日医ニュース
日医ニュース目次 第1079号(平成18年8月20日)

視点

「専門医」

 避けて通れないものの一つに,専門医制度がある.専門医について,国は広告規制のなかで研修体制,試験制度の基準等を満たした公認学会による認定専門医を,「医療機関等が広告できること」としているにとどまり,専門医の質の確保については,各学会に委ねている.すなわち,国は質に関してまったく関与していない.昨年十二月に開かれた社会保障審議会医療部会における委員の発言の要旨を入手したので,紹介する.
 ○国民が求める専門医は,ごく狭い専門分野以外は全然できないといったものではなく,その専門医にかかれば安心というものである.そういった質の担保ができるようなシステムをつくるためには,専門医を抱えている医療機関や医師会の代表に加えて学会の代表にも参加してもらい,認定基準,専門医のあり方,国民のためにどうあるべきかについて検討する仕組みをつくって欲しい.
 ○何らかの形で国民が関与することも必要.広告できる,できないということではなく,専門医の質を担保する観点から,例えば「最低限,何年間ぐらいの経験は必要だ」というように,専門医と呼ぶ最低限の基準を定めるなど,その程度のマイルドな関与ができると,専門医全体のレベルアップにつながるのではないか.
 ○国などの第三者的なものの関与が必要.専門性の高い集団が最善の治療を安全に患者に届けるという観点で,厚生労働省も関与しつつ,医療界全体で,患者の意見も踏まえながら,「専門医」という制度をつくらないといけない時期にきているのではないか.例えば,厚労省が,後期研修病院の指定という方法などで,何らかの関与ができないか.
 ○「専門医」といった広告が先行すると,患者の側は混乱するのではないか.専門医に関する情報を標準化して,患者の立場でも読み解くことができ,また,かかりつけ医がその情報を見て,間違いない方向で特定の専門領域の方向へ患者を導いていくことができるようにすることが必要.
 ○専門医志向が高まるなかで,患者をトータルに診ていく医師が本当に増えていくのかどうか案じている.専門医の認定や更新という辺りについて,質の高い制度の仕組みが生まれていくことが必要ではないか.
 なお,本年一月,日医の学術推進会議も,特定の専門医を診療報酬で評価することにも触れた報告書をまとめている.専門医のあるべき姿について,会員諸氏の意見をどしどしお寄せいただき,日医の方針決定の参考にさせていただきたい.

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