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第1049号(平成17年5月20日) |

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第102回日本内科学会講演会から
〈日本内科学会〉

平成十七年四月七日〜九日の三日間,大阪国際会議場にて,第百二回日本内科学会講演会(松澤佑次会頭)が開催された.
日本内科学会は,現在約九万人と,わが国最大規模の会員を有する学会に成長し,講演会には一万八千人を超える参加者があった.熱気あふれる会場での発表から,以下の三点について記す.
医学・医療の歴史を振り返って,その急速な進歩に伴い,専門化・細分化していくなかで,多くの専門学会,分科会が創立されてきた.その結果,若い人の目が専門学会に向きがちになった昨今,日本内科学会は統合と調和を図る唯一の学会として,患者を総合的に診られる全人的内科医を育成することが,大きな課題となっている.
今回,パネルディスカッション「内科学,統合性と専門分化をどう両立させるか?」では,教育・診療・研究などの面から,内科学のあり方と展望について討論された.そのなかで,昨年度より始まった卒後臨床研修制度や内科専門医・認定医の役割についても議論された.
一方,社会的には財政破綻の元凶として医療費の高騰が槍玉に挙げられ,健康保険制度の改革をはじめとして,医療費の削減政策の強化が行われようとしている.
また,近年のマスコミによる医療事故の報道は,目に余るものがある.これに対して,日本内科学会は,第三者機関の創設に向けて議論を重ねてきており,このたび,日本医学会基本領域の十九学会と共同声明を発表した.医療事故が社会問題化するなか,内科学は医療の質の向上と安全性の確保にも貢献することが求められている.
このように,多くの医療をめぐる課題に直面し,今日,医学・医療は転換期を迎えている.今回,「医学サミット―医療と医学研究はどこに向かうか?―」というテーマで,高久史麿日本医学会長,黒川清日本学術会議会長,岸本忠三総合科学技術会議議員の,わが国を代表する三人に,これらの諸問題にどう対処すればよいかを提言していただいた.
近年,飽食と運動不足による過栄養を基盤にした,糖尿病,高血圧,高脂血症などの生活習慣病が増え,それらを危険因子として発症する脳卒中,心筋梗塞,腎不全などの動脈硬化性疾患の予防と対策が急務となっている.
しかも,最近になり,内臓脂肪の蓄積を基盤にした生活習慣病の特徴は,糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧などが一個人に複数併存し,極めて,心筋梗塞,脳卒中の発症リスクの高いことから,メタボリックシンドロームが注目されている.
今回,関連する八学会が参加して作成された診断基準が発表されたことにより,今後の,わが国の動脈硬化性疾患の予防医学の推進が期待される.
(東京大学大学院医学系研究科内科学教授,日本内科学会理事長 藤田敏郎)
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