,いわゆる社会的入院の解消を図るため,特定療養費制度の対象とすることとした.この措置には激変を緩和するための経過措置が設けられており,平成十六年四月一日から完全実施となる.
 外来医療では,再診料と外来診療料に月内逓減制が導入され,同一医療機関への頻回受診を減らすこととした.ただし,十五歳未満ならびに慢性人工透析患者などはその対象外となる.
 生活習慣病への対応としては,生活習慣病指導管理料を新設し,生活習慣に関する総合的な指導および治療管理を行った場合に月一回の算定を可能とした.
 医療技術の適正評価のなかでは,患者の症状に応じたリハビリテーションを適切に評価する観点から体系的な見直しが行われ,特に効果があるとされる早期リハビリテーションの評価の充実が図られた.
 薬剤使用の適正化と薬剤関連技術料の見直しに関しては,麻薬および向精神薬,薬価基準収載一年以内の医薬品を除いて,薬剤投与期間に係る規制が廃止された.また,後発品の有無によって処方せん料の点数に差をつけ,後発医薬品の使用促進を図ることとした.
 二百五円ルールについては原則廃止とされた.ただし,従来から手書きにより請求を行っている保険医療機関については,社会保険事務所に届出を行ったうえで,百七十五円以下について適用を認めることとなった.
 その他,老人慢性疾患外来総合診療料(外総診),老人慢性疾患外来共同指導料は本年十月より廃止されることとなった.

診療側の苦渋の選択

 これを受けて,当日,糸氏英吉副会長,櫻井秀也常任理事が,厚生労働省で記者会見を行い,答申を取りまとめた感想を次のように述べた.
「今回の改定そのものはメリハリのついた改定ができたということでそれなりの評価はできるが,実際に下げられてみると,これでやっていけるのかという強い不安感が生じてくる.今回のことが医療の質の低下につながらないよう,よりいっそうの経営改善に努めねばならない.
 日医総研の試算によれば,二・七%の引き下げ改定によって,収支差額が診療所では七〜一三%,病院では五〇%以上も減少するという.病院の倒産が激増するのではないかと心配している.
 長期入院への逓減制をなくした代わりに,入院基本料の特定療養費化が導入されたが,こういうことが今後拡大されれば,なし崩し的に国民皆保険制度が崩壊するのではないかと危惧している.いわゆる社会的入院即悪という名のもとに,行き場のない人々を受け皿のないままに無理に病院から追い出すことは,将来的に社会不安を引き起こしかねない.今後は社会的弱者への配慮を国に対して,お願いしたい.
 二百五円ルールについては,このルールによって何か不正が行われているのではないかとの誤解が生じており,原則廃止することとなったが,これによってレセプト審査が困難になることが予想され,保険者再審とも関連して,早急に支払側と議論し理解を求めることとなっている」


日医ニュース目次へ