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第1069号(平成18年3月20日) |
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医療の安全
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全国に約千ある公立病院のうち,六割以上は赤字である.高い給与費,材料費などのほかに,民間病院が敬遠する不採算部門を抱えていることも一因である.
当院のように,医科大学やいくつかの公的病院がある,医療環境の整った中都市の自治体病院では,赤字であることで,その存在意義自体が問われている.
診療科の先生方には会議のたびに,病診連携による患者増,収益増をお願いしているが,パイの取り合いとなっている現状では難しい.
おまけに,本家自治体の収支悪化により,全職員の給与カットが実施されては,勤務医のモチベーションを保つのも容易ではない.
自治体病院の存在意義の一つに高度医療の提供があり,医療の質の目安の一つとして医療の安全がある.当院では,前田正一先生が述べている“医療事故をゼロにはできないが,医療紛争はゼロにできる”を目標に取り組んでいる.
しかし,安全を追求するほど,医療とはもともと高価であり,その行為には必ず危険が伴うことを実感させられる.医療事故の際は,決して個人を責めてはならないが,どうしても個人の能力・性格要因に行き着いてしまうジレンマに陥ることもある.
今後,医師会主導で,地域の開業医・勤務医が一体となって医療事故を正面からとらえ,真の解決のための勉強会等が開催されることが望まれる.
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