日医ニュース
日医ニュース目次 第1014号(平成15年12月5日)

中国におけるSARSの予防と治療に関する報告会
わが国のSARS対策についても報告

中国におけるSARSの予防と治療に関する報告会 わが国のSARS対策についても報告 中国におけるSARSの予防と治療に関する報告会が,十一月五日,日医会館大講堂で開催された.
 坪井栄孝会長,森岡恭彦日中医学協会理事長のあいさつのあと,雪下國雄常任理事が基調講演「日本における今冬のSARS対策」を行い,感染症法の改正,今冬のSARS対策としての防護キットの備蓄,SARSに対する医療体制の確保などが報告された.
 つづいて,「SARSの予防と治療における総括的管理と対応」では,劉暁勤中日友好医院副院長が,「今回は,病棟を病原体に汚染されている汚染区と,更衣室・検査室などの半汚染区,医師や看護師の休憩室・シャワー室などの清潔区の三区分に分けて対応した」と述べ,病室の設備と条件として,(1)一看護ユニットを三十床とする(2)疑似患者は一名一室,SARS真性患者は二名一室,トイレは分離独立させる(3)病区と制限区との間隔を三十メートル以上とする(4)通風をよくする(5)逆方向紫外線灯を使用した空気消毒などが大切になると説明した.
 「SARS患者の臨床的特徴および治療の経験二百六例」では,劉鵬中日友好医院教授から,実際にSARS治療にあたった報告がなされ,臨床症状の特徴として,(1)発熱:高熱(三十八℃以上)百九十三例(2)咳:百三十九例(3)倦怠感:九十八例(4)全身筋肉痛:九十六例(5)胸内苦悶:八十例(6)呼吸困難:七十七例,客痰:六十例,悪寒:二十一例,下痢:十六例(7)意識混濁,意識不明:四例,胸部湿ラ音:二十八例─などが挙げられた.
 また,SARS患者の特徴として,(1)集団で発病する(早期発見,早期隔離,早期治療が大切である),(2)臨床症状が多様である(発熱,咳,倦怠感および全身の筋肉痛などの症状がある),(3)検査所見の特徴(リンパ細胞,心筋梗塞,腎機能検査で明らかな異常が見られる),(4)慢性疾患の類型および病変の程度は,患者の予後に直接影響を与える─などと説明した.
 SARSの治療法としては,(1)呼吸のサポートを強化する,(2)副腎皮質ホルモンは可及的少量使用あるいは不使用を原則とする,(3)予防程度の抗生物質を使用する,(4)抗ウイルス薬の使用(軽症者はリバビリンを内服し,重症者は点滴),(5)慢性疾患の病状を安定させ,合併症を抑制する─などの手段を講じる必要があると述べた.
 「SARSの看護管理」について,李秀華中日友好医院看護部長は,患者が心理的に追いつめられ,絶望的になっていることが多いので,献身的な看護と心理的なサポート(患者を励ますこと)がきわめて重要であることを強調した.
 その後,「中国におけるSARSの予防と治療」について,約一時間フロアから質問を受け付け,活発な意見交換を行った.

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