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第1003号(平成15年6月20日) |
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患者にとって医療は敵か?
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医療を施行する側とされる側との関係の適正化は,今後必要に迫られ,整備されるだろう.今は,その夜明け前であると考えたい.
日々,何の落ち度もない医療の結果にクレームが飛び交う.医療する側は,どうしてクレームされたのか理解に苦しみ,医療を受けた側は疑心暗鬼になっている.医療する側は危険を伴う検査,治療に及び腰になりつつあり,その結果として医療をされる側は必要な検査,治療を受けられないという事態もあり得る.だれのメリットになるのであろうか.
「医療は安全」という幻想はどこから生じたのであろうか.「医療には危険性と不確実性が伴う」という根本的な条件が不思議なほど理解されていない.「病院に行けば治って当然,検査なら安全」という医療を受ける側の「非常識な常識」がまかり通っている.
患者の権利意識が高騰している.情報が少なく,認識が不足しているのが一番の原因である.医療する側がすべての情報を提示し,説明することは当然であるが,検査,治療の前に方針の決定権をシェアすることにより,結果もシェアするようにすべきである.
正当な医療を行えば,結果がどうであろうと正当な評価を得たいものである.「医療は患者にとって敵ではなく,適度な緊張感をもった味方」である.医師,患者の関係の適正化によって不要不毛なクレームが減ることを願っている.そして,医師が安心して働ける環境整備を望みたい.
ご一読いただければ幸いである.
「医療は敵か味方か―ある勤務医からの発信―」(文芸社)
患者さん向けの本で待合室にも置いたが,いわれのないクレームは減ったようである.
(岩手県立磐井病院内科長 阿部礼司) |
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