日医ニュース
日医ニュース目次 第1053号(平成17年7月20日)

視点

医療系廃棄物 今後の課題

 高度成長に伴い,事業体より排出される廃棄物の増加が公害問題を惹起した結果,昭和四十五年,国は清掃法を全面改訂し,廃棄物処理法を制定した.
 その結果,廃棄物は大きく分けて産業廃棄物(産廃)と一般廃棄物とに分類されることとなった.また,処理責任も,産廃は排出事業者(医療機関),一般廃棄物は市町村と定められた.
 さらに,平成三年,廃棄物のうち,爆発性,毒性,感染性など人の健康または環境に係る被害を生ずる恐れのある性状を有するものを特別管理廃棄物と規定し,特に医療機関から排出する「感染性病原体が含まれ,若しくは付着している廃棄物,または,これらの恐れのある廃棄物」を「感染性産業廃棄物」とし,従来の産業廃棄物とは別に,新たな区分とした.
 その後も規制は強化され,現在では排出事業者が,不法投棄現場の現状復帰の義務を負う排出事業者責任が課されるようになった.平成十四年には,焼却炉の排ガスのダイオキシン類規制強化により自家焼却は困難となり,ほぼ全面的に委託処理をせざるを得なくなった.
 廃棄物に関する近年の大まかな経緯は,前述したようなところであるが,今後,大きな問題になると予想されるのは,在宅医療の進展に伴い発生する在宅医療廃棄物処理に関する問題である.
 在宅医療廃棄物は,一般廃棄物に分類され,その処理責任は,法律上,市町村に帰するものであるが,実際ほとんどの市町村は,その処理を法的には直接責任のない医療機関に押し付けており,医療機関も,その現状に甘んじている状況である.
 しかし,今後,在宅医療の一層の進展が予想され,廃棄物に関して,このような状況が既成事実化されると,医療機関ではその処理に対する経済的負担の増大は明白であり,さらに一般廃棄物で市町村に処理責任があるはずの在宅医療廃棄物が,一旦医療機関に持ち込まれると,それは産業廃棄物となり,医療機関は,処理費用の負担のみならず,排出事業者責任も負わねばならなくなってくる.
 環境省はこの件で検討会を開催し,近々報告書を出すが,現状の解決には遠い.日医では,現状に即した妥当な案を検討予定であるが,それを実行可能なものとするには,今後,現実的な多くの知恵が必要となる.
 また,最近,某診療所の中絶胎児廃棄事件等に代表される違法処理の問題や,感染性廃棄物の分別の混乱等に鑑み,廃棄物に関する知識の普及や,医療機関を対象とした特別管理産業廃棄物管理責任者の実効ある育成等,廃棄物に関して積み残された問題は数多い.
 これらに関し,日医は「感染性廃棄物などに関する検討委員会(プロジェクト)」をすでに設置し,現実に即した実効ある対策を検討し,医療系廃棄物に関しては,行政に対し,相応の発言をしていく方針である.

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