日医ニュース
日医ニュース目次 第1006号(平成15年8月5日)

資料版 第12回出生動向基本調査
結婚と出産に関する全国調査
出生動向基本調査は5年ごとに実施されている全国標本調査で,夫婦調査と独身者調査からなる.
国立社会保障・人口問題研究所

夫婦調査

調査期日:
2002年6月1日 調査対象:全国の年齢50歳未満の有配偶女子
 調査票配布数―9,021,有効票数―7,916(有効回収率87.8%)
 集計対象(初婚どうしの夫婦)―6,949

<夫妻の結婚について>
晩婚化が進行,夫妻の年齢差が縮小し,交際期間が延長
 晩婚化が継続しており,とくに女性で顕著である.このため夫妻の平均的年齢差は縮小している.夫妻が最初に出会った年齢も女性でやや高まったが,結婚年齢の上昇ペースが早いため,交際期間が長くなっている.
出会ったきっかけは,職場・仕事関係が1/3,見合い結婚は7%に減少
 夫妻が出会ったきっかけは,職場・仕事関係が1/3を占め,友人やきょうだいを通じた出会いが3割,学校での出会いが1割となっている.見合い結婚は減少を続けており,最近5年の結婚では7%である.

<夫婦の出生力>
子どもを産み終えた夫婦では,子どもの産み方に変化なし
 子どもを産み終えた夫婦の子ども数は1970年代から変わっておらず,今回調べた世代の夫婦(1980年代半ばに結婚した夫婦)でも,ほとんど変化はなかった.
出生途上の夫婦では,出生のペースが落ちている
 結婚後5〜14年の出生途上の夫婦では,子どもを2人以上持つ夫婦が減り,子ども1人か子どもを持たない夫婦が増えている.
90年代以降,夫婦出生力に変化が生じている
 妻の世代によって夫婦の出生力を比較すると,始め1990年前後に妻が20代後半〜30代前半の夫婦で低下が見られ,それは90年代半ばまで継続した.2000年前後でも30代以上で低下が続いているが,20代では低下に歯止めがかかっている.妻の生まれ年でみると,1960年代生まれの世代で夫婦出生力に低下が見られる.

<子ども数についての考え方>
予定子ども数が減少し,理想子ども数との差がやや広がる
 若い世代を中心に予定子ども数の低下が見られ,理想子ども数との差がやや広がった.子どもの性別については,女の子が多く望まれる傾向が続いている.
子どもがいると「生活が楽しく」なるけれど,「お金がかかりすぎ」て理想子ども数を実現できない
 年代に関わらず8割前後の夫婦は,子どもを持つ理由を「生活が楽しく豊かになるから」としている.逆に理想子ども数を実現できない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最も多く,若い夫婦ほど多い.
不妊を心配したことのある夫婦は4組に1組,検査・治療経験13%
 夫婦4組に1組は不妊を心配したことがあり,13%が実際に不妊の検査や治療を経験している.さらに,子どものいない夫婦では2組に1組が不妊を心配しており,その半数に当たる26%が検査・治療を経験している.

<子育ての状況>
結婚5年未満では就業しながら子育てする妻は2割以下,しかし子ども数には就業経歴による差は少ない
 結婚後5年未満で就業しながら子育てする妻は2割以下で,出産前に就業を中断する妻が多い.しかし,結婚年数が長くなるほど再就業が増える.また,最終的な子ども数には妻の就業経歴による格差は少ない.
若い世代で育児休業取得者が増加,ただし勤め先による格差あり
 妻が正規雇用の場合,若い世代ほど,また最近の出生ほど育児休業制度の利用率が高い.さらに勤務先の従業員規模が大きいほど利用率が高い.
親の育児援助があると,妻の正規就業が増え,子ども数も多い
 夫妻の母親の育児援助があると,育児期間における妻の正規雇用就業が多い.また,出生子ども数も多くなる傾向があり,とりわけ正規雇用を継続している出生途上の夫婦で差が大きい.

<妻の結婚・家族に関する意識>
結婚という形式への支持が弱まり,男女関係についての考え方に変化が見られる
 生涯独身や離婚,あるいは同棲や結婚前の性関係を容認する考えが増える傾向にあり,結婚という形式について,あるいは結婚外の男女関係についての考え方に変化が見られる.
伝統的な夫婦役割分業観は弱まり,家庭のなかでも主体的な生き方を求めるようになっている
 「夫は外で働き,妻は家庭を守る」という考えは支持を失いつつあり,妻が家族とは別の自己目標を持つべきという考え方が支持を増やしている.

