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第1081号(平成18年9月20日) |
勤務医に春の兆しか
去る八月九日開催の中医協診療報酬基本問題小委員会で,傘下の医療機関のコスト調査分科会から「医療機関の部門別収支に関する調査研究」に関する手法開発の確立が報告された.入院・外来の診療科ごとの「一般原価計算」と「特殊原価調査」を計算する手法が開発されたが,計算された調査対象病院はわずか八病院であるために,算出結果は不正確とのコメントであった.
しかし,不確実な数字は,入院部門で二・八%の黒字,外来部門で一・九%の赤字を示す大病院の外来部門の赤字傾向が示唆されていた.病院の収入に外来部門が占める割合は,おおよそ二百床以上で三割,二百床以下で四割のようである.病院経営が入院収入でこと足りる診療報酬上の評価を望みたい.病院が入院を,診療所が外来を担う本来のあり方を満たさないと,喫緊の課題とされている勤務医の過重労働は解決されないと考える.
勤務医にとって看過できぬ医師法二十一条に派生した県立O病院の問題が,「医療関連死の死因究明制度」に進展をもたらした.医師による善意の医療行為が逮捕につながるという不条理を是とする会員は皆無である.第三者機関が異状死の死因を調べる厚生労働省のモデル事業「医療版事故調査委員会」が昨年から始まったが,調査件数は二十七件と僅少である.海難審判にならっての委員会だが,警察の介入が厚い壁となって立ちはだかっているようである.医師法の改正により,第三者機関に異状死を届け出たうえでの審査結果により,機関判断で警察に届け出る方法を提案する声もある.
「無過失補償制度」は唐澤執行部が主張し,展開を見せている制度だ.まず,無過失補償制度の第一歩として,分娩に関連する脳性麻痺を取り上げる提案である.産科医確保の医師不足対策としても有効と,行政側も敏感に反応している.説明が十分になされ無責であっても,損害賠償を請求する場合,争う時間が無駄として医療機関側が賠償金を支払っている現状は,医療に対する国民の理解を曲げて伝える結果になっているのではなかろうか.正しい方策の確立を望みたい.
日医が委員会を設置し,積極的に活動している「医療関連死の死因究明制度」と「無過失補償制度」に対しても,与党や厚労省も関心を寄せ,検討が始まっている.これらの課題に加えて,病院と診療所の機能分化に伴う真の連携こそが,勤務医を極寒から春へと誘う方途と考えたい.
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