独身者調査

調査期日:2002年6月1日 調査対象:全国の年齢18歳以上50歳未満の独身者
 調査票配布数―12,866,有効票数―9,686(有効回収率75.3%)

生涯の結婚に対する意識の変化は一段落,ただし結婚を先延ばしする意識は継続
 1)過去に減少傾向にあった「いずれ結婚するつもり」「ある程度の年齢までには結婚するつもり」の未婚男女の割合は5年前とほぼ同程度で,彼らの生涯の結婚に対する意識の変化は一段落している.しかし,当面の結婚に対しては主要な年齢層で「まだ結婚するつもりはない」とする未婚者が継続して増えている.
 2)結婚に利点を感じない未婚男性が増えている.社会的信用や生活上の利便など,結婚の実利面を挙げる人が減っているためで,逆に男女とも「子どもや家族をもてる」など内面的な利点を挙げる人は増えている.反面,今回独身生活に利点を感じる未婚男女がやや減った.
 3)未婚者が独身にとどまっている理由は,25歳未満の若い層では「仕事(学業)にうちこみたいから」が増え,25歳以上の層では「適当な相手にめぐり会わないから」が継続的に減少するなど,概して「結婚できない」から「結婚しない」へ重心が移っている.
希望する結婚年齢も“晩婚化”,結婚相手には年齢の近い人を望む傾向が強まる
 1)未婚者が希望する結婚年齢は高まっており,ここでも結婚を先送りする意識が続いていることが分かる.
 2)男女とも自分と近い年齢の結婚相手を希望する傾向が強まっている.これは夫婦で実際に見られる年齢差の縮小と符合しており,これが当事者たちの希望に沿った傾向であることが分かる.
異性との交際は二極化,同棲経験,女性の性経験は増加傾向を継続
 1)異性の交際相手を持たない未婚者の割合は男性5割強,女性4割と,1987年調査(第9回調査)以降ほとんど変化がない.しかし,恋人以上の親密な交際相手(恋人および婚約者)を持つ未婚者の割合は,女性では25歳以上の年齢層で継続的に増加しており,相手がいないか親密な相手を持つかの二極化の傾向が見られる.
 2)同棲していると回答した未婚者は男女とも2%台といまだ少数派ではあるものの増加傾向を示しており,とりわけ20代後半の同棲経験者は今回調査では1割に達した.
 3)未婚男女の性経験率は男性では頭打ち傾向にあるのに対して,女性では全年齢とも継続して増加しており,過去に見られた男女の差は消失しつつある.
結婚相手の条件に「仕事への理解」「家事・育児への姿勢」の重視度が高まる
 結婚相手を決める条件として,女性では相手の「仕事に対する理解と協力」「家事・育児に対する能力や姿勢」を重視する度合いが高まっている.また多くの子どもを持ちたい女性ほどそれらを重視する傾向が強い.
専業主婦願望は後退,実際になりそうなライフコースでも「両立」が逆転
 専業主婦を理想のライフコースと考える未婚女性が急速に減っており,前回調査(1997年)以降は,仕事と家庭を両立するコースが逆転してこれを上回っている.ただし,最も多いのは出産・子育て後の再就職コースである.また,実際になりそうなコース(予定のライフコース)でも「専業主婦」は減っており,今回,両立コースが逆転して上回った.なお,男性が女性に望むコースでも今回「専業主婦」と「両立」が逆転して後者が上回った.
将来の暮らし方,30代には核家族,50代には夫婦水入らずが理想
 未婚者が30代,50代に一緒に暮らしたい相手は,それぞれ「配偶者と子ども」,「配偶者のみ」が最も多く,「三世代同居」を望む割合はどちらも1割に満たない.30代では「恋人」と暮らすことを望む人が1割程度(男性10%,女性8%)いる.
未婚者の希望子ども数は引き続き減少,しかし結婚意思のない女性の1/3は子どもを望む
 1)未婚者が持ちたいと望む子ども数は近年一貫して減少しており,今回夫婦の予定子ども数を大きく下回った.しかし,結婚意思のない男女でも女性の35%,男性の29%は子どもを持つことを望んでいる.
 2)希望する子どもの男女構成では,女児を望む傾向が男女ともに強まっている.とくに女性で女児を望む傾向が強い.
フリーターが増加し,親と同居する未婚男女が増加
 20代以降の男性,30代以降の女性で親と同居する未婚者が大幅に増えている.フリーター(パート,アルバイト,無職)が増加していることと,このグループでの親との同居率の上昇が寄与していると見られる.
結婚・家族意識―家庭内の役割を越えた女性の生き方に支持,しかしシングルライフへの評価はゆらぐ
 家庭内の役割にとどまらない女性の生き方(性別役割分業への反対,自己目標の保持,育児専念規範への反対)に対し引き続き支持が増大している反面,今回の結果では,独身として生きること(生涯独身,離婚,同棲)に対する評価にゆらぎが見られる.

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